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町田康まで読める豪華無料アプリ「週刊GEORGIA」
アラキングのビジネス書
町田康まで読める豪華無料アプリ「週刊GEORGIA」
ビジネスコンサルタント&執筆業。荒木News Consulting代表。業界をまたいで中小企業経営者のサポートを行う「究極のフリーランス」。2012年より、ビジネス書の執筆ならびに雑誌の連載をスタート。
当ブログ「アラキングのビジネス書」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/arakinc/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
誰でもそうだけど、人それぞれに〝My神様〟がいるのではないだろうか。歌手だったりスポーツ選手だったり、「死ぬまでに1度は会ってみたい」と猛烈に憧れる人物がいるものだ。ボクにとっての〝神〟は3人おり、それは世界的なサッカー選手の「マラドーナ」、芥川賞作家の「開高健」と、同じく芥川賞作家である「町田康」。
今から30年以上前、ゼロックス・スーパーサッカーで来日したマラドーナを国立競技場まで観にいった。モジャモジャヘアーの小太りで、身長は160センチちょっとしかなく、まだ20歳くらいだったと記憶する。
恐ろしいほどキレキレのドリブルをするマラドーナを前に、日本代表選手はまったくなす術がなかった。フィールドでは一際小さなマラドーナだが、その悪魔のようなテクニック、彼のまとうオーラに、小学生のボクはただただ圧倒された。
その後マラドーナは世界的なスター選手に上り詰め、麻薬疑惑やらメディアとのもめ事やら、常に世間を賑わせ続けたが、そんなやんちゃぶりを含めて「やっぱマラドーナかっこいい、神だわ」と、崇拝し続けてきた。
開高健氏は、高校生のときに読んだ彼の作品「輝ける闇」で、すっかり身震いした。紙1枚ペン1本で、これほど人のココロを揺さぶることができるものかと、作家という職業に畏敬の念を抱いた。いろんな作家の小説を読み漁ったが、開高健が描く世界観は独特で、壮大で、コトバの選び方・使い方は秀逸で、ボクは20代前半はずっと小説家になりたいと思っていた。今でも思っているが...。
残念ながら彼は亡くなってしまったため、神に会うことは叶わなかった。
小学生からマラドーナを敬愛し、高校生になって開高健が加わり、長らくこの2人がボクの神だったが、20代半ばで新たな神が誕生した。それが町田康氏。天才・奇才・鬼才...、どんな表現をもってしても彼の才能を表現できないほどユニークな作家であり、今後、彼を超える作家はまず現れないと思っているので、ボクにとっては間違いなく〝生涯最高の神〟なのだ。
完全に〝町田ワールド中毒〟のボクは、本屋で彼の本を発見するととりあえず買ってしまうクセが抜けず、毎回「持っているような気がするが...」と首を傾げながら家に帰り、「あ、やはり持ってたわ...」となる。それも1度や2度ではなく、毎度。
その結果「へらへらぼっちゃん」は人生で3度買い、「真実真正日記」は5冊も持っている。が、特に惜しくはない。こんなときは友人に「ボクの神の本を読んで」とプレゼントし、人知れず町田ワールドを布教することにしている。
不幸なことに、まだ町田ワールド未体験という人には、小説なら「パンク侍、斬られて候」、エッセイなら「テースト・オブ・苦虫」がオススメだ。たぶん、ぶっ飛ぶ。
無料アプリってホントはどうなん?
昨年の暮れ、とある編集者から「荒木さんの作品を無料アプリで配信したいというオファーがきているのですが...」という相談が入った。無料、それもアプリ=Webと聞いて、ボクは即座に「嫌だ」と、ココロのなかで反応した。
「悪貨は良貨を駆逐する」ではないが、「悪文は良文を駆逐する」。ネット上には悪文・駄文が溢れており、これが読み手としての日本人の感性を低下させ、ひいては本離れという現象を引き起こしていると、昔から個人的に思っている。
一応、ボクは本を出版し、幾つかの雑誌にも連載を書いている執筆のプロ。お金を払って読んでもらう紙媒体こそ最良と、考えている。なので、必要なとき以外はブログを書かないことにしており、もし書くにしても、それ相応のものを書こうと思っている。
編集者に「無料アプリってどんな内容?」と尋ねても、トップシークレットなので詳しくは説明できないと言う。どんな媒体かも分からないところに、自分の作品を発表するというのは、ちょっと考えもの。
「でもね、無料といえど、弊社の雑誌に連載を持っている有名作家さん、有名作品ばかりを厳選したアプリなので、そこに選ばれるということは名誉です。荒木さんの宣伝にもなると思うんですよ...」
この編集者、かなりの若手なのだが、なかなかのやり手。編集者として優秀なことに加え、コミュニケーションが巧みで、ビジネスマンとしても相当な逸材なのだ。ちなみに彼は、IT系経済誌「アスキークラウド」(KADOKAWA)の編集者。昨夏の創刊以来、ボクはそこで連載「それでもボクは会社にイタいのです」を書いており、その担当編集者でもある。
KADOKAWAは巨大メディアグループ。いろんな雑誌を抱えており、そこで厳選した作家ばかりとなれば、確かに無料といえどクオリティーはかなり高いに違いない。そんなワケでアプリ配信をOKした。
ヤバイ! 神がいるではないか!
無料アプリは今年の1月末から配信がスタートした。その数日前になって、ようやく詳しい内容を知ることができた。その名は「週刊GEORGIA」。日本コカ・コーラの缶コーヒーGEORGIAとKADOKAWAのコラボものだった。
「さて、どんな作家が名を連ねているのかな」
と、アプリの中身を確認して驚いた。驚いた。驚いた。ぶったまげた。深夜2時、自宅ベッドのなかで、アイフォーンを持って「マジかぁ!」と、叫んだ。突然の叫びに、ボクの脇でイビキをかいて熟睡していたパグ3匹が「うぉぉ~ン!」と、つられて鳴いた。
神がいたのだ。まさかの神...ついに降臨す。町田康。
雑誌「本の旅人」(KADOKAWA)で連載中のコラム「町田康の人生パンク道場」。
神にはそうそう近づけないものだ。いや、ホントは、神ゆえに近づいてはいけないもの、と思ってずっと生きてきた。マラドーナはアルゼンチンだし、開高健氏は亡くなっており、ただひとり、町田康氏のみが生きている。日本に住んでいる。それは知っているが、神は神だ。神などにボクが接点などあるはずない...。
が、意外なところから、かな~り遠くて無関係でこじつけ気味だし、町田康氏からすれば「あわわ、ボヨヨ~ん」と、クールで洗練された独り言を呟きそうだが、ボクは神との距離が縮まった気がしたのだ。まさしくワープ。同じ場に、ボクの名前が並んでいる。名誉というか、感激。
「一生のお願い! どうにか町田先生に会わせて! 彼はボクの生涯最高の神なのよ。神様なのよ」
翌朝、ボクは担当編集者にお願いした。普段、ビジネスにおいて、ボクは人から頼まれることはあっても、人には頼み事をしない主義で、むろん、担当編集者に何かを頼んだこともない。が、神と遭遇できる可能性が万が一にも見えた、となれば話は別。
それからボクは熱く町田論を展開し、町田ワールドの素晴らしさを説き、軽く引き気味になった編集者は「やるだけのことはやってみますが、あまり期待しないでくださいよ」と言った。
そんなワケで、無料なのに豪華なアプリ「週刊GEORGIA」。この他「最強伝説 黒沢」「新世紀エヴァンゲリオン」といった有名マンガも揃っており、DL必至。ちなみに、神である町田康氏は第1号より連載開始。神でも何でもないボクは、第5号より。
ボクは今、空を見上げている。何の神に向かってだか分からないが、神に会わせてくれと、日々神頼みをしている。
(荒木News Consulting 荒木亨二)
*イオンの新規ビジネス花屋『ルポゼ・フルール』、ブランドプロデュース中
【著書】
『就職は3秒で決まる。』(主婦の友社)
『名刺は99枚しか残さない』(メディアファクトリー)
【雑誌連載】
『Begin』(世界文化社) 「仕事着八苦YOU!」
『アスキークラウド』(KADOKAWA) 「それでもボクは会社にイタいのです」
『Safari』(日之出出版) 「最後のバブルで踊ろうよ!」