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話を聴くことの重要性2
あなたが持つカウンセリングのイメージは間違っている!! …可能性が高いですよ
話を聴くことの重要性2
REBT心理士。うつ状態から回復した経験を経て、SEからカウンセラーへの転身を図りつつ、カウンセリングを世の中に浸透させようと奮闘中。座右の銘は、菅沼憲治先生に頂いた「生死一期」という言葉。
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(※文章中にうつなどの単語が出てきます。 読んでいる最中に気分が悪くなった場合は、無理をせずブラウザのページを閉じてください。 どうしても内容が知りたい場合には、他の人に読んでもらって後で話を聞くと良いでしょう)
前回は、聴く技術によって信頼関係を構築すること、延いては、しっかりと話を聴くことは非常に重要ですよという内容でした。
今回も聴く技術の話の続きです(恐らく皆さんが思っている以上に重要なことなので、しばらく続きます)。
前回の話題の中心である「話を聴くことによる信頼関係の構築」は、カウンセラーと来談者双方に関わってくることですが、それを主に聴く側の視点から書きました。
では、話す側(来談者)から見たとき、得られるのは信頼関係だけなのでしょうか?
普段は特に意識することはないかもしれませんが、感情(特に強い感情)には表現したいという欲求が伴います。 感情を適切に表現することで自分にプラスになる効果を周囲の人から得るための、本能に近い部分の欲求だと思います。
ただ、現代社会における一般的なコミュニケーションの中では、感情を適切に表現することがその場面に適していなかったり、なかなか感情を表現する(他人と自由な話題について話をしたり、叫んだり、大泣きしたりする)機会やきっかけがなかったりします。
このようにして感情を表現せずにいると、(他人には何か原因があるように見えなくても)そのことが大きなストレスになり、衝動的な行動をとる可能性を高めたり、「心身症」「神経症」「うつ病」などに繋がる可能性も高くなります。
そこで、心の健康を維持するためには、感情を表現する欲求を満たし、ストレスを軽減する必要が出てきます。 感情を表現する欲求は、その感情を言語化し、自分の口で話し、他人に聴いてもらい、他人に理解してもらい、他人に受け入れてもらい、他人の共感を得て、自分が共感してもらえたと実感することで満たされていきます。
つまり、来談者が自分の感情をカウンセラーに吐露することで、それまで来談者の心につかえていたことや、澱んでいたことを浄化することが出来るのです。
これを、カタルシス(浄化)効果といいます。
と、文章で書かれてもあまり実感できず「へー、そんなことあるんだ」程度に思うかもしれません。 が、この(たかが)話を聴くということだけでも非常に大きな意味を持ちます。
それを体現している分かりやすい例として、傾聴ボランティアを挙げることができるでしょう。
その中には、被災地での傾聴ボランティア活動やいのちの電話など、他人の人生に大きく関わるものが少なくありません。 東日本大震災のときも傾聴ボランティアが行われており、その後行われたアンケートでは被災者の方から非常に高い評価を得られたようです。
逆の視点から見ると、自傷行為の一部などは周囲の不理解などが遠因になっていることがあります※註1。
他人に理解されない(他人から見るとたいしたことだと思えないかもしれない、自分にとっては非常に大きな)心の傷を持っている場合、目に見えない心の傷を何とか周囲に知らせて生き延びようとする(自分自身にはどうしようもできない)本能的行動として、自傷行為に至ってしまう場合があるのです。
(※後に自傷行為を繰り返すことによって強化学習され、行為自体が癖になり、止められるようになるまでに時間がかかるようになっていきます)
こういった例からも、話を聴くことがいかに重要であるかということが分かっていただけると思います。
※註1
あくまで、自傷行為を行った本人からの視点で解釈した場合の話です。 行為が発覚するまでは周囲の人は、自傷行為を行った本人の心の中で何が起こっていたかに気付かないことも多いでしょうし、その一端を事前に知っていても防ぐことは難しいのです(聴く技術自体が、一般的なコミュニケーション方法には、ほぼ含まれないため)。
また、このように大きな心の傷をもった人の話を聞き続けるのは、自分の生活もあり、なかなか困難なものです。 難しいと感じた場合には、理解を示しつつ、見捨てるのではないということを伝えながら、専門家にバトンタッチしていくのがよいでしょう。
このとき、「他人より自分を優先してしまった」と強く思いすぎる人がいます。 が、「他人を大切にすることは大事ですが、それ以上に自分を大切にすることは重要」です。 これが逆転している人は、あまり健康的な考え方ではないといえるでしょう。 逆に周りから心配されていたりしないか、チェックしてみると良いかもしれません。