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春節に中国から来たお客さんを案内して見た中国人観光客の来日事情と日本の接客現場

春節に中国から来たお客さんを案内して見た中国人観光客の来日事情と日本の接客現場

林 剛

中国出身。来日13年。株式会社ジェーピービジョン代表取締役。日本の中小企業に向けて中国調達・中国進出事業をサポートしています。

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 春節期間、中国から来日したお客さんを案内するため、私は大阪、京都と東京3ヶ所の旅を一週間ほど同行した。その間、道頓堀やら大阪城やら金閣寺やら清水寺などのようないわゆる観光スポットに行ってきたが、とにかくどこに行っても中華圏の観光客が賑やかで溢れている。泊まっていたホテルのテレビをつけたらどんなチャンネルでも毎日のように中国人の爆買いぷりが大いに報道されていた。

 日本政府に観光ビザを発行してもらうためにある程度の収入や貯金がなければ日本に来れない。だから観光で来日した中国人達はほとんどホワイトカラー層あるいは富裕層だと言えるだろう。私が案内してあげたお客さんも経営者や弁護士などの肩書の持ち主で年収1000万円を超える人達だった。

 長年日本に住んでいて、もはや日本の習慣や日本の考え方に染められた私にとって、母国から来たお客さんの行動で冷や汗をかいてしまった場面は度々あった。初日にはよく報道されたように公共の場で傍若無人に大きい声で喋ったり電車が来たら列も並ばずに一斉乗り込みしたりする行動もあったが、しばらく2、3日が経つと全部なくしたとは言えないけれど自然にそういうハラハラさせられた行動がかなり減ってきた。

 日本に対する第一印象を聞くと、まず皆さんが口が揃ったように「ホテルの部屋の狭さに驚いた」という回答が返ってくる。近年、中国の富裕層は海外旅行に流行っているため、今回来日したお客さん達もアメリカ、ヨーロッパに旅行で結構出かける。欧米国のホテルの部屋スタイルに比べると確かに日本のホテルの部屋が窮屈に見えると否定できないだろう。

 来日した中国人お客さんの目的は観光のほかにはやはり日本料理を堪能、さらに日本での買い物を楽しみにすることなのだ。

 この一週間にラーメン屋、居酒屋から懐石料理の老舗まで案内してあげた。皆さんから「やはり本番の日本料理は美味しい」と絶賛された。考えてみれば、中華料理が日本に来たら日本人の口に合わせるようにだいぶ改良されたりするように、和食は海外に行くとやはりその国の人々の味覚習慣に合わせるだろう。さらに中国で出店している日本料理屋はほとんど高級路線の戦略を取ってるため、富裕層の彼らにとっても毎日気軽に和食を食べれるとは限らないのだ。

 日本での買い物は特に女性観光客の一大事だ。マツキヨのようなドラッグストアで女性陣はスマートフォンに前もって保存された商品写真を見ながら真剣に探していた。チャートアプリWechatを使って国内にいる友達に確認するシーンもよく見かける。大阪道頓堀の免税店はスタッフ全員がすべて中国人の店も珍しくないほど中国人観光客の心を掴もうと努力している。さすが大阪は商売のうまい町なのだと感心した。

 私は一番驚いたのは、昔日本のお土産といえば日本製の化粧品だったが、どうやら今中国でお土産として最も流行っているのは日本の薬なのだ。特に目薬、感冒薬など日本人が日常生活に普通に使われる薬品は多くの中国人観光客に求められているようだ。中国のネットでは日本に行ったら買うべき日本の薬のランキングまで作られて友達の間にシェアしあっているようだ。

 大型電気製品店に連れて行った。元々暇なはずの2月だが中華圏のお客さんで各階の売り場を埋まっている。日本の電圧は100Vなので海外で直接使えないケースがよくあるため、店側は親切に海外に使える日本商品(使用可能電圧がAC100-240Vの製品)の専門コーナーが設けてくれた。ただし、その親切さに伴う落とし穴が一つある。日本製品と言っても生産地は中国、タイ、東南アジアが大半だ。それを気づかないままで買う中国人の観光客は結構いる。日本で買った自動開閉できる便ふたを中国に持ち帰ったら、なんと浙江省杭州市の工場で作られた物だったというようなニュースが中国のネットで大きな話題になった。「日本製」は中国人にとって「品質の保証」みたいな感覚は昔も現在も変わっていないのだ。

 日本にいる間、日本式接客サービスの高品質が皆さんに感動を与えた一方、接客現場の従業員の疲弊さや一部のサービス品質の低下もよく感じ取った。

 京都の某有名なホテルに泊まった際、フロントでチェックイン手続きを終えて部屋に入ったら、なんとすでに別のお客さんの荷物が置いてあり、しかも開けたままにしていた。私たちはびっくり仰天ですぐ退室してフロントに連絡したら、スタッフが駆けつけて来てくれたが原因はフロントの確認不足でチェックアウトしていないお客さんの部屋を間違って我々に与えてしまった。

 さらに大阪に滞在した時、2台のタクシーを拾い、ホテルの名前を運転手さんに告げたら、先頭のタクシーの運転手さんが「分かった」と一言ですぐ車を飛び出した。私は2台目のタクシーに乗ってホテルに着いたにもかかわらず先頭のタクシーがなかなか来なかった。心配になってお客さんに電話したら、なんとタクシーの運転手さんがホテルの場所が分からなくて、お客さんと言葉も通じないので、勝手にお客さんを新大阪駅に置き去ってしまったという信じられない出来事にあった。

 世界から観光客を呼びかけるのは日本の国策になりつつある。たくさんの外国観光客が殺到しているなか、接客現場の従業員が一人ひとりがきちんと「おもてなし」ができる体制を整えられるかどうかは日本にとってひとつ課題ではないかと私は思う。