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新入社員の林くん、ロールスロイスに乗る

新入社員の林くん、ロールスロイスに乗る

林 剛

中国出身。来日13年。株式会社ジェーピービジョン代表取締役。日本の中小企業に向けて中国調達・中国進出事業をサポートしています。

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 手前味噌の話で恐縮です。

 私は日本の大学を卒業して地方のある建設会社に入社しました。運転免許を取得後、すぐに社長がロールスロイスを社用車として与えてくれました。

 いくら中古車だといっても、ロールスロイスはその小さな町にはわずか2台しかなかったようで、町を走っていても、周りの車が誰も寄ってこないほどの目立つ存在でした。

 いきなり高級車を与えられた私は困惑極まりなくて固辞すると、社長はこう話してくれました。「中国人は外見で人の価値を判断する。いいスーツを着ていたら、いい時計をしていたら、世間の人にすぐ大物扱いされ、尊敬されるからだ」「堂々と対抗できる気持ちを育てるには、まず本物を体験しないといけない」と。

 さすが十数年以上中国の会社、中国人と付き合ってきたベテラン社長ですから、中国人の弱点がよく分かっています。

 外見より中身などの綺麗事をよく聞こえるが、正直に言わせてもらうと「それは真っ赤なウソ」です。特にビジネス商談のような初対面ですぐ相手の真意を判断しないといけない場合、外見は品定めの材料になるのは殆どです。

 中国人は基本的に権威に弱いのです。相手の気迫、オーラに圧倒されると、何となく心が動揺し、冷静に事柄を分析できなくなりがちです。

 アメリカ心理学者の研究結果によると、人間はコミュニケーションをする上での情報伝達の割合は、外見53%、声38%、言葉7%。外見を見て、その人に魅力を感じて仲良くなれるかどうかを判断するには、わずか0.5秒しかかからないようです。

 日本人は何となく相手を直視するのは失礼とされ、避けたがります。特に商談の際、相手の視線から逸らすビジネスパーソンが多いのでしょう。中国人から見ると、日本人の相手が「迷っている」「なにか隠している」「本音を言ってない」「自信がない」などマイナスのイメージしか受け取りません。

 商談の際、謙虚さや礼儀の正しさがもちろん大切ですが、時々パワーのある演出も欠かせません。それはビジネス相手に安心させる重要な手段のひとつではないでしょうか。

追記
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