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【ワタクシの仕事術3】 人生に必要なのは・・・バカであること
アラキングのビジネス書
【ワタクシの仕事術3】 人生に必要なのは・・・バカであること
ビジネスコンサルタント&執筆業。荒木News Consulting代表。業界をまたいで中小企業経営者のサポートを行う「究極のフリーランス」。2012年より、ビジネス書の執筆ならびに雑誌の連載をスタート。
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私には奥さんがひとりいる。ふたりはいない。この奥さんが『相当なバカ』なのだ。いや、本当はバカではない。仕事が非常にデキると評判だし、順調にキャリアを重ねて部下からも慕われているし、ハブズな人でもある。しかし、どこかバカなのだ・・・。それはきっと私がバカだからなのだが、まだ私はバカになりきれていないなと反省することしきり・・・。
"行動力あふれるバカを見習え"は啓示か?
先日、そんな奥さんから1通のメールが届いた。添付されていたのは行動力あふれるバカを見習え!? 新しい日本をつくる「バカサミット」なるネット上の記事だった。普段奥さんが私に送ってくるメールといえば今から帰りますとか、今日は残業ですとか、いたって日常的なものばかり。ネット上の記事を送ってくることなど、まずない。何らかの意図が隠されているに違いない・・・。
記事を読むと『バカな会社の、バカな事業』のレポートだった。面白過ぎる記事で思わずニンマリしてしまった。
父親が木で作った"いい加減なロボット"を子どもにプレゼントし、「僕の欲しかったのはこんなんじゃないよお!」とがっかりさせるお粗末な玩具『コレジャナイロボ』。あまりにもシュールなビジネスに笑いつつ、その天才的なセンスに感動してしまった。
子どもが大好きなうんこネタが満載の数式問題アプリ『うんこ演算』は、お題がうんこであるためアップルから許諾が下りず、ようやくAndroid Marketで発売に至ったというエピソードが何ともユーモラスで素晴らしい。~日刊サイゾーの記事より抜粋~
ほほお~と唸り、ニヤニヤしてしまった。なぜこんなおバカな記事を私に読ませるのだろうか? たぶん私を笑わせるためではない。そこでふと、私はこれまでの奥さんからの"数々の啓示"を想い出した・・・。
アラスカを放浪し、エベレストを登り・・・
私が20歳の頃の誕生日だったろうか、当時の彼女(現在の奥さん)から誕生日プレゼントをもらった。普通は時計だったり洋服だったりオシャレなモノというのが相場である。ところが彼女がくれたのはとってもヘンなプレゼントだった。もちろん、コレジャナイロボではない。なぜか2冊の豪華な写真集だった。
1冊は今は亡き写真家・星野道夫氏の『Alaska』。雄大なアラスカの景色や野生動物が生き生きと写された写真集である。もう1冊は内田良平氏の『ヒマラヤ』、こちらは神々しいエベレストの山並みが延々と続く写真集。20歳の若者にはどうもシブ過ぎる贈り物である。何か意味あるのか?
私はバカだった。毎日その写真集を眺めるうちに我慢できなくなり、それから数年の後、思わずアラスカへ向かってしまい、彼女と2か月ほどカナダ・アラスカを放浪した。さらにその翌年には、就職活動を無事に終えると、今度は私はひとりでヒマラヤへ向かった。2か月間、ひたすらエベレストの山の中を歩いていた。そこは写真集と同じように、いやそれ以上の、神々しい世界だった。
20歳のときにもらった"意味深なプレゼント"、気付けば私はその通りに動いていた。単純なのだ、バカなのだ。
おバカ度合いが足りないのでは?
私は最初に入社した大企業をわずか半年で辞めた。サラリーマンが性に合わないと気付いてしまったからだ。高収入と安定した地位を捨てるとき、親から親戚から友人から"常識的な人々"の大反対にあった。そのときひとりだけ「辞めればいいんじゃない?」と賛成したのは、彼女だけだった。
なぜ賛成したのか? 彼女にだいぶ後になってからたずねると「アナタが普通に生きてもつまんないでしょう・・・。」という答えが返ってきた。彼女は美人であり大学時代から結構モテたが、なぜか私と付き合い、そして結婚までしてしまった。周囲の友人はバカな私と結婚したバカな彼女を、口々に信じらんな~いと言っていた。
私がサラリーマンになってしまったとき、実は彼女はショックだったらしい。しかも行き先が大企業とあっては、ますますつまんない、期待はずれじゃん! と、思ったらしい。学生時代のバカを、大人になってもやり通して欲しいと密かに願っていたようだ。相当なバカである。
会社を辞めた後、私は彼女のマンションに転がり込んでしばらく食わせてもらっていたが、何も文句は言われなかった。数年後、ビジネスコンサルタントとして独立しいろんなビジネスを手掛け始めると、彼女が何を考えているのかよく分かってきた。
以前、私は突然ネイルサロンを開くと言ったことがある。それまでネイル業界などまったく無縁であり、興味も知識もなかった。普通の奥さんなら、そんなバカなことやめておきなさいよ! と言うか、はあ?? と呆れられるか、思いっきり無視されるかがオチだろう。しかしうちの場合は「・・・良いんじゃない?」と、ほぼ無反応だった。まるで「自転車買おうと思うんだけど」と言った場合の反応と、ほぼ一緒。
農業を始めると言っても「良いんじゃないの?」、カルチャースクールのプロデュースを始めることになったと言っても「良いんじゃないの?」と、まるで驚かない。奥さんが驚かないことに、毎度驚く。そのうちいつか驚かしてやろうと、思う日々。まだ私はバカになりきれていなんじゃないかと、変な自戒の念が浮かぶ。
アナタ、会社作るんだ?
私は最近、新しく会社を作ろうと考えており、現在事業計画を練っている最中である。 そんなコトをある日、深夜、ツイッターで呟いた。翌朝、奥さんが「今度は会社作るんだあ?」と、おはようという自然な言葉を発するような雰囲気で、サラっとたずねてきた。
起業は危険な賭けである。あえてする必要はない。不安定な道を選ぼうとする私を、奥さんはいつも黙って見ている。あるいはむしろ不安定な方へ、バカな方へと、わざと仕向けているような気さえする。私が普通に、あるいは安定的に生きようとすると、その足を引っ張り、もっと面白く生きれば~みたいな目をする。
そこで送られてきたのが冒頭の「バカサミット」なる記事である。これは奥さんからの新たな指令か、さらなる啓示か? 最近、バカ度合いが足りないんじゃないの? と、言われているような気がしてならない・・・。
以前【就活のオモテとウラ】という記事を3回に渡って書いた。私の思想のベースにあるのは<日本企業はスマート過ぎる>ということだ。ほどほどに頭が良い社員、ほどほどに優秀なビジネスモデル・・・抜きん出るモノがなく、はっきり言ってつまらない。
なぜか? 就活がつまらないからだ。たいして見る目もない面接官が、野心のない学生たちを、当たり障りのないように入社させていく。これでは日本経済が活性化するワケがない。予定調和の社会が未来も延々と続いていくだけだ。"社会人への入り口"のシステム自体が間違っているのだ。
Facebook、Twitter、iPhone・・・、今日本に流行するビジネスはすべて遊び心が溢れている。こんなのウケるわけないでしょうけどね・・・と、ある意味バカなことを考えた人々が、真剣にバカをやり通して一大ビジネスに成長させた。すべてアメリカ製である。日本ももっとバカな人々が必要ではないか・・・。
そこで私は考えた。バカな学生を育てようと。「まったく新しい就活スクール」を立ち上げようと。
バカとバカはウマがあう?
"量産型ザク"のような学生はいらない。それはただの兵隊に過ぎない。誰でもできる仕事であり、大きなビジネスは成し得ない。もはや企業もそんな学生は欲しくないだろう。シャアザクやガンダムのようなキラリと光る学生を養成できないだろうかと、考えているのだ。
面接のテクニックはもちろん、マーケティングや文章術、コミュニケーションなどなど、実践の場で使える思想を2年生くらいから教え込むのだ。講師陣は現役バリバリ、いろんな業界で活躍する精鋭ビジネスマンたち。就活のとき、すでに入社5年目くらいの人材を排出するイメージだ。隣に座る学生とは明らかに異なるに違いない。そんな生意気な奴らを世に送り出し、ニッポン企業を活性化させる就活スクール会社を作ろう!
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などと、最近知り合ったT君と酒を飲みながら思いつきで喋り、盛り上がり、本気になっている最中なのだ。T君は組織を捨て始めた? 団塊ジュニアのオトコたちという私のブログを読んで連絡してきた。これから会社を作る予定なのですが、開業コンサルをしてもらえませんか? というオファーだった。
私のブログを読んでコンサルをオファーしてくるとは、よほどのバカに違いない・・・。T君に初めて会った日、その直感は当たった。バカとバカはウマがあう。すっかり意気投合したのだが、彼が立ち上げる会社のプランを聞いて、私はいきなりバカから素に戻った。初期投資が相当にかさむ上に、黒字化までにそれなりの期間を要する。不確定要素も多い難しいビジネスであった。
そこで私はT君のキャリアを生かした新ビジネスを、同時並行的に進めるべきではないかと提案した。新会社が赤字のあいだも食いぶちに困らない道を用意しておく方が、安心して新会社に専念できるはずだと。
彼は採用面接のスペシャリストであり、実績も人脈も申し分ないキャリアを持っていた。ビジネスセンスもウマが合った。大いに盛り上がり、酔っ払いながら考え付いたのが、まったく新しい就活スクールという発想だった。これまでのスクールにない仕掛けも多々用意することで、社会的意義があり、潜在ニーズも十分にあるはずだと・・・。
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などと、私は最近、奥さんに楽しげに語っている。久々にバカな感じのビジネスができそうでワクワクしている。バカな奥さんは「良いバカに出会えて良かったね」と、とても嬉しそうだ。
バカな夫婦は楽しいものである。いつか奥さんから「学生時代から知っていたけど、アナタは本当にバカだったのネ・・・。」と言われたいがために、私は働いているのかもしれない。
ちなみに奥さんは決してバカなことはしない。夫婦が本気でバカであったなら、人間的な暮らしは成り立たないことくらいは、ふたりとも心得ている・・・。
(荒木News Consulting 荒木亨二)
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