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話を聴くことの重要性3

話を聴くことの重要性3

大森 洋明

REBT心理士。うつ状態から回復した経験を経て、SEからカウンセラーへの転身を図りつつ、カウンセリングを世の中に浸透させようと奮闘中。座右の銘は、菅沼憲治先生に頂いた「生死一期」という言葉。

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 通常、会話のやり取りの中では何か悩みを打ち明けられたときに、相談を受けた側は何かを求められていると思い、自分の意見を返したり、直接的に解決に繋がるようなアドバイスをしたりします。 しかし残念なことに、(意見やアドバイスを返すタイミングにもよりますが)表面的な部分だけの会話で終わってしまい、相談者が悩みを抱えたままになってしまうことが多いのです。

 そこで、相談を受けた側が話をしっかりと聴くことで、相談者は自分の言葉に注意を払うようになります。 自分が発言した言葉の内容を自分で考え、不確定な部分をより正確に表現しようと努めることで、自己洞察が進みます。

 たとえば、相談者が「ずっと心にモヤモヤがあって、落ち込んでいる」という話をしたとしましょう。

 通常の会話であれば、「じゃ、たまにはパッと遊んで、気晴らししよう!」などというかもしれません。(※これが駄目ということではありません。 筆者も、普段はこう言うと思います)
 これで心が晴れたなら問題ないかもしれませんが、根本的な解決が図られていないために落ち込みを何度も繰り返したり、そもそもパッと気晴らしをする気力がない場合など、解決に至らないこともあります。

 話をしっかりと聴いた場合には、

  • 「モヤモヤ」とはどういったものなのか?(問題があるのは分かっているが何かが自分でも分からない、未解決の問題がある、納得できないことがある、自分では解決できないことをやろうとしている、など)
  • 「落ち込んでいる」とはどういう状態なのか?(不安がある、絶望している、体がだるい、気分が悪い、など)

 ・・・といったことを、自分自身で考えて、自分の言葉で表現することができるようになります。

 尋問のようにいくつもの質問を重ねて、無理やり追い詰めるようにして喋らせるのではなく、自分が話した内容に注意を向けさせて、自分が納得いくまで表現させることで、自分自身にも理解できなかったことを明確にしていくのです。

 その自己洞察が上手く行くよう支持していくのが、カウンセリングの聴く技術です。

 不明瞭だった自分の悩みが言語化され明瞭になることで、自分自身で対処方法を考えることができるようになるため、自己効力感(ある目標に向けた実行方法に対して、自分が出来ると感じる期待感や自信)の高い解決方針を望むことができます。

 また、それが自分の経験となり、自分を成長させることで次に同じ問題に対峙したときに、自分で解決することができるようになるのです。
 そして、自分で問題を解決したという事実は、その後の自尊心(≠自惚れ)も高めてくれるかもしれません。

 このように、聴く技術というのはカウンセリングに非常に重要な技術です。
 また、ほとんど通常の会話に出てくることがないこともあり、訓練しなければなかなか身につけることはできないものです。

 ですので、「私はトークスキルがあるから、カウンセリングできる」とか「カウンセリングって、良さ気なところで名台詞言えばいいんでしょ?」などと簡単に考えている人は、一度しっかりとカウンセリングについて学んでみることをお勧めします。