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カウンセラーの実力を見る方法

カウンセラーの実力を見る方法

大森 洋明

REBT心理士。うつ状態から回復した経験を経て、SEからカウンセラーへの転身を図りつつ、カウンセリングを世の中に浸透させようと奮闘中。座右の銘は、菅沼憲治先生に頂いた「生死一期」という言葉。

当ブログ「あなたが持つカウンセリングのイメージは間違っている!! …可能性が高いですよ」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/t2k/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


 先日、他のカウンセラーのカウンセリングをしたとき、事前の茶飲み話で出てきた話なのですが。

 その方は、こんなカウンセラーに出会ったそうです。

 態度が大きくて他人の話をちゃんと聞くのかな?・・・という感じの人が、カウンセラーをやっていると言うので、「自分もカウンセラーなんですよ」というようなことを話したら、「資格何持ってるの?」と聞かれたとか。

 そこで「××資格です」と答えたら、
「へぇ、僕は○○資格(有名)持ってるけどね(ふふん)」

 というようなことがあったようで・・・。

 何が言いたいかというと、この人はカウンセリング関連資格の中でも最も学習量が多い○○資格を持っているにもかかわらず、資格に優劣をつけて、その優劣で人間の価値を判断する認知バイアス(※註1)に評価が歪められていることに気づいていないということです。
 ・・・折角、素晴らしい資格を取得したというのに、残念な行動ですね。

 それが全てというわけではないですが、同じ資格を持つ人でも資格取得後も研鑚を重ねられる人と、そうでない人がいたり、得られた知識を自分に応用できる人、できない人など、差というのは結構出るものです。 特にカウンセリング関連の資格は民間資格で、実力が高くても資格を持っていない人がいたりしますから、ある程度の目安にはなるものの、資格だけでその人のカウンセラーとしての実力は判断できないように思います。

 実際、私がカウンセリングを受けた時にも、メジャーな資格でも「うひゃっ」という人もいれば、マイナー資格でも「おお!」という人もいたり(※メジャー資格が悪いということではなく、あくまで個人差ということです)・・・正直、個人差が激しいです。

 そうなってくると、ではどこでカウンセラーの実力を判断したらいいのかという部分が気になりだして、表題に至るというわけです。

 たとえばカウンセラーを雇いたいときに、通常の面接と履歴書だけでどうやって判断したらよいのか。
 はたして、その方法とは!!

 ・・・思いつきませんでした。

 資格が判断の決定的な基準とはならないことに加え、カウンセリング技法が複数あるため特定の基準というものを設けるのが難しいことが要因として挙げられます。 また、経験年数はよく判断材料として使われますが、単純に長くやっていれば上手いというものでもないのは、どの業界も同じでしょう。

 結局、冒頭のきっかけから外れて、「せめてカウンセリングが酷くない人を雇うための、より良い方法」として、以下のようなものを考えてみました。 これもある程度ですが多少は有効かと思うので、何かの折に参考にしてみてください(そんな機会がある人も、そうそう居ないと思いますが)

■まずは、面接時に実際にカウンセリングを受けてみること。

 なかなか時間を取るのが難しいかもしれませんが、これが一番確実と思われます。 通常、1回40~60分程度ですが、主に雰囲気をつかむものなので若干短めでも構わないでしょう。

 もし実行するのであれば、以下のことに気を付けると良いと思います。

  • カウンセリングに対するイメージは、とりあえずどこかに置いておく(技法は様々あります)
  • カウンセリングは自分が利用するものだという意識を持つ(これを持っていない人が多いです)
  • 「ウソを見抜けるか試してやろう」とか作為的な行為を織り交ぜない(ありのままを体験してください)
  • 技法によって展開に差が出るのは普通です(他人と比べるのではなく、そのカウンセリングをどう感じたかが重要です)
  • カウンセリングの主訴(お題)は、解決できなくてもそれほど苦にならない軽めのものがいいでしょう(なにせ1回なので)
  • コールドリーディング(※註2)などで信用させて、「だから私の言うことを聞いていれば安心です」というような展開はありません

 カウンセリングを受けてみて気分はどうか、しっかりと自分が納得できる状態で内容が進んだかなどを評価することができます。 自分が利用してみて納得できないのに、それをそのまま精神的に弱った人に薦めるというのであれば、やはり問題があるでしょう。

 主訴が解決するかしないかは、1回のカウンセリングで解決する内容とは限りませんし、技法によって解決までの時間が違ったりするので、それよりはどんな感じだったかを評価対象にした方がいいと思います。

 もし、「実際にカウンセリングをやってみてもらえますか?」と言ったときに、正当な理由がなく嫌がるカウンセラーの場合、仕事中も1回1回心理的に何かしら起こっている可能性が考えられるので、長期的に見てどうなのかという疑問が残ります(正当な理由例:面接の場所柄、プライバシーが守れないなど)。

■次に、カウンセラーが今使った技法他に使える技法についての詳細を尋ねてみるといいでしょう。

  • どのような理論なのか
  • どのような方面に強いのか
  • どのように解決へ向けて進むのか

 自分が使う技法について、しっかりと把握していることを確かめてください。 この説明がしっかり出来ているかどうかで、どの程度の理解度で技法を使用しているかが見えてきます。
 話を聞く側は、それほど技法自体に詳しくなくてもいいです。 素人でもしっかりと理解ができる説明ができているかどうかを評価できると思います。

 いかがでしょう?
 多くの人の人生に影響するかもしれないカウンセラー選び・・・忙しいかもしれませんが、この程度の手間はかけてもいいのではないでしょうか?

 ・・・という、茶飲み話の延長でした。
 他の人の「私ならここを見る」的な意見も聞いてみたいですね。

 

※註1:認知バイアス

 無意識のうちに収集情報、記憶、意思決定に偏りや誤りを持たせてしまうという、認知心理学や社会心理学の理論。 確証バイアス、感情バイアス、正常性バイアスなど細分化されているため、ここでの説明は難しいですが、興味のある方はWeb検索などで調べてみると良いでしょう。

 ただし、利用者が編集可能なWeb百科事典などの場合、編集者が認知バイアスをもって編集作業を行っているケースがあるので要注意です。

 

※註2:コールドリーディング

 事前に特に何も準備せず、相手の外観の観察や何気なく思える会話から情報を引き出して、信頼を得る話術。 良くも悪くも応用範囲が幅広いため、偏った視点で語られてしまうこともしばしばあります。

 カウンセリングの場合、私がすべてのカウンセリングの知識を有しているわけではないので、利用している人がいないとは到底言いきれませんが、コールドリーディングを利用して来談者の心を読み取ったように振る舞い、「あなたのことは、あなた以上に詳しく知っています。 だから私の言うことを聞きなさい」というようなことは言わないでしょう。