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斎藤佑樹選手の「持っている」もの

斎藤佑樹選手の「持っている」もの

郷 好文

株式会社ことば代表“ことばのデザイナー”。Business Media 誠「うふふマーケティング」を連載中。生活者と商品の真ん中にある“やんごとなきこと”をえぐって、ことばのギフトを贈ります。

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いったい彼は何を「持っている」んだろう?

それが知りたくて田舎郊外の球場に行ってみた。話題の鎌ヶ谷球場、日本ハムファイターズの二軍の本拠地。土曜日(1月22日)、不便な地へ電車とバスを乗り継ぐと、ファイターズタウンの熱狂ぶりはバスの中から始まっていた。

yu2.jpg           しっかり、京成バスさん!

車内広告に「がんばれ!ヤングファイターズ 18番斎藤祐樹ピッチャー」とある。あれ?...「佑ちゃん」だよね。漢字間違ってる(笑)。まぁご愛嬌。ところがその11時台の球場行きバス、ファンと思しき人は4〜5名しかいない。「そんなバカな...」と思っていると...ぼくは間違っていた。

なんと練習はもうお仕舞いの時間(笑)。現地に行ったのにこの迷報道を許してくれ。ぼくもまた佑ちゃんに憑かれたのか。だがまだチャンスはある。そこには異様なまでの群衆がいた。球場の三塁側道路は「ゲートと守衛で塞き止められ」、練習を終えた佑くんが勇翔寮へ引き上げるのだ。ざっと500人いやそれ以上のファンが、カメラを手に背伸びして待っていた。

PICT0053S.jpg「佑閑マダム」多しとの報道だが、老若男女をあまねくという感じ。家族連れも多いし、ご老体もたくさん。若い女性の痛いほどの眼差しは痛かった。ぼくはあんな目で見られたことは一度もない。

「来たぁぁ!」「佑く〜ん!」「こっち向いて!」

PICT0074S.jpgやっと現れた斎藤投手、派手めなスタイルがやっぱりスター。でも「持っている」かどうか感じる間もなく寮の方に引き上げてしまった。

手ぐらい振ってよ思ったが、スター気取りをしないところがまた素で良い。それが二軍選手として当たり前の振る舞いなのだ。それがまたファンを痺れさせるのだが。

"独占インタビュー"をゲットするため、TV各局が美人アナを送り込んで「一番乗りはアタシ!」と意気込んでいるそうだ(女性セブン)。テリー伊藤さんも熊田曜子さんもコロリだし、菊川怜さんは「佑ちゃんならあり」というし(日刊スポーツ)、AKB48倉持明日香さんのコメント「すごくいいにおい、ダウニーの香りがしました」(シネマトゥデイ)にはぶっ倒れた。

だが玄人筋、つまり野球人もみんな絶賛。ダルビッシュ有投手(奇しくもユウ、two youとかシャレる?)は「人間としての質がちがう」と言えば、野村克也名誉監督も活躍に太鼓判を押し、江川卓元投手は「200勝できる」とまで。そして一般の人びとを田舎球場に休日1万人、平日にも数千人惹き付ける。2月1日からの沖縄キャンプも大変なことになりそうだ。

何がいいの?いったい彼は何を持っているの?

【持っている...のはわかるけれど】
斎藤投手を遠巻きにこう考えた。

彼は「ハンカチ」という清浄感と共に甲子園鮮烈にデビューし、ひたむきな投球の姿に日本中が感動した。決勝戦で延長15回で決着が付かず、翌日の再戦で投げきっても、派手なガッツポーズをしない姿に、美しいスポーツマンシップを感じた。

卒業後プロへ行かず、大学野球に場を移したのも清浄感があった。"カネとショウ"という「喧噪の野球世界」へまっすぐ行くより、六大学という「純粋野球の世界」を選んだのだ。「大学の4年は長い」「輝きを失うのでは」と思ったが、リーグでも日米大学野球でも好成績で、失うどころか輝きを倍増。しかも「善い子でいるプレッシャー」に押し潰されず、それを楽しむ雰囲気さえある。

ひと言で「持っている」。それはわかる。だけど人びとに与える効果、インパクト、清浄感、その真ん中にあることは何なのだろうか?

ぼくは二軍の選手達もファンもほとんどいなくなった鎌ヶ谷球場のスタンドで、居残り練習の選手を見ていた。

【神聖なグラウンド】
外野にはひたすらダッシュを繰り返す選手の姿があった。二人ひと組で何度も何度も往復。ヘトヘトなはずだが、延々と身体を虐める。

一方、内野の一塁側では、ノックを打つコーチとゴロをさばく選手たちがいる。土の上のグラウンドで上手に捕球して、コーチの脇のネットめがけてビシッとボールを返す。リズムがある。二軍選手とは言え、ひと握りの選ばれたアスリート達はやっぱり凄い。

その後のことだ。練習は終わり、選手もコーチも去った。ノックをしたグラウンドをならすために整備車両が出て来た。後部に"鉄の刷毛"のような地ならし装備がある。最初は大きく丸く走る。ぐるぐると、ぐるぐると周り、だんだん円を小さくする。そうしてグラウンドをならしている。

PICT0114S.jpgその左には投手が立つマウンドがある。そちらも実に綺麗に清められている。"凛として"投手を待っている。

なるほど!わかったような気がした。

あそこに立てる者は神聖なのだ。あそこに相応しい気魄、物腰、態度、そして実力が無ければ立てない。すぐに追い出される。

それらを兼ね備えた"神聖な選手"が斎藤佑樹なのである。ファンはそれを直感的に知っている。だから熱狂するのだ。

PICT0105A.jpgまあ彼の「持ち物」を見抜くのはある意味容易だ。だが二軍の選手の練習を観ればわかるが、みんな「持っている」のだ。それをどう見抜いて、一軍選手に育てるのか。

そこでぼくは、パット・ギリック氏というメジャーリーグの目利きに関する雑文を「ビジスパ」のメールマガジン「マーケティングレシピ」にも書いた(1月25日配信の第4号)。そちらもよろしく。