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顧客価値とは何か ~ 顧客を読者になぞらえた説明
当ブログ「ビジネスライターという仕事」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/toppakoh/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
ぼくはプロのライターと自称していますが、自称するにはそれなりの理由があります。
それは読者をきちっと意識していること。
今回のタイトルは顧客価値ですが、顧客を読者になぞらえて説明したいと思います。
以前のぼくは、コンテンツ重視の人間でした。コンテンツが良ければ、人は見てくれるし、良さが分からないのは、読み手の読解力が不足しているからだと思っていました。
たいへんな勘違い野郎ですが、世の中はこの勘違い野郎であふれています。
特にアマチェアほど読み手の読解力のせいにしたがります。これは、読者価値以前の問題であり、多くの読者は一度読んだら二度と読んでくれないことでしょう。
●読んでもらうためにはメリットが必要
さて、ブログの文章でも雑誌記事でも何でも言いのですが、読んでもらえるものともらえないものがあります。
書籍の売上になると実績や広告宣伝など別の要素が出てきます。ここでは公開のブログや雑誌記事のように、機会は平等なのに、アクセス数や感想が違ってくるもので考えます。これらを、以下読み物と呼びます。
読み物を読んでもらうには、あたりまえですがメリットが必要です。
読んでもらえない読み物は、メリットに関して粗雑な考え方をしていることが多いのです。
得する情報とか、問題解決できる情報とか、そういうものを単純に提供すればよいと思いがちなのです。
●メリットを少し精密に考える
メリットについては、考えるべき観点が三つあります。
一つは、メリットの種類。
得したとか、問題が解決できたとか、というのは一番分かりやすいメリットです。
ただ、他にもメリットはたくさんありまして、面白かったというのもメリットだし、元気が出た、勇気が湧いてきた、やる気が出た、ワクワクしてきた、なども重要なメリットです。
メリットは総量で多ければ多いほどよい。一つ一つの度合い(たとえば得した度)を高めるのも大事ですが、一つ一つの度合いは小さくてもたくさんのメリットを与えるという戦略もあります。
一番いいのは、二つほど明らかに度合いの高いもの(ウリになります)があって、他のメリットにも配慮されているというようなものでしょう。
二つめは、メリットを感じるタイミング。
読む前と読んだ後の二つがあります。
多くのアマチェアが意識していないのは、読む前にメリットを感じさせるということ。
つまり、タイトルや冒頭のつかみを工夫するということです。
アメブロなどでアクセス数の少ないブログは、まずブログタイトルが悪い。そして、毎回の記事タイトルがつまらない。多くはこれらを直すだけで、アクセス数はかなり増えます。
もう一つは、忘れがちですが、メリットを感じさせるための工夫です。
いくらいいことが書いてあっても、下記ができていない読み物は読まれません。
- 最後まで読ませる工夫がない
- 文章の構造がよく分からない
- 知識・意見しか書いていない
これらを順に説明していきます。
●最後まで読ませる工夫
最後まで読ませる工夫は、実に簡単なのですが、多くの人が苦手としているようです。
人は読み物を流し読みするということを思い出してください。あなたもそうだと思うのです。
であれば、まず大事なのは、要所要所にアクセントを入れるということです。
図版、文字の強調、文字色の変更、改行などがアクセントになります。
アクセントを入れる理由は、そこで目を留めてもらうことにあります。
アクセント部分だけを読めば、なんとなく内容が分かるというようにしてください。そのような記事は、時間節約という大きなメリットを読者に与えます。
アクセントの部分で目を留めて、内容がとても気になり、最初に戻って精読を始める読者も一定の割合で必ずいます。
そのような熱心な読者にも、アクセントがあることは、たいへん大きなメリットなのです。なんらかの価値がある読み物だということが分かるからです。
●文章の構造が分かるようにする。
ぼくが、雑誌連載初心者だった頃に編集者に強く言われたことがあります。
それは、見出しと図版だけで内容が分かるようにするということ。
このようにできれば、文章の構造がほぼ一目で分かるようになります。
先ほどの最後まで読ませる工夫の一つとほぼ同じですが、あえて一項目にしているのは、図版も見出しもおろそかにしている人が多いからです。
図版について一つだけ例を挙げると、ぼくは以前は「まとめの図版」というのをおろそかにしていました。
たかだか三ヶ条ぐらいのポイントなのに、わざわざ図にしてあるものがありますよね?
ぼくは以前は、こういうのは紙のムダだと思っていました。これは文章内の箇条書きで十分だと思っていたのです。
しかし、実はこういうことが読者に対する親切なんですね。
図版以上におろそかになっているのが見出しです。
見出しは、つけるのが難しいという事情もありますが、おろそかにしている間はけっして上達しません。
上手な見出しがついている文章は読みやすくなります。下手な見出しは誤解を与えることさえあります。見出しがないのは、かなり不親切です。
意識して見出しをつけるようにしてください。
●イメージできないとメリットを感じない
知識・意見しか書いていない読み物をよく見かけます。
専門家だけが読むものであれば、これでも構わない場合もあります。たとえばリファレンス・マニュアルのようなものであれば、それこそ知識だけ書いてあるほうが、分厚くならない分親切と言えます。
しかし、たとえ数学の参考書であっても、現実世界に即した説明や例題があったり、また演習問題があったりします。
どんなにすばらしい知識や意見でも、読者はそれがイメージできないとメリットを感じないのです。
まずは実例を書いてから、知識や理論を説明し、最終的には方法論(≒ノウハウ)にまで落とし込んでいくという書き方がもっとも親切であり、イメージしやすいようです。
あとは書き方の工夫などもあります。
たとえば、Webの画面だと、読むと言うよりは、見るという感覚のほうが強いようです。
となると、文字が詰まっていると非常に読みづらくなります。どの行にいまいるかというのが、読んでいるうちに分かりづらくなるからです。
何度も何度も視線を動かさないといけなくなります。
なので、書籍などでは必要のない改行や空行をブログやメルマガ等では頻繁に使います。
このような工夫を重ねて、なんとか読んでもらい、書いてあることをイメージとして捉えてもらえるようにします。
得したとか問題が解決されたということがメリットであれば、それこそ末来のうまくいっている姿をイメージできないと、読者はメリットを感じることができません。
●「何を」(顧客価値)は、このぐらい考えていないと出てこない
以上、読者から見た読み物の価値と言うのは、どういう要因で決まってくるかについて書きました。
何のために書いたかというと、顧客価値の一つの事例を示すためでした。
商品価値ということであれば、読み物の内容だけで十分なはずなのです。
しかし、それだけでは読者が満足しないことは、読んでいるあなたも「読者」であるからには容易に理解できることだと思います。
読者にとって価値のある読み物にするためには、最低限今回書いた程度の要因について考える必要があります。
もちろん、時間や予算などの問題で全部を取り入れることができないケースもあります。
この記事でもすべてを満足しているわけではありません。考慮はしつつも、あえて外しているものもあります。
顧客価値が商品価値とは次元の違うものだと言うことを、今回の事例でお分かりいただけると幸いです。
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