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「生き残るための」文章の書き方 ⑦『女子高生は、文章力を〈生きる力〉に変えた』

「生き残るための」文章の書き方 ⑦『女子高生は、文章力を〈生きる力〉に変えた』

高瀬 文人

フリーランスのライター/編集者/書籍プロデューサー。 月刊総合誌や『東京人』などに事件からまちの話題、マニアックなテーマまで記事を発表。生命保険会社PR誌の企画制作や単行本の編集も行う。著書に鉄道と地方の再生に生きる鉄道マンの半生を描いたヒューマンドキュメント『鉄道技術者 白井昭』(平凡社、第38回交通図書賞奨励賞)、ボランティアで行っているアドバイスの経験から生まれた『1点差で勝ち抜く就活術』(坂田二郎との共著、平凡社新書)、『ひと目でわかる六法入門』(三省堂編修所、三省堂)の企画・制作。

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なぜ、彼女は「奇跡の窓口」を作ることができたのか。
なぜ、同僚の窓口には同じことが起こらないのか。
さらに分析してみたい。

■先読み能力=抽象化能力=文章力
前回、彼女は抽象化することによって客のニーズをつかむと書いた。

「抽象化する力がある」とはどういう状態を指すのか。
それは「言語運用能力が高い」ことである。思考は言語で行われるからだ。
もっといえば、「文章を書く能力」とほぼイコールだと言っていい。

彼女の「しゃべる」能力と「聞く」能力はもともと高い。
私が編集者として彼女に「コラムを書かせたらどうか」と考えたのは、彼女の話が的確で、魅力があったからだ。なにより自分の考えを持ち、それを表現できているところが光っていた。

連載コラムを続けるために彼女に必要だったのは、1000字の中にある程度の論理性と構成を作り上げる力だけと言ってよかった。毎回の原稿を材料に繰り返し訓練してもらえば力はついた。本稿第4回で彼女のコラムをご覧いただいたが、10回を過ぎた頃には、課題がほぼ達成されていたことが示されている。

「面白かった」としか感想が浮かばない具象の世界にとらわれ、感想文が書けないと悩んでいた彼女は、文章を書く訓練をすることによって、抽象化の能力を手に入れる。

「二十一世紀を生きる子どもたちの姿と、「真夏の太陽のように
明るい」未来が、目の前にぱっと広がった」

その瞬間、彼女は「ゴール」を見た。
どこから始め、どんな経過をたどってどこで終えるか。彼女は文章を書くことで、抽象化能力を体得し、それを仕事に活かしているのだと私は考えている。

■具象の世界のみで生きるか、抽象の世界に行けるか
仕事の目標やノルマとして与えられるのは、通常、具象の世界である。
「売上○○円達成」
「お客様に声かけして○○を薦めましょう」
これを抽象化せずに実行しても、スキルにはならない。1回ごとにリセットされてしまう。抽象化ができれば、1の次は2、2の次は3......と経験値はどんどん増えていく。

そして、それまで経験したことのない事態に直面しても、蓄積された経験値から方法を探し出すことができる。1回ごとにリセットされる人と、大きな差がつくのだ。

経験値を多く持ち、必要な時に取り出して相手の文脈に合わせて提示できる。
これを指して「引き出しが多い」というのである。

■エピローグ
この回を書いていた6月16日の夕方、彼女からの電話が鳴った。本ブログで取り上げることは知らせていたので、もしかしたらクレームかしら、と電話に出た。
「iPhone4の予約でいま並んでるんですけど、容量は16Gと32Gとどっちがいいですか?」
これが彼女の用件だった。

漠然とした質問からニーズを読み取り、私はこのようにお答えした。
「iPhone4は従来よりも高画質の写真や動画が撮れるなど、データ容量が大きくなる傾向があります。iPodとしても使うのならば、音楽ファイルの容量も見込んで32Gを選んでおけば、容量不足を気にせずにiPhone4の機能も十分楽しむことができるかと存じます」
何点貰えるだろうか。(この項おわり)