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【ワタクシの仕事術2】 企画書はペライチで、プレゼンは思いつきで 

【ワタクシの仕事術2】 企画書はペライチで、プレゼンは思いつきで 

荒木 亨二

ビジネスコンサルタント&執筆業。荒木News Consulting代表。業界をまたいで中小企業経営者のサポートを行う「究極のフリーランス」。2012年より、ビジネス書の執筆ならびに雑誌の連載をスタート。

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企画書というと膨大な時間を注ぎ込んで分厚いものを作るビジネスマンがけっこう多い。プレゼンは入念に準備をし、しっかり練習をして臨むスタイルも一般的なのだろうか? ビジネスマナーをきちんと学んだ経験のない私は常に我流、思いつき、その場しのぎでやってきた・・・。

企画書の目的は"企画を通すコト"

私が始めて作成した企画書は、きっと普通のビジネスマンに見せたら笑われてしまう。だって、ぺらっぺらっのまさしくペライチ、いや、正確には表紙があるので、わずか2枚ばかりの企画書だった。

私はビジネス書という類のものを読んだ経験がない。企画書でもプレゼンでもマーケティングでも、書店に行けばいろいろ売っているのだが、昔からどうも読む気になれない性質。サラリーマン経験も短いため企画書やプレゼンのスキルを学ぶ機会もなかった。

となると自分で考え、とりあえずやってみるという選択肢しか残されていなかった・・・。

まず自宅に幾つかの企画書があった。奥さんが会社から持って帰ってきたものだが、誰が作ったものかは分からない。パラパラと目を通してみるのだが、何を言いたいのかさっぱり理解できない。

ベタベタとデータやらグラフやらが張り付けられ、彩りも意識されて見た目は非常にキレイ、持った感じも重量感があり何だか立派な雰囲気が漂うのだが、どうも好かない。

これが世に言う企画書か・・・。私は逆バリでいくことにした。つまり徹底的に薄く、軽く、シンプルな企画書を目指すことにした。別に奇をてらって辿り着いた考えでなく、そこには私なりのきちんとした理由がある。

ひとつは【膨大な資料は誰も読まない】という仮説。携帯やPCの分厚いトリセツを誰も読まないことと一緒の原理である。特に企画書の目的はそもそも<企画を通すこと>のただ一点、企画自体が面白ければ余計な装飾や裏付けデータは蛇足となるだけだ。

直感で優れているか否かはある程度判断できるし、ペライチもしくは3枚もあれば十分にコンセプトは説明できるはずである。

もうひとつは【忙しい人の時間をあまり邪魔してはいけない】という気持ち。私の場合、プレゼン相手はもっぱら経営者である。彼らは日常的に山のような資料・文章に目を通さねばならない人々だ。メール、DM、稟議書、手紙、FAX・・・もちろん企画書の類もそう。そういった事情を考えると、読むだけで時間がかかるような企画書は失礼にあたると考えた。

その結果、ペライチあるいはそれにかなり近い企画書スタイルが出来上がった。しかしこれではほぼコンセプトのみ。そこでプレゼンとなるのだが・・・。

プレゼンは喋り倒す

企画書は何となくそれらしきモノが身近にあったが、さすがにプレゼンは見たことがなかった。強いて言えばドラマやCMなどで仕事がデキそうな格好いいビジネスマンが、ホワイトボードや投影させた画面を背に力説している光景くらいしか思い浮かばなかった。

あんな感じでいけばいいのだろうか? しかし私はあんな二枚目ではないから、きっとドラマのように演じても格好悪いだけ、ちっとも絵にならない。それに企画書1枚ではそんな必要もない。スライドさせるモノがない・・・。ここは完全に我流で行くしかなかった。

そうだ! 喋り倒そう!

私の唯一の特技はオシャベリだった。たぶん、これくらいしか胸を張れるものはないし、これは誰にも負けない。ペライチにいかに肉付けをして『この企画が実現したら面白そうだな』と、経営者に思わせれば良いのだ。

ただし、単に喋り倒せばいいというものではないことくらいは、知っている。そこでポイントになるのが<話の流れを、戦略として>練り上げるコト。起承転結をベースにしながら、企画内容がスムースに頭に沁み込んでいくようなストーリーを描くこと。

プレゼン開始後10分、サプライズを狙ったテーマで関心を引く。20分後、企画の"ダメな部分"をあえて説明し、沈思黙考してもらう。25分後、がっかりさせるような話を織り込み、がっかりしてもらう。30分後、意味なく笑わせる・・・。例えばこんな感じ。

企画を通すためのプレゼン、しかしそこで企画の優秀さばかりを説明しては、少々前のめりになってしまう嫌いがある。つまり相手にこいつ重いなあ! ウザイ! と思われてしまう。企画が通った後のことを考えると、こいつに仕事を任せてもいいなと思ってもらえるような人間性を伝えることも大切になる。

経営者の貴重な時間を割いてもらうのだから、一瞬にしてビジネスのイメージが沸くような話をしないといけないというのが大前提。同時に、プレゼンを楽しんでもらうという発想も必要。1時間の間にいろんなスパイスをばらまき、ストリーテラーに徹するのだ。

そんなわけで、何よりも喋っていて"自分が楽しい"と思えるプレゼンを心がけている。楽しい企画は、喋っていても楽しいはず。

たまに不思議なコトが起こる

まったく準備をしていかないプレゼン。これは"練習をしていかない"という意味で、上記のとおり話すテーマや訴求すべきポイントは当然ながら幾つか用意していく。しかし、始まってしまえばほとんど流れで喋り倒してしまう。何せ目の前にはペライチの企画書しかないわけだから。

喋るべきストーリーを頭のなかに思い描き、話の順番にも気を使いながら進める。ただし最終目標の企画を通すことに向かって頭をフル回転にして喋っていると、時おり、脈絡なく、まったく関係のない話が思い浮かんでしまうことが多々ある。

それは朝日新聞の一カ月前のアンケート結果だったり、知り合いの経営者の面白いビジネスだったり、この企画に関われそうな人物だったり・・・、さんざん考え抜き、練りに練り、ブラッシュアップし凝縮し、完成させたわずか1枚の企画書。それに合わせたプレゼン。それなのに、喋っているうちに企画を通すための新たなアイディアが、なぜかプレゼン中にむくむくと湧きあがってしまうのだ。

これも喋るしかない!

スポーツ選手が極限まで集中した時、無の境地におちいり、自分の能力以上のチカラを発揮する。これを『ゾーン』という。プレゼンにおいて、頭がフル稼働するなかで勝手にアイディアが沸いてくることを、私は『神が降りる』と勝手に名付けている。

神が降りてきたときのアイディアはたいていシンプルで面白く、かつすぐ実践できそうな平易なプランであることが多い。用意する企画書はわずか1枚だが、それを作成するには膨大な時間と、無数の知識を注いでいる。つまり見てくれは貧弱だが、そのなかにすべてを凝縮している。

それでも浮かんでこなかったようなアイディアがプレゼン中にポンと出てくるのは、もっぱら「プレゼン相手との相乗効果」によるものが大きい。相手が次第に乗り気になり、いろいろと自分の考えを口にするようになると、それを受けてこちらが閃いたり戦略を修正したりする。つまり神が降りてきたとき、それは相手のヤル気のバロメーターが上がっているとの判断にもつながる。

このようにして思い描いていた理想のプレゼンは徐々に脱線していくことになり、終わってみれば、かなり企画が変わってしまっていることもしばしばある。しかしそれでいいと思っている。常に進化系でいい。企画書も、プレゼンも。

 

「格好いい企画書の作成」「スマートなプレゼン」・・・。どちらも苦手にしているビジネスマンが多いようだ。しかしこれらにあまり意識が向いてしまうと、最終目標はかすんでしまう。格好悪くてもいい。多少むちゃくちゃでもいい。そこに明確なココロや意志があれば、案外伝わるものである。

企画書はペライチ、プレゼンは思いつき・・・こんなやり方でも意外とイケるのは、経営者もありきたりの売り込みに飽きている証拠だと、勝手に思い込んでいる・・・。

 (荒木News Consulting 荒木亨二)

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