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マインドマップへの悪口と提案
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成功屋さんが大好きなマインドマップ(それとフォトリーディング。日本の成功屋が誰に影響を受けているか一目瞭然である)。
マインドマップが万能だと思っている人が多くていやになる。これはおそらく、マインドマップのインストラクターかなんかの資格を取るのにかなりのお金を費やしている人が多いので、元を取ろうとする人たちがいたるところで宣伝しまくるからだと想像している。
マインドマップについては、高名なコンサルタントであるY先生の発言が最高に面白かった。
「トニー・ブザンはマインドマップという"すばらしい"発想法を編み出したのに、なんで第2、第3のマインドマップが編み出せないんだろうねえ」
マインドマップが発想法として優れているのは、脳の神経のつながり方に似ているからだというトンデモ発言がある。眉唾以前だと思うのだが、こういうことを単純に信じる人が多いのだろうなあ。
僕は脳科学者でもなんでもなく、高校までの生物+ブルーバックスの脳科学本程度の知識しかないが、それでもマインドマップと脳とではぜんぜん違うということは分かる。
マインドマップは中心(テーマ)があって、そこから放射状に分岐していく形になっているが、脳には中心はない。脳の働きは、どちらかというとネットサーフィンに近いような気がする。
中心のあるなしの違いは、意外と大きいと思う。
マインドマップは、どちらかというと脳を一つのテーマに向かわせる、つまり脳の働きに制限をもたらすことで無理やり発想を得ようとするものではないだろうか。
実際にマインドマップを描いている人を横で見ていると、自由な発想などにはならず、描きながら自分が描いたことに縛られていると感じることが多い(そこで横から口出しすると、また発想が広がるというケースが過去に多々あった)。
もしやるなら、一枚のマインドマップを大勢で描いていくのがいいだろう。一人一人は何かに縛られながらも、複数の発想が出てくるのは間違いない。
それでも、マインドマップを全否定するわけではない。僕も、たとえば文書の目次を作るときなど、一定の場面では活用させてもらっている(どちらかというと既に頭にあるものを整理し、漏れや重複がないかを確認する作業だ)。
Y先生の発言があるにせよ、マインドマップはトニー・ブザンによる偉大な発明であると思う。
本当のところは、何が何でもマインドマップという"工夫力"のない人(それでいて自分は頭がいいと思っている人)に、どうにも我慢ならないのである。
たとえば、QC7つ道具、新QC7つ道具というようなツールは昔からある。7つ道具というぐらいだから、場面に応じて使い分けてきたはずだ。
マインドマップ万能論を聞いていると、ドライバーとプライヤーだけで修理をする自転車屋(実在したらしい! もちろん車体に傷をつける)みたいだなあと思うのだ。
マインドマップの活用法の中でも、これはどうかなと思うのが「議事録をマインドマップで書こう」というものだ。
議事録というのは、時系列が重要なのである。だから、通常の議事録は発言順に書かれている。時系列の分からないマインドマップで書かれても、なんでこんな意見が出てきたのかが分からなくて、あとで揉めたときに困ってしまうのだ。
しかしながら、マインドマップで議事録を作成するというアイデアには捨てがたいところもある。意見の関連性を表現するということでは、マインドマップは優れているからだ。
であれば、マインドマップで時系列も分かるように工夫すればいいのだ。
それで編み出したのが、僕オリジナルの"時系列マインドマップ"である(下図、クリックすると拡大図が出ます)。
見れば分かると思うのだが、一応説明する。もはや分かったという方は読み飛ばしてください。なお、これは会議中にホワイトボードに描いてほしい。記録として誰かのノートに作るだけだと威力が半減する。その理由は、次の段落で述べる。
会議にはテーマがある。1つの会議に複数のテーマがあるときもある。その場合には、テーマごとに作ってほしい。
書き方はマインドマップそのものである。通常のマインドマップとの違いは、発言者ごとに枝分かれすることと左から右に時間が流れていくということだけ。したがって左側に枝が伸びていかない。
上の図をざっと説明しよう。
まずA氏が1番目の発言をした。それに対して、B氏が反対意見を出した。それを見ていたC氏が折衷案を出し、A氏は譲歩しようとしたのだが、B氏は反発した。横でずっと見ていたD氏が代替案を出し、他の3氏が同意したので、D氏の案が結論となった。
本番の会議では、「意見1」などと書かれたところでは、具体的な意見(の要点)が入る。
実際の会議はもっと複雑なので、かなり横長になるが、そこはホワイトボードを一面使ったところで、議論を振り返り、表記上はコネクタ(前頁と後頁のつながりを示す記号)を使って、また書き足していけばいい(注1)。
この記法が優れているのは、以下の二つだ。
- 会議の流れが完全に再現できること
- 会議中に現在の論点が一目で分かること
特に二番目の特長は、よいファシリテーションのためには必須だ(先ほど会議中に使わないと威力が半減すると書いたのはこのためだ)。
ダメな会議のほとんどは、参加者が今の論点が何だかよく分からなくなったがためにそうなる。時系列マインドマップがホワイトボードにあれば、迷子になる人がいなくなる。
ファシリテーターは、この記法を習得するだけでも、かなりよいファシリテーションができるようになるはずだ。
おそらく、最初は横長だった時系列マインドマップも、論点を離れる人が少なくなることで、ホワイトボード数枚に収まるようになるだろう(注2)。
(注1)え? 縦に長い場合はどうするかって。大丈夫、参加者が多くても、発言している人は数人なのが日本の会議です。とは言っても、全員参加の活発な会議もあることだろう。その場合は、参加者ではなく、立場で枝分かれさせて、意見欄に発言者名も書くのがよい。中にはころころ意見が変わる参加者がいることも分かって、面白いかもしれない。
(注2)ファシリテーションに詳しい人は、共有⇒発散⇒収束⇒決定という4つのステップを踏むということをご存知だろう。このうち発散のステップでは、まずブレストしてもらい、そのまとめを通常のマインドマップで描くというやり方のほうが良いかもしれない。発散においては、時系列はあまり重要ではなく、どの意見がどの意見に触発されたかという関係性のほうがずっと重要だからだ。でも、それだったら、マインドマップよりもKJ法のほうがやりやすいと思うのですけどね。
言いたかったことは、マインドマップの良いところを理解し、場面に応じて最適化すればいいということだ。
そして、ベースは何もマインドマップに限定する必要もないのだ。QC7つ道具だって、まだまだ死んでいない。他にも有益なツールはたくさんある。
マインドマップを習得したら、もうこれ以上のものはないなんて思考停止はやめて、いろいろ勉強して、自分なりに工夫しよう。そのほうが人生は楽しいと思うのだが。
なお、時系列マインドマップはパブリックドメインです。僕にお金を払う必要はまったくありません。じゃんじゃん使ってください(ただし、使い方を有償で教えないでください。別のところから文句がくる可能性があります)。