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経営者やマネージャーにこそ読んでほしい営業本
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「サイレントセールストレーナー」という日本で唯一の肩書を持つ渡瀬謙さんの新刊が、昨年11月に発売された。
題して、『相手の「買う!」を自然に引き出す4ステップ商談術』(日本経済新聞出版社、以下「本書」)。
発売と同時にご献本いただいていたのだが、読む時間を取れずにいた。ようやく、少し時間ができたので一気に読み、書評を書いた次第だ。
私は、本書を以下の方々に読んでほしいと思った。
- 営業初心者
- 中小企業経営者および事業部門のマネージャー
本書は、商談において必要な考え方やスキルを、渡瀬さん独自の視点で、網羅的に解説したものである。したがって、営業初心者にお薦めするのは当然のことだろう。
だが、中小企業経営者や事業部門のマネージャー(以下合わせてマネージャーという)にお薦めするのは唐突かもしれない。そこで、その理由を述べながら、本書を紹介していきたいと思う。
●「4ステップ」は渡瀬さんの原点
渡瀬さんからの挨拶状には、次のとおりの文言が添えられていた。
ようやく4ステップ専用の本が出せました!
渡瀬さんは、それまでも何冊か著書を出していたが、2009年3月に発売された『内向型営業マンの売り方にはコツがある』(大和出版)をきっかけに、その後の出版オファーが殺到し、急激にブレイクした人だ。
同書で渡瀬さんは、リクリート時代にあまりに売れなかったため心因性の下痢になったなどという恥ずかしい過去も赤裸々に明かし、明るい話し上手でないから売れないのだと悩んでいた「内向型の口下手」営業マンに希望を与え、多くの共感を得た。いわば「内向型営業マンの神」のような人である。
私は渡瀬さんがブレイクする前からの知り合いであり、知り合った頃に渡瀬さんが定期的に開催していた「4ステップ商談術」というセミナーにも呼んでいただいたことがある。
「4ステップ」はその意味では渡瀬さんの原点なのだ。もちろん、渡瀬さんの今までの著書の中でも、「4ステップ」(本によっては「5ステップ」)については触れられているが、「4ステップ」をメインテーマに書いたものはなかった。なので、感慨一入(ひとしお)なのだろう。
往年のセミナーと比較すると、表現の変わっている部分もあるし、その後新たに得た知見も加わっている。まとめ方等も当時よりかなり洗練された印象もある。
おそらく、営業初心者がこの通りに意識して商談を進めれば、高い確率で早く結果が出るだろう。営業初心者がまず読むのであれば本書であり、雑談や質問の方法をもう少し詳しく知りたければ、別の著書を参考にすればよい。
では、マネージャーは本書から何を学ぶべきなのか?
●「4ステップ」とは?
渡瀬さんのいう「4ステップ」とは、図(本書 P43からコピー)の通りのものである。
彼の主張を簡単にまとめると、次のようになるだろう。
「4ステップ」(アイスブレイク・ヒアリング・プレゼンテーション・クロージング)の存在はそれぞれ知られているが、1回の商談の中でごちゃごちゃになっている。
これをステップとして意識し、順番通りに進めて行けば、必ず成約率は高まるし、ダメな商談の見切りも早くなるため商談数も増えて、結果として成約件数が増える。
これを聞いて、あなたがマネージャーだとしたらどう思うだろうか?
「まさか、アイスブレイクを最初にやらない営業マンなんかいないだろう」と思うかもしれない。
しかし、渡瀬さんに言わせれば(そして、僕も現実に感じるが)、アイスブレイクもしないうちにプレゼンテーション(本書では商品説明の意味)をする営業マンがほとんどなのだ。
●マネージャーが確認すべきこと
マネージャーであるあなた(営業マネージャーであろうと、開発系のマネージャーであろうと)は、営業マンがお膳立てしてから商談の場に臨むことが多いだろう。あるいは、Webからの問い合わせで出かけて行くことがあるかもしれない。
商談の場に臨む機会が多いのに成約率が低いとしたら、あなたもたぶん商談が上手でない。初心に返って本書を読み、自分の足りないところを知ろう。
だが、そもそも商談の場に臨む機会が少ないのであれば、営業マンあるいはWebサイトが、本書に書かれているようなことをおろそかにしている証拠だ。もっと言えば、おろそかになっている理由は、あなたのサポートが十分でないのかもしれない。
どちらにせよ、まずは本書に書かれているたくさんの商談ノウハウを拾ってチェックリストを作ろう。
たとえば、任意に開いたページ(P28~29)から拾ってみた。
□ いきなり説明からはいっていないか?
□ ひたすら明るく振る舞おうとしていないか?
□ 何度も強引に会いにいこうとしていないか?
□ 強引に説得しようとしていないか?
このぐらいのレベル感で、全ページ(それこそ「はじめに」から。たとえばP4なら「自分の活かし方を知らないだけなのに、売れない営業マンのレッテルを貼っていないか?」という感じで拾っていく)から言葉を拾ってチェックリスト化するのである。
このチェックリストをベースに、自分が力不足だと思うのなら、まずは自己診断をしよう。
営業マンやWebサイトに問題があると思うのなら、やはりチェックリストをベースに、営業マンにヒアリングしたり、Webを見直したりしてみよう。そして、あなたのサポートが必要な個所があれば改善してみよう。あなたの出番は必ず増えるはずだ。
ちなみに、渡瀬さんの本が売れていて、次々と発行される理由は、このようなチェックリストを作った時にわかる豊富さだと私は思う。文章が平易なので、一見軽く見えるのだが、このようなリストを作成してみると内容がとても充実していることがわかるのだ。
逆に、私がビジネス本としてイマイチだと思う本は、こういうリストを作るとスカスカになる。
●この2つの例の違いが分かりますか?
さきほどのチェックリストの例だけだと、あまり本書に食指が動かないかもしれない。
そこで、事例を1つ公開しておこう。
ニーズを引き出す質問の仕方だ。
●悪い例
妻「ねえ、明日の夕飯何が食べたい?」
夫「ええ~、明日の夕飯? う~ん、なんでもいいよ」
●良い例
妻「ねえ、昨日の夕飯って何だったっけ?」
夫「昨日はとんかつだったじゃないか」
妻「そうだったわね。で、今日がすき焼きでしょ?」
夫「うん。うまかったよ」
妻「じゃあ、明日の夕飯は何にしようか?」
夫「そうだなあ、ちょっとあっさりしたものがいいかなあ」
妻が営業マンで、夫が顧客なのは誰でもわかるだろう。では、「良い例」のほうで、妻はどうやって夫のニーズを引き出させたかわかるだろうか?
答えは、ぜひ本書を手に取って確認してほしい(P102~105)。これを知るだけでも、お客様のニーズがよくわからないというようなことが激減するはずだ。
このようなノウハウが分かりやすい事例と一緒に随所にちりばめられていて、しかも網羅的な営業本というのは、なかなかないものだ。営業初心者にもマネージャーにも読んでいただきたいゆえんである。