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スキルがあれば・・・は、逃げの姿勢
当ブログ「ビジネスライターという仕事」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/toppakoh/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
気がついてみれば、法人のお客様は、執筆にしろ、研修にしろ、IT企業ばかりになっています。
研修などのテーマは、技術系ではなく、ビジネススキル系です。
なので、こんなタイトルの記事がすごく気になります。
▼IT業界で高く評価される10のソフトスキル
http://japan.cnet.com/sp/businesslife/35020093/
ソフトスキルという言葉は、僕は知らなかったのですが、日本ではヒューマンスキルと呼ばれるものとほぼ同じのようです。アメリカでは、形式化された知識(つまり勉強で得られるもの)を使いこなすスキルをハードスキル、非定形な技能(つまり対人関係など経験での学びが大きくものをいうもの)をソフトスキルというのだそうです(詳しくは、こちらの記事を)。
冒頭の記事で挙げられている10のソフトスキルとは、以下のものです。
#1:交渉力と会議力
#2:高度なコミュニケーション力
#3:プロジェクトにまつわる第六感
#4:人間工学に関する感性
#5:チームプレーヤーとして振る舞える協調性
#6:政治力
#7:教育や指導を行ったり、知識を共有する能力
#8:「灰色の問題」を解決する力
#9:ベンダーマネジメント力
#10:契約折衝力
これには、賛否両論あるようです。
賛成派は、いままでIT業界ではプログラミングや設計力などの「ハードスキル」ばかりが高く評価されてきたが、これからはこういうスキルもいるよね、と言っているようです。
否定派は、IT業界にも必要なのは認めつつも、他の業界でも必要だろう、と言っているようです。
否定派の意見はよくわかりますが、他の業界に比べるとIT業界ではソフトスキルに対する意識が低いので強調されているのだろうと思います。
とはいえ、「これからは」みたいな意見は、ちょっとピンとこないところもあります。
元々アメリカの記事なので、アメリカでは今でも不足している人が多いという話なのかもしれません。
ただ、日本のIT業界、少なくとも主に業務アプリを作っている大手SIerでは、1990年代の半ばからソフトスキルが重要視されており、高い地位についている人はソフトスキルの高い人ばかりでした(記事を読む限りアメリカでも同様のようです)。
これは外資系でも内資系でも一緒でした。
日本では、逆に、プログラミングや設計などのハードスキルが、少しおざなりにされていないか心配されるぐらいです。
ハード/ソフトの二分法の是非はさておき、両方のバランスがIT業界の人材には求められるのは間違いありません(もちろん、"天才"は例外です)。
自分もこの記事をはてぶに登録しているのに、こんなことを言うのも何なんですが、僕がなんとなく問題を感じるのは、この記事がとても多くの人にシェアされていることです。
IT業界の人は、この手の記事が大好きなようです(注)。
もちろん、ハードにしろ、ソフトにしろ、スキルの向上に努めることが悪いということではありません。
それは大いにやってほしいのですが、スキルの向上で止まってしまう人が多いのも事実です。
そのスキルを実際に活用していないという意味ではありません。
そのスキルを活用することで結果を出し、その結果を上司や顧客にアピールする、ということができない人が多い。
マーケティングの視点がないのです。
(注)実際は、人事部など社員の"啓蒙"活動が必要な部署の部員や、経営者や研修講師などこれらを語る必要のある人間だけがシェアしているのかもしれませんが。
高いスキルを身につけていれば、上司や顧客は評価してくれるだろう。
そう思って勉強し、情報処理試験やベンダー認定試験に合格し、見識の高い意見をいろいろな場で開陳する。
ところが実際には評価されていないようだ。
こんなに頑張っているのに・・・。
このような不満を持ち、最後には会社に不信感を募らせる。
はい。以上は、昔の僕です。イタい過去です。
僕には、マーケティングの視点が全くありませんでした。
マーケティングというと眉をひそめるITエンジニアが多いようです。あるいは、自分には関係ないと無視する。
ここでいっているマーケティングには2つの意味があります。
1つは、自分の仕事を自分で取ってくるための戦略・戦術という意味、つまり本来の意味でのマーケティングです。
もう1つは、自分自身を売り込むという意味でのマーケティング。自分で仕事を取ってくることも重要ですが、今回問題にしたいのはこちらです。
スキルがあればいいわけではない。もちろんないのは困るけど。
スキルがあって、なおかつそれを人に認知してもらって初めて評価されるわけです。
認知してもらうには、成果を出す必要があるし、出した成果をアピールする必要もある。
ところが多くのITエンジニアは、スキルがあって、頑張っていれば、誰かが評価してくれる、という幻想を持っています。
いや、実際、たしかに上司は見ているものです。しかし、それに甘えてはいけない。それは逃げの姿勢です。
ましてや、昔の僕のように、見ていない上司が悪いなどと言うのは論外です。それは、子供じみた態度です。
俺が俺がという自己主張をせよと言っているわけではありません。それは、みっともない。悪い評価につながります。
自分を売り込むわけだから、エレガントにやらないといけない。できるだけ自慢に見えないようにしないといけない。顧客に語ってもらうなどの高等テクニックが必要になってきます。
こういうことにだって知識もスキルも必要なのです。そして、それはまさしくマーケティングなのです。
マーケティングを他人事と思っているITエンジニアが多いのは、僕は残念に思っています。
そういえば、「10のソフトスキル」でもマーケティングは忘れられているようです。
マーケティングは、マーケッターにとってはハードスキルですが、ITエンジニアにとってはソフトスキルといえるでしょう。
「#4:人間工学に関する感性」を外して、「マーケティング・センス」をいれたほうが、僕はいいと思うのです。
マーケティングに関する説明がなかったので、ピンとこなかった方がいるかもしれません。
言いたいことをまとめておきます。
- スキルだけあってもダメで、それを認知してもらう努力をしないと評価はされない
- 認知してもらうには単に自己主張してもだめで、エレガントな方法論が必要となる
- その方法論が、マーケティングであり、ITエンジニアはもっとそれを学ぶべきだ
具体性がなくて、説得力がないかな・・・。
実は、今後このような話(注)を@IT自分戦略研究室に書いていくつもりなので、興味を持った方は、そちらを読んでください。
お盆明けぐらいに第1回が掲載されると思います。
(注)テーマは、マーケティングというよりも営業です。ただ、僕は営業とマーケティングは切り離せないという立場なので、マーケティングにも言及していきます。