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生産性とイノベーション

生産性とイノベーション

島田 祐一朗

ディスカバリーズ株式会社 代表取締役社長。マイクロソフトで日本発の法人向けマーケティングプログラムを立ち上げ、現在は南青山でベンチャー企業を経営。慶應義塾湘南藤沢 (SFC)中・高等部同窓会 会長。

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生産性とイノベーション
ダブル・ループマーケティングのすゝめ (3)


セレンディピティという言葉はご存知の方も多いでしょうが、予期せず偶然にも価値のある発見をする能力を指します。価値は人により判断が様々ですが、組織のなかでも同様で、部門やスペシャリストによってはただの情報も価値のある発見かもしれません。この偶然を期待していては気が遠くなりますが、偶然の発見をする機会を提供することと、その発見に気付く能力を身につける努力はそんなに難しくはありません。


そのひとつが社内SNSです。残念なことに社内SNSと聞くと、業務とは無関係な遊びだとか雑談(チャット)だと結論を急ぐ方も多いのですが、部門や役職を超えてリアルタイムにロケーションに関わらず意見や活動の情報はもちろん、結果だけでなくその過程を共有できることは、業務報告書やWho's Whoでは伝わらない多くの価値を提供してくれます。メールやチャットとは全く異なる新しいチャネルで、電子版タバコ部屋のようなものです。私はこれをノイズと呼んでいます。ノイズとは一見すると無駄だったり邪魔なものですが、ごく稀に気付きになり、取り掛かってみると思わぬ発見があり、結果的に新しいサービスやビジネスの開発につながることがあります。この瞬間にイノベーションが生まれるのです。多くの企業がイノベーションを追い求める多額の研究開発費を投じているのに、セレンディピティの可能性を持つ社員同士のコミュニケーションを遊びや非業務だと評価するのは不思議でなりません。


もちろん社内コミュニケーションを加速する方法は社内SNSだけではありません。ナレッジワーカーにはイントラや最近では社内ポータルによるインタラクティブや情報の受発信ができますし、伝統的な紙による社内報はPC以外で業務している店舗や工場で働く従業員にも社員同士の情報交換の場として欠かせないチャネルでもあります。尤も社内報は本当のターゲットは従業員の家族であるケースも多いですが。


このように見ても社内にある情報とは様々で何が誰にとって価値をもたらすかはわかりません。またその時点でアイデアに重みがなくても、時間をかけて寝かせて、様々な人がかき混ぜることで価値に昇華する情報もあります。ワインの製造工程を例にされた外山滋比古氏の言葉を借りれば「情報の醸成」です。こうしてみても社内にある情報のやアイデアの集積は、全ての社員が手に届く場所で、寝かせたり探したりできる「場」が必要で、これをデジタルにより効率化したのがグループウェアやコラボレーションツールといった情報共有基盤です。


情報共有基盤が導入される多くは業務の効率化が目的で、電子化により効率的に業務が行え、そのアウトプットを他のメンバーと共有することで組織として生産性を高める効果が期待できます。生産性を高めることとイノベーションを生むことは直結しています。非効率な業務は生産性が低いばかりか業務に携わる従業員のモチベーションを低下させ、会社の売り上げや顧客サービスを高めるために何をすべきか、という発展的な思考を停止させます。逆に効率的な業務は5日間の仕事を4日間で完了できれば、余った1日はセレンディピティにより発見したアイデアをサービス化したり、ビジネスモデルを検討する時間み充当でき、結果としてイノベーションを促すことができます。この好例は80:20の社内ルールを作り様々なサービスを生んできたグーグルです。


もちろん効率化により削減した時間でより多くの業務を行うことで稼働率を上げることで売り上げやコスト削減により業績を上げる方法もありますが、数の原理が作用しますから大企業向けともいえます。むしろ世界に通用する技術とアイデアの可能性をもつ日本の多くの中小企業でセレンディピティによるイノベーションが生まれると企業の成長はもちろん、日本経済が活力を得てGDPの底上げになっていく、と考えるのは大袈裟でしょうか?(つづく)