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産土(うぶすな)を守りたい人へ

産土(うぶすな)を守りたい人へ

東 大史

2008年より“地域再生の仕掛けニスト”として活動しております。 主な活動内容はコチラにまとめております。 http://matome.naver.jp/odai/2138270881064964401

当ブログ「「さあ、エコジョイしよう!」」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/ecobrand/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


先日の『地域おこしを志す若者へ』の続編です。今回は特に受入れ側、地域住民の立場の方々に向けたメッセージとして徒然を書いていきます。実際に地域に移住者を増やすに当たっては、個人的には「地域おこし協力隊」などの制度を活用することを推奨しています。地域おこし協力隊は全国で600名以上の隊員が活動しています。それぞれ驚くべき経歴や意識の高い人たちが、ド田舎の現場に飛び込んで日々活動しているのがとても面白いです。


地域おこし協力隊とは何をしてくれる人なのか?と地域住民には様々な期待をされます。実際に地域おこし協力隊への募集要項を見ても、観光から都市農村交流、農作物の六次産業化からITを使った情報発信まで、ありとあらゆることを協力隊員に期待するケースが見受けられます。このようにスーパーマンのように期待値を上げられ、「地域おこし」「地域活性化」という言わば行政用語について具体的な活動内容を定義されないまま、ありとあらゆる会合に出席させられ、いろいろな地域住民の便利屋のように扱われ、あっという間に3年の任期が終わってしまいます。


これは地域おこし協力隊の失敗パターンとも言えるものです。むしろ協力隊になるような人たちは、相応のスキルと覚悟を持って入ってきているわけですから、あまり要求事項を多くせずにしてもらいたいです。ある程度3年間の任期中に隊員がその地域で自立できる生活・経済基盤と地域でのネットワークをつくる自由度を確保した上で、そのサポートを行政などにはしてもらいたいというのが、受入れ側に求める条件です。


本来的には、「地域おこし」にしろ「地域活性化」にしろ、主語は地域住民であるべきです。その地域に何の影響力も資産も持たない若者に対して、「地域おこしをしてくれる人」という過剰な期待をかける主体性のなさと無関心さが最大の問題であって、それは一義的に地域おこし協力隊を受け入れる行政にも当てはまります。


毎日新聞の記事の中で、長崎市地域おこし協力隊の小島さんがこんなことを書いています。彼は「大人の社会科見学」というコンセプトで様々な社会の現場を体験するツアーをつくった人で、ある意味ブームの仕掛け人です。そんな彼が古い炭鉱の島・池島に関心を持って移住し、炭鉱ツアーなどを実施しているのは面白い流れですね。それだけに、ここに語られている言葉は重く受け止めてほしい現実です。

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個で地域に入った新参者は弱いものです。過疎の進む地域の多くはシガラミがあり、それが嫌で土地を離れる人もいます。そこに隊員が1人で投入された時、多 くの場合はまず意見が通りません。協力隊の任期は最長3年と限られているため、土地に溶け込むのを待ってから活動するのでは手遅れです。少々強引にでも動かなければ停滞した地域に変化はおきません。それを考えると協力隊は複数でシガラミのないチームとして投入されなければ、任期中に成果を残すことは難しいと思います。


また、自治体によっては「安く人を使うための制度」として協力隊を利用しているところもあるようです。「地域をおこす」と希望を抱いて就任した隊員が、低賃金で雑用ばかりを「させられている」例も目にします。総務省は隊員の管理を自治体に任せきりではなく、まずは利用自治体を管理した上で隊員の状況を把握してほしいです。過疎の進む地域や、チャレンジ精神にあふれた人材にとっての「3年」は非常に大きな意味を持っていますから。
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日本の持つ資源とは、様々な顔を持つ四季に彩られた自然風景と、それを守ってきた人々の営みにあります。産土を守ろうという昔ながらの知恵と文化こそが、本来的には地域資源であるはずです。他の地域で行なわれているからという理由で、安易にB級グルメだったりゆるキャラだったり街コンを開催することを「地域おこし」と呼ぶのではなく、その地域に根差した暮らしを見つめ直すきっかけとして、地域おこし協力隊のような存在を活用してもらいたいと考えています。









当エントリに関連する過去エントリは以下のとおり。

地域おこしを志す若者へ
過疎地だから夢がある。日本の未来をつくる現場。
新・上流社会へようこそ

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