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Googleが働きやすい、働きがいのある会社であり続ける理由
»2013年1月24日
未来の人事を見てみよう
Googleが働きやすい、働きがいのある会社であり続ける理由
人事・組織領域を専門とする経営コンサルティングファーム、クレイア・コンサルティングの広報・マーケティングチームです。
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クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。
アメリカのビジネス誌「Fortune」が発表する、「最も働きがいのある企業100社」調査において、最新となる2013年版の調査においても、Googleがトップを飾りました。
Google、Fortuneの「働きがいのある企業100社」で今年も1位に
上記の記事によると、Googleのラリー・ペイジCEOは彼自身のGoogle+において、
"We've tried really hard to create a work place where Googlers feel part of a family and it's great to see that pay off."
「従業員によるNo.1企業に4度選ばれたのはすごいことだ。われわれはGoogler(Googleの従業員)が家族の一員のように感じる職場を作ることに注力しており、その成果を見ることができてうれしい」
と述べたとのこと。
過去2007年から2008年はトップ、その後3年間は4位と低迷(とはいえ立派な成績です)するも、2012年に挽回、そして今年も1位を獲得したGoogleですが、ラリー・ペイジの言う"Googlerが家族の一員のように感じる職場を作ることに注力し"というのは具体的にどのような施策なのか
少し前に「Forbes」が、Googleの社員が亡くなった場合、その配偶者またはパートナーに10年間、給与の半分を払い続ける、という記事を掲載しましたが、その他にも実は壮大な取り組みを行っていたようです。
マイクロソフトが創刊し、その後ワシントン・ポストが買収したオンラインマガジンSlateに、そのあたりの背景を取材した記事が掲載されています。
The Happiness Machine - How Google became such a great place to work.
POPS
数年前のGoogleは、他のシリコンバレーにある会社と同様、女性の社員の定着率が悪かったのだとか。この問題はただ単に性差による不公平性を担保する、という課題だけでなく、収益までも脅かしていたのだそうです。さらには幸福感についても、Googleがモニターしていた社員の福利厚生に関するデータによると、AmazonやFacebookをはじめとした競合と比べても、かなりひどい数値になっていたようです。
Googleの人事部門はPeople Operations (略してPOPS) と呼ばれているそうなのですが、上記の事態を受け、2007年に状況打破に向けた具体的なアクションを取り始めます。POPSが女性問題のデータを丹念に見ていったところ、女性に関する新たな問題、すなわち、出産をしたばかりの女性の離職率が、通常の離職率平均の2倍の値を示していたことが発覚。その頃はIT業界においての業界水準レベルの出産関連施策を展開しており、かつ州ごとに異なる運用(本社のあるカリフォルニア州の人々は優遇されていた)がなされていたのですが、この偏った運用を一気に解消するとともに、まずは女性の出産周りの施策を改善していきました(具体的な施策については是非原文をお読みください)。
その結果、離職率は半分になり、かつ、Googlegeistと呼ばれる年1回の長文の従業員調査において、幸福感が上昇する、という結果を生み出します。諸々の施策の実現自体、Googleが高収益をあげていて余裕があるから出来るんだ、との穿った見方も可能ではあるのですが、実際には産前の休暇期間を5か月に延ばすことによるコストのほうが、退職に伴う新規採用にかかるコストよりも安価に上がる、という綿密な計算に基づいて施策が遂行されたとのこと。
このようにコスト効率のよい施策を展開するPOPSですが、いったいどのような組織なのか。6年前からPOPSを率いているLaszlo Bock氏の元で運営されるPOPSは、
Google's HR department functions more like a rigorous science lab than the pesky hall monitor most of us picture when we think of HR. At the heart of POPS is a sophisticated employee-data tracking program, an effort to gain empirical certainty about every aspect of Google's workers' lives
Googleの人事担当組織は我々が人事と言って思い浮かべるようなすごく厄介な監視員などではなく、厳密性に満ちた科学研究所のような機能を果たしている。POPSの中核は精緻な従業員データ追跡プログラムであり、Googleで働く従業員の会社生活全般に関する長年のデータの蓄積によってその確実性を担保するよう、日々取り組みを続けている。
巨大かつ精緻かつ長年にわたる情報のインプットと、そこから得た示唆の適用こそが、POPSの核ということのようです。
POPSとPiLabによる仮説検証
POPSは実行部隊としての役割がメインのようですが、そのバックグラウンドにおいて、Googleはここ数年社会学者までも採用し、組織の研究を続けています。PiLab(People & Innovation Labの略)の名で知られるグループの科学者たちは、どのように巨大な会社をマネジメントすることが最善の方法なのか?という問いに対して、仮説検証を繰り返しながら解を得ようとしているとのこと。例えばその問いには以下ようなものがあるのだそうです。
- How often should you remind people to contribute to their 401(k)s, and what tone should you use?
どれくらいの頻度で401(k)に協力するよう呼び掛けるべきか? またどんなトーンで伝えるべきか?
- Do successful middle managers have certain skills in common?and can you teach those skills to unsuccessful managers?
成果をあげる中間管理職は、共通したあるスキルを持っているのか ― そしてそれらのスキルを成果をあげていない管理職に教えることは可能なのか?
- Or, for that matter, do managers even matter?can you organize a company without them?
また、それに関連して、管理職自体に意味はあるのか? 管理職無しでも会社を機能させていくことは可能か?
- And say you want to give someone a raise?how should you do it in a way that maximizes his happiness? Should you give him a cash bonus? Stock? A raise? More time off?
そして、もし誰かを昇給させたいと思った場合、その人の幸福感を最大化する方法として何をするべきか? 現金でボーナスをあげるべき? それとも株? やはり昇給? それとも長期休暇?
普通の人事の運営では、そこまで深くは考え、かつ、検証していかないであろう、これらの事項について、人事の実行部隊の裏で、綿密な仮説検証がなされているのです。
もちろん、Googleの文化に依るところ大であることは間違いのない点です。Bock氏も認めているように、従業員の大半はエンジニアであり、データを示すことによって彼らの行動を変えていく、という方法はGoogleであるがゆえに採りうる策ともいえるでしょう。しかし、先の「Fortune」の調査において、マイクロソフトは75位、そしてAppleやAmazon、Facebookは100位にも入っていないことを考えると、このやり方をGoogleだけが可能な特殊な方法、と一刀両断に切り捨てるのは間違っています。
POPSのpeople analyticsグループを率いるPrasad Setty氏は
"We make thousands of people decisions every day?who we should hire, how much we should pay them, who we should promote, who we should let go of...
"What we try to do is bring the same level of rigor to people decisions that we do to engineering decisions. Our mission is to have all people decisions be informed by data."
「我々は人に関する何千にも及ぶ意思決定を日々行っている―それは誰を雇うべきか、いくら払うべきか、誰を昇格させるべきか、誰を辞めさせるべきか...
我々がやろうとしているのは、我々がエンジニアリングにおいて行っている意思決定と同じレベルの綿密さをもって、人に関する意思決定を行うということだ。我々のミッションは、人に関する意思決定の全てがデータに基づいて行われるようにすること。」
と述べています。
わかってきたこと
ではこれらの仮説検証を通して、どのような事実が判明したのか。記事の中からそのいくつかを取りだしてみましょう。
- 採用時のインタビューについて。もともと採用はGoogleにとって最重要であり、故に希望する全員が応募者と面接をすべき、との考えに基づいて実施していたが、選考期間の長期化を招き、求職市場からの評判も芳しくなかった。そこで、最適な面接回数は何回なのか?という問いに応えるべく、大量の採用に関する意思決定や評定を集めて分析を実施、その結果、面接回数は4回が適切、との回答を得る。難色を示していた現場も、データで実証されることにより納得、以降、面接時間が短くなり、採用全体がスピードアップした。
- 最も重要な発見は中間管理職の存在は有益、とわかったこと。もともと創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは上司がいなくても会社の運営は可能、との考えを持っていた。しかしPOPSが中間管理職の上司および部下による評定(いわゆる多面観察/360度フィードバック調査)を実施したところ、高業績の管理職と低業績の管理職を比べた結果、高業績チームほど離職率が低く、あらゆる評価指標において生産性が高い、という結果が出た。
- さらに高業績管理職に関するフィードバックを分析し、8つのポイントからなる改善策を抽出。「高業績マネージャーは優れたコーチです」といった単なる羅列に過ぎないのだが、これを低業績の管理者に対して周知し、コーチングを進めた結果、全社のマネジメントレベルが向上、2009年以来、多面観察の評点は上がり続けている。
先にも述べた、401(K)の推進の仕方や昇給の方法など、原文ではその他の施策についてもその解が取り上げられています。
面白いところでは、
As for the cafeterias, researchers found that the ideal lunch line should be about three or four minutes long?that's short enough that people don't waste time but long enough that they can meet new people. The tables should be long, so workers who don't know each other are forced to chat. And, after running an experiment, Google found that stocking cafeterias with 8-inch plates alongside 12-inch plates encouraged people to eat smaller, healthier portions.
カフェテリアについて、研究者は理想的なランチ時の列の長さは3分から4分ほどのものであるべきと示した。これは人々が時間を無駄にする、というほどの長さではなく、新たな知り合いを増やすのに短すぎるわけでもない。テーブルは長く作るべきであり、そうすることによってお互いのことをよく知らない従業員同士がしゃべらざるを得ない状態に追い込むことが出来る。そして、さらに実験を続けた結果、カフェテリアに8インチのプレートと一緒に12インチのプレートを並べて置いておくことによって、人々はより少量で健康的な分量の食事を摂るように仕向けられる、ということをGoogleは発見するに至った。
(笑)。なんだかIDEOと同じような雰囲気を感じてしまいますが、これがシリコンバレーの場の力・流儀なのでしょうか。
Bock氏によると、究極的な目標は以下にあるとのこと。
to use Google's experience to answer some big questions about the workplace: Are leaders born or made? Are teams better than individuals at getting things done? Can individuals sustain high performance over their lifetimes?
Googleのこれらの分析結果をもとに、職場に関するさらに大きな問いに答えていく。リーダーは生まれつきか、それとも作られるものか? 物事を成し遂げる上ではチームのほうが個人のほうが適しているのか? 個人は人生の長きに渡って高いパフォーマンスを出し続けることが出来るのか?
POPSはまだこれらの問いに対して答えを出せる状況には至っていない、とのことですが、Bock氏はGoogleが最終的にこれらのいくつかについて光を当てることは出来るだろう、と考えています。
是非原文もお読みの上、自身・自社で適用可能な部分については、取り入れてみていってはいかがでしょうか。
お読みいただきありがとうございます!
~
ここまで読まれても、まだ従業員調査を実施されませんでしょうか? あるいは、調査の分析が難しいと感じられたでしょうか?
今の経営を半ば否定することにもつながるため、満足度を知りたくない、というお客様の声も多く耳にしますが、従業員を対象とした調査は決して満足度だけを聞くものではなく(逆に満足度を聞かなくても構いません)、Googleが行ったように、経営上で懸案となっている組織・業務・人事・従業員に関して、その課題を抽出し、仮説検証を行っていくための重要なツールです。何が出来るのか、今知りたいことを調査で解明することが出来るのか、等、お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。経営コンサルティングファームとして、調査専門会社ではなしえない分析と解決策の提言を、ご提案いたします。