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「部下のやる気向上」に違和感を感じる理由

「部下のやる気向上」に違和感を感じる理由

森川 滋之

ITブレークスルー代表、ビジネスライター

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部下のやる気を向上するための書籍、セミナーなどが花盛りだが、どうも違和感がある。

というのは、部下のやる気を引き出すというからには、上司(以下管理職に限定する)にやる気があることが前提のはずだ。しかし、やる気のある管理職がどれだけいるというのだろうか、と思ってしまうからだ。

 

が所属していたIT業界では、プロジェクトマネージャ(以下プロマネ)になりたい人が10人に1人しかいない時代があった(「日経コンピュータ 2005.7.11」)。今もたいして変わっていないか、もっと減っているかもしれない。

これは、管理職になりたくないと言っているのとほぼ同じことである。管理職でないプロマネもいるが、間違いなく管理職候補だ。実際、2000年ごろでも僕の部下や後輩で役付きになりたくないという者は多数いた。

僕自身も、管理職になりたくて管理職になったわけではない。できれば大きな責任は持ちたくなかったのだが、同期に出世で負けるのが嫌だったので、見栄で昇格試験を受けたというのが本音だった(こんな人間がいい管理職になれるわけがない。あとで大きなしっぺ返しをくらってしまった)。

 

れはIT業界に限ったことではないようだ。僕は特定の顧客を担当するのではなく、次々と新規開拓する部隊にいたので、在職中に20社以上の会社の仕事をさせてもらった。システム開発というのは、打ち合わせが極めて多く、また客先に出向くことが多い。客先に常駐することも多い。顧客を観察する機会に恵まれている業態だ。

どの会社でも、やる気のある管理職とそうでない管理職がいた。その後ユーザー企業側のITコンサルタントして、SE時代よりももっと深くお客と関わる機会があったので、両方の管理職の本音を聞かせてもらえた。

どうやら、どの会社でも、自分の見栄か、周囲の圧力か、理由は様々だがうっかり管理職になる人は多いようなのだ。また、やる気に燃えて管理職になったはずなのにその後やる気をなくした人もいる。

図解すると、下のようになる。

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うちの会社の管理職は、みんなやる気があると思う方は、これ以上は読む必要はない。あなたの会社はすごい。

僕の知る限りでは、好業績の会社でやる気のある/なしの比率が1:1ぐらい。平均的な業績の会社だと、1:2から1:4。それ以下だと業績も平均以下。

 

る気のある管理職でも、環境の変化でやる気がなくなるケースは多々ある。

得意分野の市場がなくなり、不得手な分野に配属になって自殺した上司が実際にいた。転勤でやる気をなくす人もいる。

プライベートな変化でもやる気はなくなる。離婚でやる気がなくなる人もいるだろう。親の介護が苦になってという人はこれからどんどん増えるだろう。

人間関係でやる気がなくなる人も多い。管理職にも上司はいるが、その上司の心無い一言でやる気を失う人もいる。部下が叛乱を起こすこともある。顧客と喧嘩してやる気がなくなる人もいる。

一度やる気がなくなった管理職が、再びやる気を取り戻すことはめったにない。

 

度やる気を失った管理職でも、そこは人間だから、何らかの働きかけをすることでやる気を取り戻すことは多い。

しかし、会社というところは管理職というのはそもそもやる気のある人だと思っているので、そのような働きかけをしない。業績が悪いと、叱咤激励するだけだ。

それは、社長をはじめとする経営者が、やる気のある人ばかりだからだ。彼らは自分の能力が高いから経営者になれたと思っているが、そんなことはない(嘘だと思ったら、社員の本音を聞いてみるがいい。誰も話してはくれないと思うが)。やる気があったからなれただけなのだ。

ただ、彼らにとってはやる気というのは、それこそ空気のように自然なものなので、やる気がない人がいるということがまったく理解できない。経営者で今までの議論が理解できる人は、よほど他人を思いやれる人だと思う。

こうした事情で、誰もやる気のない管理職をケアしないので、職場には少しずつやる気のない管理職がはびこっていくわけだ。

しかしながら、やる気のない管理職が部下のやる気を引き出せるわけがない。

部下のやる気を引き出す研修の前に、管理職のやる気を引き出す施策が必要なのである。

 

※できれば、こちらも併せてお読みください。
http://blogs.bizmakoto.jp/toppakoh/entry/4622.html 

追記

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