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カウンセリングの誤解~メンタルヘルス対策

カウンセリングの誤解~メンタルヘルス対策

大森 洋明

REBT心理士。うつ状態から回復した経験を経て、SEからカウンセラーへの転身を図りつつ、カウンセリングを世の中に浸透させようと奮闘中。座右の銘は、菅沼憲治先生に頂いた「生死一期」という言葉。

当ブログ「あなたが持つカウンセリングのイメージは間違っている!! …可能性が高いですよ」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/t2k/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


 企業におけるメンタルヘルス対策の重要性が叫ばれるようになった近年。
 しかし、そこかしこにカウンセリングに対する間違った思い込みや誤解が蔓延り、導入、利用における様々な場面、利用率、利用範囲などで、その妨げになっているのではないかと感じます。

 そこで、少しでも多くの人にカウンセリングを身近なものにして貰うべく、世に多く存在する誤解を少しずつでも減らしていければと思います・・・とは言っても、カウンセリング自体が幅広く、固定的、断定的に語ることが難しい部分もあるとは思いますが。

 さて、私が社内相談室の設置の営業に行ったときに一番多い誤解というのがあります。

「うつ病などにかかったときに、病気を(精神療法的に)治療するために受ける」

 こう考えている人が非常に多いのではないでしょうか?
 実のところ、私もカウンセリングの勉強をするまでは(実際に病院でカウンセリングを受けた時でさえ)、そう思っていました。

 メンタルヘルス対策として導入する企業が多いことや、心を病んだ人が受けるイメージが強いことが関係していると思うのですが、しかしながら医師法の第十七条に「医師でなければ、医業をなしてはならない」とある通り、カウンセラーが医師の指導なく病気に対して医療行為を行うと医師法違反となってしまいます。 医師免許を持っていない限り、カウンセラーは単独で医療行為を行うことはできないのです。

 つまり、カウンセリング≠医療であり、病院ではない一般のカウンセリングルームや社内相談室では通常、カウンセラーが「病理」に関わることはまずありません(病気に対してカウンセリングでは治療効果が得られないとかではないのですが、許される表現の限度が難しいのです・・・お察しください)。

 では、一体なぜカウンセリングが多くの人や企業に必要とされているのでしょう?
 まずメンタルヘルス対策という視点から見ていきますと、カウンセリングはメンタルヘルス不調の「予防」に効果があるとされています。

 私は実際に重度のうつ病を経験しているのですが、症状としては真っ直ぐ歩くことが出来ないほどの目まい、乗り物に乗っていられないほどの吐き気、起き上がり方が分からなくなるほどの体のだるさ、体は疲れ切っているのに夜中に脳が覚醒し続ける不眠、胎児のような格好になるまで収縮する筋肉の緊張(余談ですがこの時、祈りの形って自然に生まれたものなんだと感じて妙な感心をしてしまいました)などなど、この状態が何カ月も続きました。 (健康な状態では想像もできなかった)当時の自分のことを話すときは「毎日が拷問のようだった」と表現するようにしています。

 また、精神的、身体的な症状だけではなく、それに伴って長期の無給欠勤による金銭問題、会社内での立ち位置的な問題、人間関係問題から誘導されたような退社、法令違反があっても裁判を起こす気力もお金もなく、しまいには会社だけではなく人生からドロップアウトしそうにもなりました。 さらに、慢性化してしまったため、10年ほどたった現在でも薬のお世話になっています(さすがにたいした症状も残ってませんが)。

 これはただの一例に過ぎませんが、このようにメンタルヘルス不調は人生にも大きな影響を及ぼす可能性を多分に含んでいます。 ですから当然、病気になったときの対策も重要ではありますが、まずは病気にならないこと・・・水際で食い止める一次予防(病気の発症を未然に防ぐ)・二次予防(早期発見)という考え方が必要となってきます。 カウンセリングは主に、この一次予防に効果を発揮します。
 もちろん病気の診断はできませんが、相談から早期受診へつなげたり、三次予防(社会復帰)の度合いを確認するためにも、カウンセリングは有効です。

 また、メンタルヘルス不調は症状が改善したとしても、人生哲学を変えなければ容易に元に戻ってしまう可能性が非常に高いのが特徴です。 その根本となった不健康な思考を新たな人生哲学に修正していく場合にも、カウンセリングが必要となるでしょう。

>>続く