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【就活のオモテとウラ 最後編】 就活なんて屁みたいなもの

»2011年11月11日
アラキングのビジネス書

【就活のオモテとウラ 最後編】 就活なんて屁みたいなもの

荒木 亨二

ビジネスコンサルタント&執筆業。荒木News Consulting代表。業界をまたいで中小企業経営者のサポートを行う「究極のフリーランス」。2012年より、ビジネス書の執筆ならびに雑誌の連載をスタート。

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就活に関しては以前、3本の記事を書いた。面接の実態や、大企業と中小企業の違いなど、就活にまつわるリアルな話を書いた。どの記事も大きな反響があり、もう就活に関しては書くネタもないだろうと思っていた。ところが、就活に関する"肝心なテーマ"を書き忘れていた。それは『就活のその後』である。

学生にとって就活は人生の一大事、このため、就職試験をパスするという最終目的ばかりに関心が向いてしまう。面接のノウハウを学んだり、企業研究に時間を費やしたりと、『現在』に気を取られてしまうのはやむを得ない。しかし就活において重要なのは、昔学生だった若者がオトナになり、今どのような気持ちで働いているかというリアルな『未来』ではなかろうか?

1社目はどこでもいい?

結論から言うと「最初に就職する会社はどこでもいい」というのが、個人的な見解だ。運よく第一志望の会社に入れたらそれに越したことはないが、たとえ第五志望の会社でも、あるいはまったく興味のなかった業界でも、とにかく<就職した>というカタチを手に入れることが先決である。

とりあえず正社員というカタチを手にすれば、その後は、自分の努力次第でいかようにもなる。1社目に満足がいかなくても、10年後に希望の会社に辿り着けばいい。転職が当たり前となった現在なら、このような"回り道"が可能だ。まったく違う業界で実力を磨き、希望の会社に即戦力として入り込む"抜け道"もある。道を選ぶ権利を得るには、まずはどこでもいいから就職をしなければならない。

1社目がもっとも重要という"過度な期待"から、学生は会社選びにとても慎重になる。しかし、1社目の会社で一生働き続ける人は今や非常に稀だ。早い人では入社して2~3年、遅くても20代後半でかなりの人が転職をしている。30代後半にもなれば、一度も転職の経験がないという方が少数派となる。

転職をする理由はさまざまだ。自身のキャリアアップのため、仕事の可能性を広げるためといった積極的な理由。反対に、人間関係が芳しくない、会社の将来性に期待が持てないなどの消極的な理由もある。いずれにせよ、それなりの年数を働くことによって『自分なりの働く理由』が見えてくる。働く理由が見えれば、自分に相応しい会社を<合理的に探す>ことが可能となる。

さて「働いたことのない学生」が、働く合理的な理由を見つけることは可能だろうか? まず無理だろう。

確かに会社のHPやパンフなどで企業研究をすれば、学生はその会社の事業内容や理念などを理解できるだろう。おおまかに何をやっている会社かは分かる。しかしそれらの情報は会社のごく一部である。そして、それらの情報は「仕事の見た目」に過ぎない。一部の情報から会社の全体像を想像するには無理があるし、また実際の仕事は見た目のイメージと大きく異なる。

例えば「営業」という仕事は"モノ・サービスを売る人"というくらいのイメージしか持たないだろう。私も学生のときは単純に考えていた。ところが実際の営業マンは、業界が変われば仕事のスタイルも大きく変わる。広告代理店の営業マンとメーカーの営業マンでは、仕事に対する考え方も働き方もまったく異なる。さらに言えば、経験を積むほどに個性を発揮できるかなり自由な仕事と言える。

「その仕事ってプロデューサーではないか?」と驚くほどに、人と人をつなげて新たな企画を生み出す営業マンがいる。彼はもはやモノを売らず、自分の好きなことを楽しんでいる。どちらかと言えばルーティーンなイメージの営業だが、実はクリエイティブにも働ける。

あるいは酒ばかり飲んで、お客さんと遊び回り、一向に商談に入らない営業マンもいる。パンフ片手に熱心に商品説明をするのが営業と思っていたら、どうやらそうでもないらしい・・・。商社マンみたいな営業マンもいる。

学生が企業研究をして得られる会社のイメージと、仕事のイメージ。これらに対して、実際に働いてみないと分からない会社の実態と、仕事の実態。この両者には想像以上に大きなギャップが存在すると考えてまず間違いない。憧れの会社、憧れの仕事を持つことは良いことだが、すべては実際に働いてみないと分からない。

就活は人生の一大事、これは事実だ。しかし1社目が重要、これは誤解である。1社目でまるで人生が決まってしまうような錯覚に陥っている学生もいるが、 1社目の会社は単なるスタート地点に過ぎない。就活が終われば、そこから40年余り働く計算になる。就職はその第一歩に過ぎない。

就職したその先にあるのは、就活とは異なるシビアな苦悩、そして苦渋の選択の連続である・・・。

就活の苦悩など屁みたいなもの

私が就活をしたのは今から16年前、ちょうど「就職氷河期」という言葉が生まれた時代だ。いわば氷河期第一世代である。現在のように最初から氷河期だ、日本は不況と分かって就活に挑んだのではなく、就活しようと思ったら、突然氷河期になっていた。1年上の大学の先輩たちは悠々と就職を決めていたのに、自分の番になると状況が一変、突如ハシゴを外されたわけだ。当然、多くの学生はココロの準備が出来ておらず、右往左往した。

さて、そのような"混乱の時代"にどうにか就職して十数年、40歳になったビジネスマンたちは今、どのような状況にあるのか?

女性、留年という理由だけで、すべての会社から就職試験すら受けさせてもらえなかった女性がいた。彼女は仕方なくバイトという身分から会社人生をスタートさせた。彼女はバイト先でマジメに働き、やがて正社員として採用された。その後、彼女は実力が認められ、多くの会社からスカウトが来るまでになった。彼女は転職を重ねるたびにキャリアアップに成功し、今も懸命に働いている。1社目で失敗しても、 いくらでも挽回できる。

第一志望の会社に入ったは良かったが、1年ほどで転職してしまった男性がいた。学生のときに思い描いた会社・仕事のイメージと、現実のギャップに幻滅し、早々に会社を変えてしまったのだ。周囲の人々は彼の早過ぎる転職に「根性がないなあ」という言葉を口にしたが、彼は転職先で踏ん張り、今やその会社の要職に就いてバリバリ働いている。1社目で失敗しても、いくらでも挽回できる。

ただし、そこまでの道のりは平坦ではない。5年、10年、15年・・・、長く働くほどに、仕事に対する苦悩は深まる。そして立場が上がるほどに、プレッシャーも想像を絶するものとなる。就活の苦しみはせいぜい1年くらいだろうか。就活が済めば、とりあえずは苦悩も消えるだろう。

これに対して働く苦悩やプレッシャーは数年、長ければ10年。いやもっと続くだろうか・・・。しかもそれらはすべてが給料や立場に直結する。いわば生活に関わる問題だ。このように多くのビジネスマンが大なり小なりの苦悩とプレッシャーにまみれ、しかも複数抱えながら、日々働いている。このように考えると、就活の苦悩など屁みたいなものには思えないだろうか? やはり、これも働いてみないと分からない。

現在の30代~40代の人々は、1社目の会社に在籍していないケースが多い。そして転職に成功している人、生き生きと働いている人に共通することが幾つかある。それは目の前の仕事に懸命に取り組む「真摯さ」。プレッシャーに負けない「強いココロ」。そして、自分なりの働く理由を明確に持っている「自分らしさ」だ。

決して転職を勧めているわけではないが、1社目をあまり大袈裟に考えない方がいい。最初に"どの会社"に入るかでなく、"どのように働いていくか"、つまり<就活のその後>の方がよほど重要だ。

就活って何?

新卒の就活は、人生でたった1度きりのチャンスである。それは自由に、好きなだけ、就職試験を受けることのできる権利である。いったん社会に出てしまえば、このような経験は味わえない。オトナになって転職をするにしても資格や実績など諸々の制約があり、すべての転職試験を自由に受けれるわけではない。

就活とはある意味、学生だけに与えられた"贅沢な特権"である。ところが学生の立場で考えると、会社の実像も実際の仕事ぶりも理解できない環境に置かれている。つまり「合理的な会社選び」ができないという問題がある。

長年働いてきたオトナなら、会社に関しても、また社会の仕組みについても、分かることが沢山ある。Aという会社の実情とか、Bという業界の裏事情とか、学生とは異なる視点で冷静に判断することができる。

そして、ふと思う。もしもう一度、学生のように自由に就活して良いですよと言われたら、どうするのだろうか? 私は行きたい会社がない。学生の頃に第一志望だった会社にも、今はまったく興味がない。それは自分なりの「働く理由」や「働く特性」を知ってしまったからだ。過去の憧れの会社に行っても、今の自分が成すべきことはないとすぐに分かってしまうのだ。

これは決してオトナになり、昔の夢や理想を諦めてしまったという意味ではない。私が憧れた会社や目指した仕事の内実を知ると、学生の頃に抱いた働くイメージは、やはり表面的なコトしか見ていなかったと理解できるからだ。

私はフリーランスとして十数年働いてきて、ようやく自分の働き方が見つかった。長い時間をかけないと、見えてこないコトがある。同じように、かつて学生として就活に臨んだ多くのビジネスマンも、それぞれに自分なりの働き方を探し、見つけているに違いない。

働かないと見えてこないコトを探すために、働く。その一歩が、まずは就職をすることだ。そのための1社目は、極論すればどこでもいい。後は、働きながら考えていけばいいのではないだろうか。

1社目が思い通りに行かず、その後に紆余曲折したビジネスマンの方が成功しているのは、私の気のせいだろうか・・・。 

(荒木News Consulting 荒木亨二)

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著書「名刺は99枚しか残さない」(メディアファクトリー)