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パーソナルブランドで勝ち組になった男たち③

パーソナルブランドで勝ち組になった男たち③

宇田川ガリバー哲男

R&Bバンドでメジャーデビュー後、独立アーティストとして活動中。アーティスト目線の音楽プランニングブランド「Umami+」で、国内外で音楽を身近にする企画に挑み続けている。

当ブログ「こじつけ力 ―闘う現代アーティスト論―」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/udagulliver/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


 パーソナルブランドを最大限に生かして成功した音楽実業家の話。

今回は第3回目です。

 

 《パーソナルブランドで勝ち組になった男たち》

 ①はじめに(ライセンス契約とエンドースメント契約)

 ②HIPHOPビジネスマン(ジェイ・Z、ドクター・ドレー、P・ディディ)

 ③ライセンスの鬼(マイケル・ジャクソン)

 ④時代は巡るのか(Yoshiki、吉田拓郎、スティーブ・ウォズニアック、本田圭佑)

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 ライセンス契約とは、著作権や商標権、意匠権などの知的財産権を相手に利用させることを許諾し、相手からその対価を受け取ることを約束する契約です。

 暗黙の相場はあるものの、人気の作品であればる程、パワーバランスは著作権を管理している者の方が大きく、収益につなげるビジネスを幅広く展開できます。

 この価値に20代から目をつけ、ビートルズやスライ&ザ・ファミリー・ストーンをはじめ、時代を先読みしてヒット曲の著作権を次々と獲得していった稀代のビジネスマンが、マイケル・ジャクソンです。

 

▼マイケル・ジャクソン

 

 幼少期からショービズの世界の酸いも甘いも知り尽くしてきたマイケルは、モータウンの剛腕社長、ベリー・ゴーディの姿を見て、著作・出版の権利を掴むことこそ真の成功だと学びます。

エンターテインメントの世界では報酬や給料は一過性のものに過ぎず、楽曲とそれに関わる権利こそが財産であることを若くして熟知していたのです。

 著作権を買い回る際も、その先のビジネスを優位に進める、つまりライセンス契約を取り交わす時に価値が出る物でなければ手を出しませんでした。

 それに加え、彼のアーティストとしての価値を巧みに利用することもでき、時には、自らのパフォーマンスの報酬やツアーの興行収入を分配することで、どうしても欲しい楽曲の著作権を獲得することもありました。

 

 ところで、ここで言う著作権とは、著作権の内の「著作財産権」にあたる物です。

ビートルズの著作権は、ソニーの音楽出版社であるATVミュージックパブリッシング(実際はATVが保有する出版社ノーザンソング)に譲渡されていました。そのATVごとマイケルが買収したので、「ビートルズの著作権をマイケルが買った」とされているのです。

 

[著作権]

 作詞作曲者が持つ権利が著作権で、「著作者人格権」「著作者財産権」に分類され、この財産権を利用して利益を上げるのがいわゆる著作権ビジネスです。

 著作者は、プロモートをしてくれる音楽出版社と「著作権譲渡契約」を結んでその権利を譲渡し、その音楽出版社が著作権管理団体(JASRACなど)へ委託し、使用料などの利益を回収してもらうという流れです。

また、この著作権は売買でき、「買い取り」という契約形態も存在します。

 

[著作隣接権]

 著作物の流通に重要な役割を果たしている実演家(ミュージシャン)、レコード製作者(レコード会社など)、放送事業者、有線放送事業者に認められた権利が著作隣接権です。

中でも有名な原盤権はその名の通り、元となる音源をレコーディングした費用を出した者が持てます(生産枚数分の売上の約10%)ので、多くはレコード会社やプロダクションなど、出資した額に応じて利益が分配されます。

 

 

 このように、「著作権を買う」と言っても様々な権利と利益分配の途があります。

マイケルのケースでは、自分の音楽出版社を持つことによって、著作権の他に、著作隣接権による利益も手にしています。

 マイケルの楽曲は自身の音楽出版社Mijacミュージック(ワーナーと共同出資)が管理していましたが、マイケルの死後にソニーATVと合併し、Mijacミュージックの作品もATVが管理することになりました。

 この合併によって、死後の作品のリリース、生前の楽曲の再ブレイク、その他管理楽曲の売上へと相乗効果が生まれ、フォーブスのランキングでは、2年連続で死後もっとも稼いだアーティストにもなりました。

 

フォーブス発表「死んでも稼ぐセレブの収入」1位はマイケル・ジャクソンの160億円

http://www.musicman-net.com/artist/34859.html

 

 もちろん、この影にはキーマンが存在します。

 マイケルは「マイケル・ジャクソンINC」とも称される各界の有力者によるドリームチーム、いわば秘密結社によって、ここまで書いてきたようなビジネスを成功させ、莫大な資産を築いていたのです。

 中でも、キーマンは、弁護士ジョン・ブランカ。

 ブランカは、遺産管理や著作権の売買を数多く手掛けており、マイケルの初めての取引きである前述のビートルズの著作権の獲得、「スリラー」の映像やペプシ・コーラのCMの大ヒットなど成功させてきました。

マイケルの死後は遺産管理を担当することになり、映画「THIS IS IT」、アルバム「Xscape」、シルク・ド・ソレイユのツアーなどを次々と仕掛け、マイケルの晩年に残した個人の負債を一瞬にして解消しました。

 黒い噂も絶えない人物ですが、その貢献度を考えれば、マイケルにとっては最高のパートナーだったことは間違いありません。

 

 

▼まとめ

 

 著作権、著作隣接権を使いこなすことが、ライセンスビジネスという話でした。

 あまり知られていませんが、「シンクロ権」といって映像のBGMとして使う際に生じる権利があります。

これは著作隣接権の内の、原盤権を持つ者が併せ持つ権利で、映画やCMなど映像に使う場合は、別途、使用許諾申請をしなければいけません。(日本の楽曲はJASRACが管理しています。)

外国曲を使うとなると、海外の音楽出版社またはその委託管理をする著作権管理団体へ許可を取らねばならず、この契約料については、なんと言い値なのです。

もしかして、海外アーティストの桁違いの収入の正体はこれかも?と思ってしまいますね。

 海外では放送局が傘下に音楽出版社を持つことが禁止されていることも、ビジネス面の競争を生む要因になっているように感じます。

 日本の場合は、フジテレビ→株式会社フジパシフィック音楽出版、日本テレビ→日本テレビ音楽株式会社など、NHK以外の民放局は傘下に音楽出版社を抱えています。

このことは、楽曲をテレビ番組のタイアップにする代わりに、放送局傘下の音楽出版社と契約させることで出版権の譲渡を受ける図式を可能にしており、アーティストの所属事務所と音楽出版社との力関係で政治的にヒット曲が作られていると、ミュージシャンや作家から度々問題提起をされています。

 いずれにしても、ライセンスビジネスは、著作権の管理・分配の利権争いに利用するだけではなく、価値のある物に新たな価値を生み出す、クリエイティブな物であって欲しいと感じています。

 次回はこの時代に日本でもある動きがあったこと、そしてIT業界のカリスマが音楽にかけた情熱、実業家としての未来を見据えるアスリートなどの話を書いてみます

 

 

[参考]

著作隣接権の使用料・補償金の仕組

https://www.mpaj.or.jp/whats/management05.html

 

作詞家・作曲家と音楽出版社|JASRAC

http://www.jasrac.or.jp/park/work/work_4.html

 

曖昧になりがちな楽曲の買取契約についてこの際しっかり勉強しておきたい|こおろぎさんち

http://kohrogi.com/?p=4597

 

知的財産権(特許・商標・著作権)の基礎講座|弁理士 松下正

http://www.furutani.co.jp/kiso/tyosaku1.html


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