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話題の楽曲販売サービス"bandcamp" 購入者が購入価格を決める面白い仕組み

»2014年7月31日
PAGES TO THE PEOPLE

話題の楽曲販売サービス"bandcamp" 購入者が購入価格を決める面白い仕組み

高畑 哲平

KDDIウェブコミュニケーションズにて、中小事業者向けサービスの事業責任者。2007年よりレンタルサーバーCPIの事業本部長、2009年3月ドイツのCMS Jimdoの日本独占販売権を取得し、事業責任者に就任。2011年9月、Google、KDDIと共にみんなのビジネスオンラインを立ち上げる。2013年4月、取締役副社長就任。

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音楽、ITにアンテナを高くはってる人はご存知かもしれないですが、Bandcampというサービスが海外で急伸しているようです。

もの凄く簡単にサービスを解説しますと、ミュージシャン(楽曲を販売したい人)がこのサービスを使って楽曲の販売ができるサービスです。Bandcampがどういうサービスなのかはこの辺の記事が非常にわかりやすく書かれていますので、こちらをご覧ください。

Wired.jp : 「Bandcamp」は音楽配信の理想型か

「bandcamp」新たな配信スタイル 

私はBandcampとは何か?は割愛して、このサービスの面白いところを抽出して書きたいと思います。非常にファンの心理を突いているな、と感じる仕掛けについてです。

最低価格をミュージシャンが決め、払うお金は購入者が決められる

Bandcampはそれぞれのアーティストページから、登録された楽曲を視聴(一曲全部)でき、かつその曲のページに歌詞も表示されています。

これは以前から思ってたことなのですが、例えばSoundCloudなどの場合、曲は簡単に聴けるけど歌詞が同時に見られないのは不便だなって思ってました。なので聴く側の使い勝手は素晴らしいです。

スクリーンショット 2014-07-31 17.16.39.png

そして、再生ボタンの下にあるBuy Nowから楽曲を購入できるのですが、クリックするとこんな画面が出てきます。

スクリーンショット 2014-07-31 17.28.20.png



Name your price: $       CAD ($1 or more)

簡単に直訳しますと、CAD(カナダドル: このバンドがカナダのバンドのため)で1ドルが最低価格だけ、それ以上もつけれますよってことです。

これはおもしろい!!実にファンの心理を突いていると思います。通りすがりで見かけたバンドであれば$1で購入するかもしれません。でも、例えば普段から応援しているバンドの場合はどうでしょう?決められたCDの価格で今までは購入していましたが、そのバンドを心の底から応援しているファンはもっと支払うかもしれませんよね。

ちなみにこの例にあげているFearzeroというバンドは、私がカナダに留学していた頃のギターの先生のバンドでして、私はこの曲に$5支払いました。その価値があると思いますし、私自身先生には頑張ってもらいたいので応援の気持ちを込めての値段です。

さらに、購入後のこの画面がよくできています。

ファンはミュージシャンに自分の存在を気づいてもらいたい

購入後の画面で、その購入した曲について感想を書く行為はいまや当たり前です。このBandcampでも購入後に曲の感想を書く画面が存在するのですが、そのコメントを書く欄に書いてある言葉が実にファンの心理を突いています。

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そこには、

Tell the artist (and the rest of the world) why you love this record

アーティストに(それと世界に対して)なぜこの曲が好きなのかを伝えましょう

と書かれています。

そうなんです。ファンは、この曲が素晴らしいという気持ちをいろんな人に伝えたいと同時に、ミュージシャン自身に対して「私が買いました!大好きです!」って言葉を伝えたいという気持ちがあります。twitterのミュージシャンのアカウントを見ていると、ファンからの熱烈な自分PR合戦が見られますが、ミュージシャンとはファンにとってはいつでも雲の上の存在であり、手の届かない存在です。だからこそ、買ったよ!私はファンだよ!というのを伝えたい。気づいてもらえないかもしれないけれど、気づいてもらえるかもしれない機会が欲しい。

同じ購入後のコメントを書くだけなのですが、こういった書き方はファンの心理をうまく突いていると思うのです。

残念ながら日本語化はされていません

さて、このBandcampですが、残念ながらまだ日本語化されていません。また、日本のアーティストがどれぐらい登録されているのは不明です。Bandcampの日本進出はあるんでしょうか?

音楽好きとしては、是非日本でもこのような展開があるといいなって思います。日本の音楽シーンもWebサービスの進化により、メジャー・インディーズの垣根無く、世界でファンを数多く獲得しているミュージシャンが増えています。

インターネット x 音楽の進化は今後も注目です。