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どん底のときに教えてくれたのは、コジローだった(#207)
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どんな状況でも慣れることができる。だったら恐れずにチャレンジしよう。
2007年、私は何年かに一度の精神的などん底にありました。
ある前向きな人たちが集まる講演会がありました。その前日、2年前から右目が見えなくなっていた愛犬コジローの、今度は左目が見えなくなってしまいました。
講演会の朝、コジローの散歩に行きました。雨が降っていました。目が見えないコジローにとって、唯一の道しるべはにおい。それが雨で消されていました。コジローは怖くて、腰が引けて、ほとんど歩けませんでした。
コジローは当時まだ8歳。不憫でなりませんでした。私自身も、目が見えなくて散歩もままならない犬を死ぬまで面倒見ることの重さに押しつぶされそうになりました。
そうでなくても、当時ずっと精神的に不調でした。講演会で前向きな言葉を聞けば聞くほど、コジローの不憫な姿が思い出され、自分は後ろ向きでダメだという思いがドンドン強くなり、いたたまれなくなりました。
ところが数日後。コジローは散歩のとき、普通に歩き始めました。そして、近所の公園の植え込みに飛び乗り、オシッコをすませて、また飛び降りたのです。
コジローの体高は50センチぐらい。植え込みの段差は30センチはあります。これはとても勇気が要ることのように思えました。
その姿を見て、コジローを不憫だと思ったのは、人間の勝手な思い込みだとまず知りました。コジローは目が見えなくても、自分がかわいそうだとは思っていなかったのです。
そして、生きているものは、すぐに自分の境遇に慣れるんだということも教わりました。
私は、挑戦する勇気がなくなりそうになったとき、あのときのコジローの姿を思い出すようにしています。