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8月24日 分に応じる~愛情があれば、本気で叱ってもいいという時代を懐かしく思うが、もう帰ってこないのだろうなあ(#458)

8月24日 分に応じる~愛情があれば、本気で叱ってもいいという時代を懐かしく思うが、もう帰ってこないのだろうなあ(#458)

森川 滋之

ITブレークスルー代表、ビジネスライター

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会社のレベルに比べて、優秀すぎる人を集めすぎても、かえってよくない。こんなつまらん会社がと思われるより、この会社は結構いい会社じゃないかといって働いてくれる人のほうがありがたい――松下幸之助さんはこのように言います。

稲盛和夫さんも、ご自身の著書のいくつかで、京セラ創業時は優秀な人は居着かず、世間一般の評価ではその人たちに及ばない能力の人が一生懸命やってくれた。そのおかげで今の京セラがある、と書かれています。

私の知るいくつかの会社でも、大企業のように超高学歴の人はいなくても、その会社が大好きでがんばっているという人が多い会社は伸びています。

☆☆☆

私自身は、最初に入った会社に定年まで勤め上げるつもりで入社しましたが、何か不満があると、すぐに転職や独立を考えたことは事実です。

結局、転職も独立もして、ようやく自分は大して優秀でないということが分かりました。以前の私のように根拠もなく自分は優秀で、他でもやれると思っているような人間が、一番たちが悪いかもしれません。

こういう人間でも会社は何回か引き留めてくれて、今でもおつきあいをしてくれます。感謝しかありませんが、一方ではこのような人間を引き留める必要はないように思います。

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中には、障がい者をはじめとする就労困難者を熱心に採用している会社もあります。これがなんとIT企業で、しかもずっと黒字です。

創業当初は募集しても人が来ないので、履歴書なし・経験不問で面接をして、人物次第で採用しました。結果的にニートやフリーターを大量採用することになりましたが、問題なく増収増益が続きました。

つい最近では、一部のスタッフをのぞき、現場はすべて障がい者だけという子会社を作りましたが、そちらも初年度から黒字です。こちらもれっきとしたIT企業です。

社長に言わせればあたりまえのことなのだそうです。

確かに訓練に時間はかかるが、仕事の出し方次第では、いわゆる健常者より効率がいいし、何よりも一生懸命やってくれ、しかもほとんどが退職しない。リクルートのコストなども含めたトータルな労働生産性は遙かに高いので黒字にならないはずがない。

それを、一般の経営者は大きく誤解している、と。

これだけ聞くと、シビアな計算によるものと捉えられかねない発言ですし、そもそもは採用できなかったからなのですが、今では従業員への愛情がベースになっています。そうでないと続きません。

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これは、松下さんも稲盛さんも同じことではないかと思います。

松下さんには有名な逸話があります。丁稚時代から育て上げた人が関連会社の経営者となり、松下さんに挨拶にきました。松下さんは帰り道、彼が乗った車が見えなくなるまで、ずっとお辞儀をして見送ったのだそうです。

本田宗一郎さんなども同様ですが、昔の経営者は怒るときは本気で怒る。周りはもう手がつけられません。それが許されたのは、裏にこのような愛情があったからに違いありません。

☆☆☆

今の世の中が難しくなったのは、たとえば教師の体罰は、その行為だけで裁かれるようになったからだと思います。愛情によるものか、ただの腹いせか、そういう区別をせずに、行為だけでシンプルに断罪しようとする。

体罰擁護派もいますが、その多くは体罰の程度でやりすぎかどうかを判断しているような気がします。

あげくの果てに、教師がちょっと叱っただけで、精神的苦痛を受けたとか、パワハラだとかいうガキが出てくる始末・・・。

断罪がシンプルになった分、世の中は難しくなり、たくさんの問題を抱えるようになりました。

島田紳助さんの引退に関わる事実は分からないのですが、伸介さんが、自分自身をシンプルに断罪することで、また芸能界だけでなく世の中全体がややっこしくなるような気がしています。

☆☆☆

あからさまな犯罪行為は論外として、世の中にはグレーな部分がたくさんあります。

そのグレーな部分を大きな器で解決することを、「清濁併せのむ」と言います。

このようなことをしてくれる器の大きな人がいないと、何もかも議論で判断しなければいけなくなる。しょっちゅう意見の対立が起こり、ややこしく、面倒くさく、住みづらい世の中になるのは当然です。

何でもかんでも断罪し、清潔で論理的な世の中を作ろうとすると、清濁併せのもうとする人がどんどんいなくなります。

※清潔で論理的な社会というと、私にはまず最初に北朝鮮が思い浮かびます。

以前、清濁併せのめる経営者になろうというようなことをメルマガに書いたら、森川は不正を擁護するのかというおバカな質問をくれた人がいました。そういう人には、たとえば遠山の金さんを思い浮かべてください。あれがいい例です、と説明します。

金さんのやっていることは、今の裁判制度だととんでもないことです。あんな裁判官がいまいたら即日罷免となります。しかし、ああいう人がいないと、たとえば近所のもめ事みたいなことも、全部裁判になってしまう。必要なのです。

金さんで分かりづらければ、勝海舟、西郷隆盛など幕末から維新にかけてはそんな人がたくさんいるので、誰でもいいから伝記を読んでみてください。

今の日本にそのような人がほとんどいなくなったのは、田中角栄元首相の断罪から始まったような気がします。

そして、今の日本――幕末や終戦と同レベルの混乱期といえます――にこそ、そういう人は必要と思うのですが。

これ以上、話が膨らむと収拾がつかなくなるので、このへんで。

今日の一言) 優秀な人より、一生懸命な人を大切にしよう。

追記

本年の一日一言は、『松下幸之助 成功の金言365』を毎日1ページずつ読んで、自問自答するという趣向です。

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