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【書評】日本でいちばん楽しそうな社員たち
»2012年10月28日
書評ブログ「イケてる本棚」
【書評】日本でいちばん楽しそうな社員たち
教育産業にて講師、管理部門、制作部門担当を経てカラーコンサルタントRosa マネージャー/デザイナー/ライター。同社にてWeb、DTP制作、執筆等を手掛けている。
当ブログ「書評ブログ「イケてる本棚」」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/sugiba/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
中学生の頃、遠路はるばる秋葉原まで足を運ぶと街はありとあらゆる電化製品が所狭しと並んだ文字通りの電気街でした。秋葉原に行けば製品はもちろんのこと、マニアの要求にも十分に応えることができ、素人目には「こんなもの何に使うんや?」と思うような商品までも入手することができました。
「オノデン」「サトームセン」「石丸電気」など秋葉原を代表する店舗は次々と姿を消し、今や秋葉原は電気街からサブカルチャーの集積地へと様相を変えつつあります。
電気街「秋葉原」の名は、歴史として語り継がれることは間違いありませんが「時代の流れ」として片付けてしまうのは何だか寂しい気がします。
電化製品なら「安い」「何でも揃っている」秋葉原が変節したのは大手家電量販店の隆盛に因るところが大きいと思います。郊外でも地方都市でもロードサイドに立ち並ぶ家電量販店は品揃えも良く、価格も安い。ならば、余程のことでもない限りわざわざ秋葉原まで足を運ぶ理由がなくなってしまったのです。
家電量販店の勢いはとどまることを知らず、再編を繰り返し、都心のターミナル駅付近にも大規模な店舗を進出させています。
私個人も家電量販店に多分に世話になっていますし、豊富な品揃えに心を躍らせる人間の一人です。特に私の地元茨城県の「カトーデンキ」はおらが街の電器屋さんでしたが、「ケーズデンキ」となって全国規模になっていることをちょっとばかり嬉しく思っています。
その一方で、薄利多売を強いられている電機メーカーの国内販売はさぞかし苦しいだろうことが容易に予想されます。もちろん全てではありませんが、かつては栄華を誇ったパナソニックやシャープがこれまでにない苦境に立たされている要因のひとつであることは間違いありません。
また、飛ぶ鳥を落とす勢いの家電量販店も熾烈な価格競争を展開しています。価格競争の行く末は共に消耗した中でのノーガードの打ち合い、いずれ経営戦略も大きな見直しが必要になる時期がくることでしょう。
そんな中、デジカメ販売で北関東甲信越カメラ売上15年連続売上No.1、主に栃木県内で確固たる地位を築いているカメラ屋があると聞きました。
それが、サトーカメラです。
♪新宿西口駅の前~のヨドバシカメラ、♪ビ~ック、ビック、ビックのビックカメラなどカメラ屋から始まった家電量販店が全国群雄割拠する中で、なぜ、カメラ関連一本のサトーカメラが強いのか、その秘密は何処にあるのかが記されている本に出会いました。
「日本で一番楽しそうな社員たち」
本書の著者は同社で専務取締役を勤めている佐藤勝人氏、町のカメラ屋を栃木県内で18店舗にまで拡大。大手の度重なる出店攻勢にも屈せず、リピート率80%、利益率は40%を叩き出す今どき奇跡のような会社を築き上げています。
どうも経営者が自社の成功体験について語る著書を読むと、まるで教祖様のようなカリスマの上から目線が鼻につき、自慢話を延々と語った挙げ句、人生指南までする有様。私が言える身分ではないけれど「あんたに言われたくないよ」と最後まで読み続けることなく本を閉じてしまうことが多かったのが私自身の経験。
その会社に勤める知り合いがいれば「実際のところどうなの?」とついつい聞いてしまうのですが、大体が「あ~あ、やっぱりね」という著書の内容とはかけ離れた答えが返ってくるのがほとんどでした。
ですが、「日本で一番楽しそうな社員たち」では、佐藤氏の飾らない語り口が気持ち良く、何より経営者自身が楽しんで仕事をしているのが手に取るように分かります。そして、社員が己の適正を見出され、かつ商人として覚醒し、楽しく働くさまが目に浮かぶのです。
「人から物を買う」かつての商売の姿
現在は衣食住に必要なものはスーパーマーケットに行けば全て事足りますが、かつては野菜は八百屋、魚は魚屋、肉は肉屋、豆腐は豆腐屋、ちょっとプレミアムなものはデパートというサザエさんにのみその面影を残すような買い物のスタイルが一般的だったように思います。シャッター通りとなったしまった商店街の多くも大活況だった時代がありました。それぞれのお店が客の特性や好みを熟知していて、品を勧めてくれ、買い物が単なる買い物ではなく心と心が通い合う交流の場でもあった筈です。
スーパーでの買い物はもちろん便利ではありますが、余り心を通わすような場面には出会いません。早く効率的に買い物を済ませるのには最適です。
どれがいい、どれが悪いと言うわけではありませんが、人と心を通わせるのは人間の本質的な欲求で、それを敢えて行っているところがサトーカメラの強みに思えるのです。
価格や効率はもちろん大切です、しかし、買い物が血の通ったものになり、買って良かったと思えれば「価格」の優先順位は大事だけれども後ろに追いやられるはずです。
私はミラーレス一眼とコンデジをそれぞれ1台所有しています。家電量販店で購入しました。指名買いでしたので「これください」「ありがとうございました」しか会話はありませんでした。下調べをして買ったところで所詮素人、カメラ任せにシャッターを切るしか能がないのが現状です。恐らくカメラの持っている性能のほんの少ししか使っていないでしょう。そこで、サトーカメラのようにカメラの用途などをヒアリングしてライフスタイルにあったカメラを進めてくれてかつ実機で取り方をレクチャーまでしてもらえれば、迷わずそのカメラを買ったことでしょう。時には、指名した品よりも安価なカメラを勧めてくれることもあるそうです。ならば買い替え時もお願いします、になること間違いなしです。
本書はそんなサトーカメラのシンプルかつ血の通った営業手法と人材活用が余すところなく記されています。今ひとつ営業所の士気が上がらずに悩んでいる所長様や、業績が上がらず「心頭滅却すれば・・・」的に社員をがんじがらめにしてしまっている経営者の方にもぜひ読んでいただきたいと思います。
いつか栃木を訪れる機会があればぜひサトーカメラに足を運んでみたいですね。
「オノデン」「サトームセン」「石丸電気」など秋葉原を代表する店舗は次々と姿を消し、今や秋葉原は電気街からサブカルチャーの集積地へと様相を変えつつあります。
電気街「秋葉原」の名は、歴史として語り継がれることは間違いありませんが「時代の流れ」として片付けてしまうのは何だか寂しい気がします。
電化製品なら「安い」「何でも揃っている」秋葉原が変節したのは大手家電量販店の隆盛に因るところが大きいと思います。郊外でも地方都市でもロードサイドに立ち並ぶ家電量販店は品揃えも良く、価格も安い。ならば、余程のことでもない限りわざわざ秋葉原まで足を運ぶ理由がなくなってしまったのです。
家電量販店の勢いはとどまることを知らず、再編を繰り返し、都心のターミナル駅付近にも大規模な店舗を進出させています。
私個人も家電量販店に多分に世話になっていますし、豊富な品揃えに心を躍らせる人間の一人です。特に私の地元茨城県の「カトーデンキ」はおらが街の電器屋さんでしたが、「ケーズデンキ」となって全国規模になっていることをちょっとばかり嬉しく思っています。
その一方で、薄利多売を強いられている電機メーカーの国内販売はさぞかし苦しいだろうことが容易に予想されます。もちろん全てではありませんが、かつては栄華を誇ったパナソニックやシャープがこれまでにない苦境に立たされている要因のひとつであることは間違いありません。
また、飛ぶ鳥を落とす勢いの家電量販店も熾烈な価格競争を展開しています。価格競争の行く末は共に消耗した中でのノーガードの打ち合い、いずれ経営戦略も大きな見直しが必要になる時期がくることでしょう。
そんな中、デジカメ販売で北関東甲信越カメラ売上15年連続売上No.1、主に栃木県内で確固たる地位を築いているカメラ屋があると聞きました。
それが、サトーカメラです。
♪新宿西口駅の前~のヨドバシカメラ、♪ビ~ック、ビック、ビックのビックカメラなどカメラ屋から始まった家電量販店が全国群雄割拠する中で、なぜ、カメラ関連一本のサトーカメラが強いのか、その秘密は何処にあるのかが記されている本に出会いました。
「日本で一番楽しそうな社員たち」
本書の著者は同社で専務取締役を勤めている佐藤勝人氏、町のカメラ屋を栃木県内で18店舗にまで拡大。大手の度重なる出店攻勢にも屈せず、リピート率80%、利益率は40%を叩き出す今どき奇跡のような会社を築き上げています。
どうも経営者が自社の成功体験について語る著書を読むと、まるで教祖様のようなカリスマの上から目線が鼻につき、自慢話を延々と語った挙げ句、人生指南までする有様。私が言える身分ではないけれど「あんたに言われたくないよ」と最後まで読み続けることなく本を閉じてしまうことが多かったのが私自身の経験。
その会社に勤める知り合いがいれば「実際のところどうなの?」とついつい聞いてしまうのですが、大体が「あ~あ、やっぱりね」という著書の内容とはかけ離れた答えが返ってくるのがほとんどでした。
ですが、「日本で一番楽しそうな社員たち」では、佐藤氏の飾らない語り口が気持ち良く、何より経営者自身が楽しんで仕事をしているのが手に取るように分かります。そして、社員が己の適正を見出され、かつ商人として覚醒し、楽しく働くさまが目に浮かぶのです。
「人から物を買う」かつての商売の姿
現在は衣食住に必要なものはスーパーマーケットに行けば全て事足りますが、かつては野菜は八百屋、魚は魚屋、肉は肉屋、豆腐は豆腐屋、ちょっとプレミアムなものはデパートというサザエさんにのみその面影を残すような買い物のスタイルが一般的だったように思います。シャッター通りとなったしまった商店街の多くも大活況だった時代がありました。それぞれのお店が客の特性や好みを熟知していて、品を勧めてくれ、買い物が単なる買い物ではなく心と心が通い合う交流の場でもあった筈です。
スーパーでの買い物はもちろん便利ではありますが、余り心を通わすような場面には出会いません。早く効率的に買い物を済ませるのには最適です。
どれがいい、どれが悪いと言うわけではありませんが、人と心を通わせるのは人間の本質的な欲求で、それを敢えて行っているところがサトーカメラの強みに思えるのです。
価格や効率はもちろん大切です、しかし、買い物が血の通ったものになり、買って良かったと思えれば「価格」の優先順位は大事だけれども後ろに追いやられるはずです。
私はミラーレス一眼とコンデジをそれぞれ1台所有しています。家電量販店で購入しました。指名買いでしたので「これください」「ありがとうございました」しか会話はありませんでした。下調べをして買ったところで所詮素人、カメラ任せにシャッターを切るしか能がないのが現状です。恐らくカメラの持っている性能のほんの少ししか使っていないでしょう。そこで、サトーカメラのようにカメラの用途などをヒアリングしてライフスタイルにあったカメラを進めてくれてかつ実機で取り方をレクチャーまでしてもらえれば、迷わずそのカメラを買ったことでしょう。時には、指名した品よりも安価なカメラを勧めてくれることもあるそうです。ならば買い替え時もお願いします、になること間違いなしです。
本書はそんなサトーカメラのシンプルかつ血の通った営業手法と人材活用が余すところなく記されています。今ひとつ営業所の士気が上がらずに悩んでいる所長様や、業績が上がらず「心頭滅却すれば・・・」的に社員をがんじがらめにしてしまっている経営者の方にもぜひ読んでいただきたいと思います。
いつか栃木を訪れる機会があればぜひサトーカメラに足を運んでみたいですね。
おすすめ度・★★★★☆ 4点