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バビル2世はブラック企業の社長か?

バビル2世はブラック企業の社長か?

森川 滋之

ITブレークスルー代表、ビジネスライター

当ブログ「ビジネスライターという仕事」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/toppakoh/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


自分軸の記事のほう、すっかりご無沙汰していますが、できればもっと読んでほしいなあと思うようになり、ただいま書き方等を研究中です。次回から書き方のトーンが変わるかもしれませんが、よろしくお願いします。

今回は、facebookに友達限定で適当なことを書いたら、面白いと言ってくださった方がいたので、誠ブログ用に書きなおしたものを載せようと思います。

まあ、笑い話です。

 

● ブラック企業とは?

 

本題の前にブラック企業についての定義を共有しておきたいと思います。

法を犯していたり、無法な勢力に加担しているような企業はここでは論外とします。すると、ブラック企業っていったいどんな会社なのか。

wikipediaによれば、

少なくとも以下の要件が当てはまればブラック企業と総称される(両方当てはまる企業も存在しうる)。

  • 末端の従業員(平社員アルバイトパート)および待遇を軽視している企業
  • 消費者や地域への貢献度が低い企業(商品・サービスの質に劣る)

だそうです。

2ちゃんねるなどを見ていると、地域貢献についてはあまり言われておらず、もっぱら社員への待遇が悪い会社のことがやり玉にあがっているようですし、消費者へのサポートが悪い会社はブラックどころかもっと手厳しい表現が使われることが多いようです。

ここではブラック企業とは社員への待遇が悪く、パワハラが文化としてまかり通っているような会社ということにしておきましょう。

 

● 「バビル2世」とは

 

さて、本題に入ります。

「バビル2世」をご存知でしょうか?

僕らの世代であれば、ほとんどの人が知っていると思いますが、30代中ごろ未満の人は知らないかもしれません。

知らない方は、Wikipediaを見てください。

と書いても見に行かない人が大半でしょうから、Wikipediaの冒頭の説明をここに引用させてもらいます。

はるかな昔、地球に不時着して帰れなくなり住み着いた宇宙人・バビル。彼が残した遺産・バベルの塔と三つのしもべを受け継いだ超能力者・浩一が、世界征服を企む悪の超能力者・ヨミと戦う物語。

この「超能力者・浩一」が、「宇宙人・バビル」の後を継ぐ者という意味で、バビル2世と呼ばれています。

もっと簡単にまとめると、善悪2人の超能力者が戦う物語です。

しかし、どちらが善でどちらが悪なのか? これがなかなか難しい問題でして・・・。

 

● バビル2世はどう見ても"ブラック"

 

世界征服を企む者(ヨミ)が悪であり、それを阻むもの(バビル2世)が善である――これが普通の考え方でしょう。

しかし、二人を企業経営者とみなすとどうでしょうか?

そう考えると、バビル2世ってかなりブラックです。

まず「三つのしもべ」というのが、すごい。「しもべ」ってなんでしょうか?

goo辞書によれば、以下のとおりです。 

しも‐べ【下部/僕】 1 雑用に使われる者。召使い。「神の―」 2 身分の低い者。「この魚...頭は―も食はず」〈徒然・一一九〉 3 官に仕えて、雑役を勤めた下級の役人。「―ども参ってさがし奉れ」〈平家・四〉

召使いとか下男とかいう意味です。

すごいですねえ。「バビル2世」の連載が開始された1971年の読者は、召使いとか下男とか半奴隷的身分の存在(設定は現代です)をすんなりと受け入れいたわけです。今だと歴史物以外の少年向け読み物ではちょっと問題視されそうです。

それどころか、バビル2世のアニメ版の主題歌には「三つのしもべに命令だ!」という詞がありました。

頭ごなしの命令なんて、イマドキの経営者はしません。

でも100歩下がって命令はありとしましょう。頭ごなしではないにしろ、社長の最終的な指示は実質的に命令ですから。

だからといって、「召使いに命令」という態度だったらどうでしょう? これってパワハラでは?

「三つ」という数え方も凄いです。ロプロス、ポセイドン、ロデムには、どう考えても人格がありますし、その数え方はないだろうと思います。

なお証拠はありませんが、バビル2世には(昔から言われてきた)セクハラ疑惑もあります。 

ロデムは普段は黒豹の姿をしていますが、何にでも変身できるという設定です。バビル2世は、ロデムによく美女に変身するように命令するのです。

バビル2世である浩一は中学生という設定です。容姿や、彼のしっかりした考え方から推察するに、1年生とは考えづらい。おそらく3年生です。つまり性に目覚めた頃です。

これは考証ではなく僕の想像に過ぎませんので、本当は1年生かもしれません。だとしたら、ませた1年生です。どっちにしろ性に目覚めているに決まってますっ!

それなのに、彼はバベルの塔に孤独に暮らしています。この辛さは、その時期を通り過ぎてきた一人の男性として僕にはとてもよく理解できます。

そこに絶世の美女にでも可憐な美少女にでも変身できる便利なしもべがいたとしたら・・・。

そんな下衆なことを考えるのは、僕と僕の友達だけでしょうか?

いや、例の市長なら「そんな猛者というか、精神的にも高ぶっている正義の味方は、どこかで休息をさせてあげようと思ったら、こういうしもべが必要なのはこれは誰だってわかる」と諸手を挙げて賛成してくださることでしょう(ここはもちろん笑いを取るためのパロディです。実際は賛成されても困ります。あの方とはかなり考え方が違いますので)。

パワハラに(もしかしたら)セクハラ。それに「しもべ」ですから、当然無給で24時間待機です。もう十分ブラックと言えましょう。

 

● ヨミは部下思いの名経営者?

 

一方ヨミはどうでしょうか?

僕は、大人になってから「バビル2世」のマンガ版を読み返しました。そのときに意外だったのは、ヨミは悪だというけれど、具体的に悪いことってほとんどしていないということでした。拍子抜けするほどにです。子どもの頃はものすごい悪だと思い込んでいたのに・・・。

たしかに、いくつかの国の首脳を影で操っています。ただ、その国々が今の北朝鮮ほどにも悪く感じられないのです。まあ、普通の国です。というか、世界を滅ぼすことができるぐらいの兵器を保有し、それだけではあきたらず他の国にも売り、敵対国には容赦ないという国だったと思うので、これはアメリカとかです(笑)。

ヨミ自身も、バビル2世との戦いの中で、建造物を破壊したり、時には人を死なせるようなこともありますが、これだってバビル2世がちょっかいをかけてこなければ起らなかったかもしれません。

第一世界征服ってそんなに悪なのでしょうか? もちろん民主主義の観点からは許しがたい行為です。

でも、仮にヨミが世界の支配者になったとしても、それでみんなが幸せなら問題ないような気もします(もちろん現実問題として一人の支配者によってみんなが幸せになるような政治は極めて困難という理由で、独裁には反対ですが)。

実際、そんな感じがするのです。というのは、ヨミって部下に慕われているんですよ。ヨミが死にそうになったときに、部下たちが本気で心配する場面があったと思います。

少なくとも、ヨミは部下を人間として扱っています。いちおう悪の権化という設定なので、時には非情に部下を見捨てることもありますが、バビル2世を倒せるチャンスだったのに部下の命を助けることを優先したこともありました。

また、僕の印象に過ぎませんが、三つのしもべが命令されるまま働いているのに対して、ヨミの部下たちは自主的に、またイキイキと働いているように見えます。また(三つのしもべも言いませんけど)、ヨミの部下たちが愚痴を言っているのも聞いたことがありません。

まあ、仕事としては「世界征服」って結構やりがいがありそうです。少なくとも俺は何のために働いてるんだというような迷いはないでしょう。組織の目的設定が明確です。まさしくビジョナリーカンパニーです。

ヨミは、「俺と同じバスに乗れ!」と言って人を集めたのに違いありません。

こうして、バビル2世がたった3人しか使えないのに対して、ヨミはもっともっとたくさんの部下を統率しています。

ヨミは、名経営者と言っていいと思うのです。

 

● なぜ三つのしもべはヨミの命令も聞くのか?

 

僕が、"ヨミ=名経営者、バビル2世=ブラック経営者"との確信を強めたエピソードがあります。

実は最後のほうで、三つのしもべはヨミの思念にも反応するので、ヨミとの戦いに彼らを使えないという事態が発生するのです。バビル2世の命令とヨミの命令のどちらをきいていいのか分からなくなって三つのしもべが混乱してしまうんですね。

そこで、バビル2世とヨミの決戦は二人きりの超能力対決という形になりました。

このような形にしたいがための設定だと思うのですが、それでも、僕にはこれは三つのしもべのストライキというのが本当じゃないかと思えるのです。

一番肝心なときにストに打って出る。しもべたちの恨みは結構深かった――と解釈するほうが、実態に則しているのではなかろうか?

とはいえ、裏切ってヨミにつくのも問題があった。というのは、ヨミの性格から考えると、そんな大事なときに裏切るような者たちを信頼しないからです。となるとヨミが勝ったとしても冷や飯を食わされる恐れがある。ましてやバビル2世が勝利したとしたら・・・。

このようなリスクも計算にいれて、しもべたちはどちらにもつかないことを選択したのではないか?

深読みというより無茶読みに決まっていますが、僕にはこう解釈するほうが面白く感じます。

なお、その証拠というには、若干弱いですが、原作者の横山光輝が生前こう語っていたそうです。

バビルがヨミを倒した後の人生がどうなったかを質問され、「きっと孤独な、寂しい人生を送ったんだと思いますよ。」と(前掲のWikipediaの記事より)

 

● 無理やり自分軸にこじつけると

 

さて、いちおう自分軸に無理やり結びつけて終わりにします。おまけなので、ここで読み終えていただいても全然構いません。

まず、善悪というのは単純に決めつけられない。いますばらしい理念と思ったことも10年後にはぜんぜん違う評価になることもある。

ただ、僕はやみくもな相対化は思考停止であり、やっぱり普遍的な価値はあると考えたい。本当はないにしても、少なくともそれを考えることは続けたいと思う人間です。

ですので、自分軸を考える際にも、できるだけ普遍的な価値を追及してほしいと思います。

もう1点は、善悪でもこんなに簡単に入れ替えることができるのですから、強み・弱みなんてそれこそ簡単にひっくり返ります。

あなたが欠点だと思っていることが実は強みだということはいくらでもあるので、ぜひそういう発想で自分の強みを見つてみてはいかがでしょうかと提案する次第です。 

追記

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