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リーマンショック後、転職マーケットで起こったこと
»2011年6月24日
メディアとWebと人材と
リーマンショック後、転職マーケットで起こったこと
理系学生向け就職情報誌『理系ナビ』初代編集長。ベンチャー2社で事業責任者として上場に向けて貢献するも、ライブドアショック・リーマンショックで未遂に終わる。現在はフリーの事業立ち上げ屋。副業はライター。現在は、MONOistキャリアフォーラム、MONOist転職の編集業務等もお手伝い中。
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誰もが知っている有名IT企業を転々としてきたアラフォーのプロジェクトマネジャー、数億円規模の事業を立ち上げたこちらもアラフォーの新規事業開発経験者。"勝ち組"に分類されそうな、このような経歴のお二人。リーマンショック以降の転職市場でどのような評価を受けたと思いますか?
今回は、リーマンショック後に転職マーケットで何が起こっていたのかをご紹介します。それから、それぞれのケースについて紹介していきますので、キャリアを考える一助にしていただければ幸いです。
◆リーマンショック後の転職マーケット
ご存知の通り、リーマンショック後、転職マーケットは急激に冷え込みました。リクルートやエンジャパンといった業界の雄がどちらも25%前後の社員をリストラしたことからも、業界の冷え込み具合を察していただけるのではないでしょうか。
一方、求職者側の状況はどうなっていたのでしょうか。人材業界ほどではないにせよ、各業界でリストラが進み、求職者の数は急増。求人情報サイト側は、広告費を劇的に減らしながらも、会員登録者数は十分に確保できている状況でした。
限られた求人に応募が殺到したわけですから、応募後の合格率は通常時よりも格段に悪化。感覚値で10分の1くらいには減っていたのではないでしょうか。
私は当時、人材紹介会社に近いところで動いていましたが、求人広告業界だけではなく一般の人材紹介マーケットも悲惨な状況になっていました。
その時に印象的だったのが、求人企業側が一切妥協してくれなかったこと。これまでは「この応募要件は満たしてないけど、ポテンシャルがあるから」「ここは足りないけど、その分、ここの経験は十二分に期待できる」といった書類だけでは分からない情報を加え、なぜ自分がこの候補者を求人企業に薦めるのか、相手が合理的に納得できる説明ができれば、多少条件を満たしていなくても、書類選考をパスできていました。それがリーマン後、数少ない求人企業側に応募が十分すぎるほど集まっていたわけですから、妥協する必要はありません。自社の求める人材がピンポイントで来てくれた時だけ書類を通す。そんな状況だったのです。
野球に例えるなら、ストライクゾーンに勢いのあるボールを投げていれば受け止めてくれていたのが、リーマン後は構えているミットの場所に寸分違わず、指定の球種で投げ込まないとキャッチしてくれない。それくらい厳しい印象を受けていました。
◆"市場価値"を見誤っていたプロジェクトマネジャー
冒頭で挙げたアラフォーのプロマネの方のお話。こちらは懇意にさせていただいている紹介会社・ブリンガの中川社長から伺ったお話になります。
同社にもリーマン後、リストラ対象になった方など、求職者が常以上に集まっていました。中川社長はじめ、同社社員の方々が転職のサポートをされる中、一番苦労されていたのがアラフォー以降の方々の支援でした。数カ月~半年ほど離職されていた方も、ざらにいらっしゃったようです。
そんなわけで、冒頭に上げたようなプロフィールの方は、その典型例。苦戦した理由は市況の影響も大きかったのですが、それ以上に、企業で求められているスキルを身に付けていらっしゃらなかったこと、能力・実績と比べて年収が不相応に多かったこと、が災いしていたのです。
なぜそのようなキャリアを築いてしまったのか。「転職すれば年収が上がりますよ」「こんなに有名な企業に転職できますよ」といった好景気のころに利用していた人材紹介エージェントの甘言に乗ってしまったからです。実践的なスキルを身に付けておらず「外注管理ができます」としか言えないキャリア。結果的に転職回数だけが増えてキャリアやスキルは上がらず、その後の転職には不利になってしまったのです。長期的なキャリアのことを考えず、"会社依存"になっていたのに安易に転職を繰り返したツケが回ってきたのでしょう。
話が脱線しますが、世の中に真摯にキャリアのことを一緒に考えてくれる人材紹介会社がある一方、人材紹介を「ビジネス」としてだけ考えている会社も残念ながらあります。後者は特にリーマン以降淘汰されたようですが、今後1人でも多くの方が前者のようなエージェントと出会い、建設的な転職/キャリア構築ができるようにホンネの情報を伝えていきたい。微力ではありますが、そんな思いからこのブログを始めたのです。
◆"自分依存"の人でも企業の要件次第でマッチしない
もう一方、冒頭で挙げた新規事業を経験されて1つの事業を成功に導かれた方。私自身、自分の目指すべき将来像として、尊敬の念を抱きつつ、転職サポートをさせていただきました。ですが、結果は私の力量/ネットワーク不足もあり、十分なサポートができずに終わってしまいました。
通常時であれば、大抵の企業で歓迎していただけそうな人材。にもかかわらず、不景気+年齢が上になってくると、企業側も採用に慎重になります。自社の求めている人物像と合っているか、これまでに残してきた実績は自社が求めているものか、規模は、対象領域は、経験している業務はマッチしているか、企業側の審査も厳しくなります。
"自分依存"についてのエントリーで「将来的にどんな経験が必要になるのかを早めに認識し、その経験を積めるようにキャリアを積んでいくこと」と書きましたが、そのように考えるようになったきっかけは、この時の経験。「とにかく目覚ましい実績を残せばいいだろう」ではなく「市場価値が上がる/多くの企業から必要とされる実績は何か」と考えておく必要もあるのだと気付かされたのです。
◆最悪の時の話だが最悪の時に備えておく必要性
ここまでの話はリーマンショック以降の1年間くらいの出来事です。さすがに現在は、底を打っての回復基調。リーマン前ほどではないにせよ、求職者側にも一息つける状況になっています。
転職マーケットは需給バランスで企業側の判断が変わってきますので、今回のエントリー、およびこれまでのエントリーで書いてきたような心構えは必要なくなるかもしれません。難しいことを考えずとも転職を成功することも増えるでしょうし、景気が良くなれば年収アップで転職できることも増えてくることでしょう。
けれど、今後の日本にバラ色の未来は待っているのでしょうか? 長期的な視点で見れば、人生の中で何度かは不景気の底、氷河期はやってきます。私が就職したころは就職氷河期、そして10年経った今も新たに氷河期が訪れています。
そんな時でも生き残ることができるサバイバル力が付いているか、どんな時にでも必要とされるキャリアを歩めているか。そんなことを考えておく必要があると私は思うのです。