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教育は一筋縄でいかないものだから、真の教育者はここまで意識できるようになるのか!(#176)

教育は一筋縄でいかないものだから、真の教育者はここまで意識できるようになるのか!(#176)

森川 滋之

ITブレークスルー代表、ビジネスライター

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問題はページの上に何が書かれていたかではない。読みながら、あなたが何を考えるか、なのだ。(ヤンミ・ムン)

デフレの正体』という本をメルマガで知り、それを買うために本屋に寄りました。同書の紹介は、また別の機会にすると思いますが、今日は、そのときに一緒に買った『ビジネスで一番、大切なこと』を紹介したいと思います。

●私はケーススタディに偏見をもっている

この本、前から気になっていたのですが、買い渋っていたのは、ハーバード・ビジネススクールやMBAに対する偏見があったからかもしれません。

2001年か2年ごろ、会社からの指示でグロービスに通っていたことがあります。そのとき、ケーススタディというものが大嫌いになりました。

たぶん、コンサルの方が、教師としては素人だったからだと思います。なんだかケーススタディというのものは、声のでかいやつが成績優秀なんだなあと、ずっと思っていました。

なので、ハーバード・ビジネススクールで教えている著者の本には抵抗があったのですが、立ち読みしていたら、これは今こそ読むべき本だと思いました。

とはいえ、ケーススタディについての「偏見」が消え去ったわけではありません。その後、実際にやっていませんから。

●マーケティングの本としても最高だが

内容は、いろいろなところでレビューされていると思うので、今回はあまりふれません。一言でいえば、マーケティングに関心のあるひとは、すべからく読むべしという本です。私が読んだマーケティング関連の本では、最高の部類の一つです。

マーケティングに関して参考になったことは、またおいおい事例などを絡めながらご紹介するかもしれません。

ぜんぜん別の意味で参考になったのは、一流の教師は、いろいろと考えているんだなあということでした。

著者のヤンミ・ムンは、ケーススタディもすごいのですが、教師としてもトップクラスと認められているようです。

たとえば、冒頭の言葉です。

問題はページの上に何が書かれていたかではない。読みながら、あなたが何を考えるか、なのだ。

これは、この言葉そのままを受け取ってほしいと思うのですが、私は何よりも、この暗黙の前提をあえて文字にするところが、この著者のすごさだと思いました。

著者というのは多かれ少なかれ、このように考えているのですが、しかし、こんなことは暗黙の了解だろうと思い込んでいます。それで、言われもない評価に傷ついたりします。

教育者というのは、ここまで配慮できるのかと、本当に感心している次第です。

●あえて目標を明確にしない

教育ということに関しては、次の一節も心に残りました。

私は教師としての経験から、学生(筆者注:学生といっても社会人や経営者もいます)に大きなプロジェクトの立案という課題を与える場合には、二つの方法があることを学んだ。一つは、学生に対して、事前にプロジェクトの要点を示したリストを渡し、評価の観点を明らかにしておく方法。もう一つは、プロジェクトの要点も評価の基準も明確にせず、ただ学生たちに対する私の期待が高いということだけを伝えておく方法。

(前掲書)

 「前者の方法では予想通りの結果が出る」のだそうです(昨日の記事と関連しています。ミッションと評価基準を与えれば、期待したとおりの結果が出やすいということです)。

「後者は、まったく違う」のだそうです。プロジェクトの「いくつかが失敗に終わるのは避けられ」ませんが、「常にいくつかが、前者の方法では想像もつかなかった見事な成果を出す」とのこと。

どちらかだけを言う「教師」は多いのです。そして、そちらばかりをやる。

しかし、一流の教師は、両方試していて、それぞれの使い分けができるということなのですね。