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人間は損に敏感
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人間は損に敏感です。
例を挙げましょう。
景品として、必ず8,000円もらえる引換券と、85%の人が10,000円もらえる抽選券があったとします。
あなたはどちらを選びますか?
中学校の数学で期待値というのを習ったと思います。
サイコロを振って出た目の数の10倍の金額がもらえるとしたら、1回の挑戦でもらえる金額の期待値はいくらか?
この場合、どの目が出る確率も1/6だから、
10×1/6 + 20×1/6 + 30×1/6 + 40×1/6 + 50×1/6 + 60×1/6 = 35(円)
となります。
数学的には、期待値の高い賭けをするほうが正しいとされています(注)。
では、上の例ではどうでしょうか?
引換券のほうの期待値は、100%の人が8,000円もらえるわけですから、8,000円となります。
抽選券の方は、85%の人が10,000円をもらえるわけですから、8,500円です。
ということは、数学的には抽選券を選ぶのが"正しい"わけですが、多くの人が引換券を選ぶのではないでしょうか?
抽選券を選ぶのは、ギャンブル好きの人でしょう、きっと(ギャンブル好きも多いとは思うのですけど)。
多くの人が引換券を選ぶ理由は、15%の損した人になりたくないからです。
もっといえば、バカな選択をしたと思われたくないからです。
ここが面白いところです。
数学的には明らかに抽選券のほうが正しい選択と言えます。論理的にはそうなのです。
しかし、一般的には抽選券のほうがバカな選択になるのです。論理など関係ない。
確実に8,000円ゲットする人が賢い、というのが一般常識。
では、抽選で10,000円当てた人は? 賭けに勝った人して、羨まれるでしょう。でも、それだけ。そのうちいつか失敗するよ、などと"一般常識"のある人たちには思わるのです。
外した15%などは、バカ呼ばわり。表立って言われなくても、みんな密かにそう思うはず――いや、実際はそんなこともないのだろうけど、でも「そう思うはず」というところで多くの人がためらうわけです。
この根底には、損をするやつはバカ、という概念があるのは言うまでもありません。
だったら、みんななぜ宝くじを買うの?
当然の疑問です。
宝くじの期待値はやたらに低い。半分が"テラ銭"(ドリームジャンボで52%ぐらい)です。300円買って、150円当たるかどうか。つまり、300円の宝くじを1枚買うということは、150円をどぶに捨てているということと同じなのです(論理的には)。
しかし、多くの人が買う。
いや、捨てているという言い方はよくないでしょう。地方自治などに使われているわけだから。でも、地方自治のために、一口150円寄付してくださいと言われて、100口出す人がどれだけいるのか?(宝くじを100枚買うというのは、こういうことなのです)
当たったときの金額が大きいということもあります。一攫千金は魅力があります。
それもありますが、宝くじの場合は損する人が圧倒的に多いというのも、その理由でしょう。
こちらでは損してもバカにされることはありません。
つまり、正確にいえば、損してバカにされる(と思われる)ことを人は選択しない、ということになります。
さて、世の中の多くのことは、このように非論理的な理由で意思決定されています。
いくら論理的に正しいことを言っても人が動かないときは、人間の非論理性を忘れていることが多い。
逆に、この非論理性を逆手にとって間違った意思決定に導く輩も世に絶えません。
僕の嫌いな"成功屋"にも多いパターンです。
ただ、まあ情報商材で損するぐらいはいいでしょう。一度失敗すれば、誰でも気づきます。
問題は、詐欺のような犯罪に使われるのもそうですが、もっと罪が重いのは政治的な意思決定などにも使われていること。
具体例は挙げませんが、そういうことが行われていないか、常にチェックする姿勢があったほうがいいかなと思います。
なお、マーケティングにはいろいろと応用が利きます。人を騙さない範囲で上手に活用してください。
(注)上のサイコロのケースだと、長い目で見れば、1回の賭け金が35円だとトントン、34円以下だと確実にもうかる、36円以上だと確実に損することになります。
このケースで人を騙そうと思ったら、賭け金を37円ぐらいにして、1/2の確率で40円以上もらえるのだから、絶対得だよとやるわけです。結構ひっかかるのではないでしょうか?
ネットにあふれている怪しい論理はそんなのばっかりです。