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「やる気」をださせるための条件

「やる気」をださせるための条件

宮崎 照行

衆議院議員秘書を経て、2009年 Training Officeを設立して独立。組織行動論、心理学、教育工学、経営学等のエビデンスを用いながら、クライアントの戦略に沿った研修プログラムの構築や運営を手がけている。

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 今回も引き続き、モチベーションに関するトピックを。
 一般的に各プレーヤーの仕事における生産性は職務満足の関数といわれていますが、一方で、生産性の高さが職務満足に影響を及ぼすともいわれています。
今回は、この満足感にフォーカスをして「やる気」について考えていきます。その前に、有名なマズローの「欲求段階説」を押さえなければなりません。


「マズローの欲求段階説」
 これは、あまりにも有名な考え方(実務家に大変賛同者が多い)なので、詳しく述べる必要はないかと考えましたが、後の説明の大前提になるので説明します。
 そもそも、マズローは人間には以下に挙げるような基本的欲求が五つある(よくピラミッドの図で表現されている)と提唱しました。

①生理的欲求・・・空腹や渇きを満たすなどの生きていきための最低限の欲求
②安全の欲求・・・物理的・精神的な障害から身を護る欲求
③愛(社会的)の欲求・・・愛情や帰属意識、受容、友情を求める欲求
④尊敬の欲求・・・自尊心・自律心、地位・表彰などで他者から承認される欲求
⑤自己実現の欲求・・・成長、自己の潜在能力を達成したいといった欲求

 ここでマズローは、この5つの欲求をさらに大きく2つに分類しています。
〈低位な欲求〉→①生理的欲求 ②安全の欲求
  低位な欲求は外的によって満たされます。
〈高位な欲求〉→③愛の欲求 ④尊敬の欲求 ⑤自己実現の欲求
  高位な欲求は内的によって満たされます。

 このことを踏まえて、次の項目を考えてみます。


「ハーズバーグの二要因理論(動機づけ要因・衛生要因理論)」
 この考え方を押さえるためには、「満足」と「不満足」が表・裏の関係ではない、ということがミソです。つまり、「満足」の反対は「不満足」ではなく「満足ではない」であり、「不満足」の反対は「満足」ではなく「不満はない」ということです。
 これを踏まえて、二要因理論を考えていきます。ハーズバーグは、仕事において職務態度に影響を及ぼすものを、衛生要因と動機付け要因に分けました。
 衛生要因は、管理者の質、給与、会社の考え方、作業条件、対人関係、職務保障といった外的な要因にきするもの。動機づけ要因は、昇進、個人的成長の機会、表彰、達成といった内的な要因にきするもです。
 衛生要因は、もしそれらが満たされていなければ不満を感じるが、満たされている場合は、不満はないが満足の要因にはなりません。一方、動機づけ要因は、もしそれらが満たされていれば満足を感じ、満たされていなければ満足を感じない、とうことになります。言い換えると、衛生要因は満たされていないと退職の引き金になるけど、かと言って、衛生要因が満たされるように環境を整備しても、モチベーションが上がり生産性が高まるとは言えないということになります。もし、モチベーションを上げてもらい生産性を高めるためには、動機づけ要因を満たす環境を整備する必要があります。


「欲求段階説と二要因理論の関係」
 衛生要因を欲求段階説に照らし合わせると、①②③などが該当します。動機づけ要因は④⑤が該当します。ここで、マズローは欲求段階説でこのように述べています。「低次な欲求がある程度満たされないと高次な欲求は起こらない」。このことを踏まえると、いくら、生産性を高めるために動機づけ要因となる環境を整備しても、衛生要因を満たす環境がなければ動機づけ要因は起こってこないということになります。
 人のモチベーションを上げるために成果報酬を導入するところがありますが、仕事環境がギスギスして、鬼のようなマネージャーの監視のもとでは全くモチベーションが上がらないということがわかります。最悪、早期離職にもつながっていくでしょう。一方、よく、コーチングなどで承認が必要といわれ、マネージャーがいくら承認をしてモチベーションが上がらない原因は衛生要因を満たす環境が整っていない(会社の方針が不鮮明、人間関係等)可能性があります。ですから、モチベーションを上げるためには、「まず、衛生要因を満たすという前提のもとで、動機づけ要因を満たす環境づくりを考えなければなりません」


 部下の動機づけに悩ませている経営者やマネージャーの方は、一度、二つの要因を見つめなおしてみたらいかがでしょうか?