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ディズニーシーのチュロスと傘に感じるサービスレベルの高さ

ディズニーシーのチュロスと傘に感じるサービスレベルの高さ

波多野 謙介

コラボリズム株式会社 代表取締役で文系プログラマー。超朝型へのスイッチで、仕事と家庭の両立を目指す二児の父。

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先日、不況下でもちっともお客の減らない怪物テーマパーク、東京ディズニーリゾート(ディズニーシーの方)に行って来ました。

雨が振ったり子供が熱出したりと、旅行的にはいろいろ問題点はあったものの、やはり最強のテーマパークだけあって、ビジネス的観点から感心した事がいくつかありましたので、書き残しておきます。

意外にも立派な傘に感じるサービスポリシー

当日はあいにくの雨。雨天対策としてカッパとか折りたたみ傘を持って行ってはいましたが、思ったより雨足が強く、0歳児の頭に雨がかかりそう、という事で、追加でちゃんとした傘を買う事になりました。

Castle of Cinderella
Castle of Cinderella / potaufeu

雨天の場合は、入り口近くの屋台に傘売り場が登場します。傘は一律1000円で、大人用のピンクと水色、子供用の黄色の3種類から選びます。デザインは単色でキャラも無く、隅っこの方に控えめにディズニーのロゴが入ってるだけ。

頭にミッキーの耳をつけて大人達が闊歩するメルヘンの世界の傘にしては意外におとなしい、と思ったのですが、家に持ち帰って利用する事も考えると、現実世界にマッチする控えめなデザインの方がゲストにとってお得、ということなのでしょう。

この傘、意外にもしっかりした作りで、普通のお店で買っても1000円くらいしそうな品質のもの。テーマパーク内というプレミアと、雨が降っている弱みに付け込んで、ついつい1500円位で売ってしまいそうですが、適正価格の1000円に抑えてあるところに、ディズニーリゾートのサービスポリシーを感じます。

だいたい、テーマパークで傘を買うシチュエーションというのは、突然雨が降ってきたとか、思ったより雨が強かったとかいう状況がほとんどであって、そんな弱みに付け込んで、ボッタクリ感あふれる値付けで傘を売りつけられる体験は、本来テーマパークが提供すべき「感動」という体験とは正反対の体験のもの。

じゃあ、500円のビニ傘の方がいいんじゃない?という考え方もありますが、ビニ傘は存在そのものが生活感の塊ですし、ちょっと風が強いとすぐに骨をむき出しにして壊れ、生活感は倍増。折れた傘は人口が密集していて子供多い場所では危険でもあるという事を考えても「それなりにいい傘を適正価格で売る」というのも、きちんとしたサービス戦略なんでは、と思いました。

感動は連鎖していくのかも知れない

傘を手に入れて行動範囲の広がった我々は、アラジンの3D魔神ショーなんかを見てから「ミステリアスアイランド」という火山の辺りに到着し、雨に濡れて凍えながらも、店を探すのが面倒という事で、チュロス2本という控えめな昼飯をとった訳ですが、このチュロス屋の店員さんの手際が、実に素晴らしいのです。


2008-04-16 Disney World, Magic Kingdom 500 / Allie_Caulfield

チュロス屋さんの待ち行列は二列に並ぶようになっていて、それぞれの列に1人づつ店員さんがつくのですが、よく見るとこの二人、頻繁に場所を入れ替わっています。さっきまで右でチュロスを手渡していた人が、今度は左でオーダーをとっているとか。これが、コロコロ入れ替わる。

スーパーのレジなんかを見てると大概1人がレジ打ちで、 1人が商品を袋に詰める係、といったように、役割分担があるのが普通のように思いますが、この二人には役割分担というものが無さそうな、マニュアルで決められただけの動きをしているのでは無いような、そんな感じを受けました。

こんな風に位置と作業をコロコロ入れ替えるには、二人ともが双方の作業を完璧にこなすことができた上で、それぞれがお互いの状況を把握しながら、適切に対応していかなければなりません。その効率的な仕事ぶりにはバトミントンのダブルスを見るような美しさがあって、感心した次第なのです。

作業としてはチュロスとかチキン、ジュースを準備して売るだけなので、難しくはありませんが、こんな感じで仕事をこなす為には、どんな球が来ても最も適切な形で打ち返してやろうという、モチベーションの高さが必要となるように思います。

そしてこのモチベーションの高さを産んでいるのも、元を辿れば、幼少の頃この店員さんがディズニーランドに来た時に感じた満足感や、感動であったりするかも知れない訳で、そしてそのサービス品質が、新たに次世代の子供達に感動を与えていくとすれば、品質の高いサービスというのは、世代を越えて連鎖していくものなのかと、そんな事をチュロス2本の昼食に感じた、ディズニーシーだったのでした。

なんか他にも色々思ったのですが、長くなるのでまた別に書く事にします。