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今さら若者にCDを売るモデルなんだろうか?
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ONETOPIを見ていたら、こんな記事に行き当たった(今回のテーマとは関係ないので、見なくてよろしいが、面白かったのでお勧めはしておく)。
こんな素顔、初めて見た...!桂三枝さんの意外な一面に迫る、KEEP WALKING THEATRE 第6弾が公開
監督は西川美和。才色兼備の人である。15分弱という短さもあったが、ひきこまれてしまい最後まで一気に見た。
音楽が妙に耳に引っかかった。
エンディングロールに「Music morerhythm (KUNITACHI☆RECORD)」とあった。
"モアリズム"で検索したら、Wikipediaに載っていた。
2007年、『蛇イチゴ』『ゆれる』の映画音楽で一躍脚光を浴びていた「カリフラワーズ」を電撃解散させてしまったギター、ヴォーカル担当のナカムラが、その最後のドラムスであったピストン川原と二人で結成。
(筆者注:その後メンバーは増えているが、実はこの記事を書いた2012年7月7日にピストン川原は脱退する)
『蛇イチゴ』『ゆれる』とも西川監督作品である。どうも西川作品には欠かせないらしい。
モアリズムとカリフラワーズの両方とも気になり、Youtubeで探す。
どちらもすばらしい。特に「ギターケースの中で眠ろう」のリズム隊のセンスは特筆すべきものだ。
興味を掻き立てられた僕は、「ヴォーカル担当のナカムラ」のブログを読んでみた。
正確なところは分からないが、どうやら音楽だけでは食えていないようだ。
クニタチ☆レコードのHPにも行ってみた。「モアリズムのジャーマネ兼クニタチ☆レコード代表のアベリズム」の一生懸命売ろうとする熱意が感じられる素敵なサイトだった。
でも、こんなにすばらしい音楽があり、惚れ込んだ人が一生懸命売ろうと頑張っても、それだけでは食べていけない。
iTunesストアにいったら、どちらも売っていたので、モアリズムの1stアルバムと「ギターケースの中で眠ろう」をシングルで買った。
同じような境遇のミュージシャンを直に何人も見ている。傍観者的なポジションからだけど。
腕もいいし、楽曲もいい。モアリズムぐらいすぐれたオリジナル曲を出しているとなると、さすがに少数派になるが、それでもいることはいる。
ただ、売れていないミュージシャンの共通項はある。それは"今風"じゃないということ。
たとえば、モアリズムはR&B(アールアンドビーじゃなくリズムアンドブルーズだ)あるいはSOULに分類されている。
確かに今風じゃない。忌野清志郎の得意ジャンルだ。
モアリズムのメンバーはプロモを見る限り30代前半ぐらいだと思われる。同世代の普通の人たちとは音楽の話は合わないだろう。
凄腕でオリジナルもあって、しかも売れていないバンドは、だいたいこのジャンル、あるいはゴスペルかファンクだ。要するに黒人音楽。
ゴスペルもR&Bもアメリカだったらまだ大きな市場があるが、日本ではもはやないかのような扱いだ。
しかし、本当にそうなのか?
今年の初め、浦安市復興支援ライブということで、小さなライブハウスへ行った。
本当に小さなライブハウスなので、「浦安市復興支援」という言葉に逆に心意気を感じた。
普段は20人ぐらいしか入らない箱に100人近い人が来ていたので、トイレに行くのも憚られる状況だった。
浦安市にゆかりのあるバンドということで、4バンドが出ていた。J-POP系が1、ゴスペル系が2、R&B系が1。
最初のJ-POP系は学生だった、その他は40代、50代がメインの編成だった。
当然お客も50代が中心。
そして、大いに盛り上がっていた。
考えてみれば、今の60歳は、1972年に20歳だった人たちだ。
1972年という年はとんでもない外タレラッシュで、2月にはピンク・フロイド(二度目来日ね)、5月にはテン・イヤーズ・アフターとプロコル・ハルムのジョイント・コンサート。6月にはシカゴの二度目。そして7月には人気絶頂エマーソン、レイク&パーマーとフリー(もうコゾフは抜けてたけど)、それにほぼ重なってジェスロ・タル。8月にはディープ・パープル、そして9月のレッド・ツェッペリンであった。あと11月にはT・レックス。12月にはスリー・ドック・ナイト。こんなところが続々とやって来た。(http://blog.cinema-magazine.com/jade/?url=blog/jade/&blogid=566 より)
こんな時代に20歳だった人たちだ。まだまだ、音楽現役のはず。
J-POPのようなメロウな感じの音楽に慣れている若者たちよりも、よっぽど乱暴な趣味をしていそうだ。
我々50歳前後も負けてはいない。
何しろ中学・高校という一番多感な時期に流行ったのが、パンクロック。一方で、ニューミュージックや松田聖子を聴きながら、もう一方でパンクやニューウェイブを聴いて育った。
その一方で、60年代、70年代への憧れもあり、ロックの歴史を一番勉強した世代のような気がする。
何しろ、高校2年のときのクラスでの音楽マニアの主流派はプログレマニアだった(ちょっと特殊だとは思います)。自分たちが小学生の頃に流行った音楽をああでもない、こうでもないと評論していた姿は、今思うとちょっと不気味だ。
こういう世代なので、正直J-POPはぬるいのです。
J-POPが悪いとは言わない。好きなアーチストも実はたくさんいる。でも、J-POPで燃えるのは難しい、というだけ。
いまカラオケで一番J-POPをうたっているのは、実は50代ではないだろうか。
彼らの感覚からすると、演歌もJ-POPもあまり変わらない。人前で歌うには無難な音楽である。ただ、J-POPはコード進行が難しいので、チャレンジするにはJ-POPという感覚なのだ。うまく歌えたときの満足感もほめられ方も違う。そういう感覚。
40代後半から60代前半が一番燃える音楽は、今でもロックであり、R&Bであり、あとはフォークなのである(もうちょっと上にいくとベンチャーズやグループサウンズとなる)。
若い人の可処分所得があまり多くない今、若者にCDを売るビジネスモデルにしがみつくのはどうなんだろうか?
たとえばモアリズムのようなバンドは、僕らの世代のほうが響くように思う。
けれども、今回のような偶然の出会いがないと知らないまま死んでいくことになる。
もっと40代から60代の金のある層に対して、リコメンドつきのダウンロード販売などを仕掛けていくほうがマーケットとしては大きいのではないだろうか?(Amazonみたいなリコメンドはごめんだけど・・・)
そういう努力を音楽業界がしているとはあまり思えない。若いころに比べると、プロモーションされている感覚は年々減っている。
若い層にCDを売ろうと思ったら、AKB48のような戦略で、あまり音楽文化には貢献しないと思われるような曲を量産するという形しか、今はあり得ないのではなかろうか?
少ない可処分所得を何かに回すとしたら、若い人がそれをアイドルに回す気持ちは理解できるからだ。
僕は、AKB48が音楽文化に貢献していないのが悪いという気はさらさらない。でも、それだけでは困っちゃうのは、音楽業界のほうじゃないのと言いたいだけだ。
昨年の年間CDランキング(特にシングル)について、音楽業界の人たちは胸を張って、我々は日本の音楽文化に貢献するために頑張っていますと言えるのだろうか?
そりゃあ営利企業なわけだから、稼げるコンテンツをまず大事にするのは理解できるけど、一方で自腹を切っても(先行投資と普通の業界では言うが)いい音楽を普及しようという気持ちもないとじり貧になるのは当然だと思う。
音楽文化を本当に作っていくのは老人でなく若者だというのなら、なおさら老人から金をひきだして、若い才能のあるミュージシャンが潤う仕組みを作るべきではなかろうか。
出版もそうだけど、音楽業界も"文化事業"の側面もあるということを忘れないでほしい。
おまけ。
2010年10月にBAD COMPANY(1970年代が最盛期のイギリスのロックバンド)が来日公演を見に行った。
会場は当然60歳前後の人が中心。中には70歳をとっくに過ぎていると思われる人(もしや、内田裕也?)もいた。
チケットは決して安くない。日比谷国際フォーラムの大ホールの一番後ろでもS席扱いで1万円弱だった。グッズとしてはTシャツが飛ぶように売れていたが、これも4000円弱だった。
音楽に金を払う人はたくさんいるのだ。
ところで、僕を直接誘ってくれたのが僕の6歳年下の人だというのにもちょっと驚いたのだが、その人を誘ったのが、まだ30代前半の人だと当日分かり、仰天したのを憶えている。
若い音楽ファンも今の日本のミュージックシーンに飽き足らないのだ。そして、使う場面があればお金を遣うのである。
音楽業界はなぜ、一番金を払ってくれるはずの音楽ファンのために頑張らず、一部の事務所が儲かるようなことに一生懸命なのだろう。理解に苦しむ。