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「雇用を守る」だけで良いはずがない。

「雇用を守る」だけで良いはずがない。

赤沼 悠介

外国人をマーケティングリサーチのモニターとして提供する事業を展開後、新たなステージに突入する。

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「雇用を守る」という言葉に違和感を感じる。

「雇用を守る」という言葉に従業員に対する思いやりのなさを感じる。


雇用を守ってどうするのだろう?仕事とは何だろう?

もし、仕事が自分自身を表現する場所として存在するのであればこの「雇用を守る」という言葉はあまりにも恐ろしいものになる。しかし、仕事がお金を稼ぐためのものであるということであれば、この言葉はその意味相応のものになる。


もし、経営者が仕事とはお金を稼ぐためのものであると考えているのであれば、雇用を守ると言っても普通だと思うけど、しかし、経営者が仕事とは自分自身を表現するためのものであると考えているのであれば、決して「雇用を守る」なんて言葉は使ってはいけないと思う。


なぜなら、仕事を表現のための手段としているのであれば、最も大切な従業員の性格や性質にあった仕事を与える努力を上司や経営者はするはずだからです。それによって、従業員は自分自身を表現するための手段として仕事をとらえることが出来る。それにも関わらず、「雇用を守る」と言ってしまうのは、仕事を表現の手段と考える従業員に対する侮辱です。

雇用を守ることが最優先になってしまうとそれは、経営者の独壇場となる危険性が高くなると思います。経営者は会社全体の方向性や仕事のやり方を決める人間です。従業員はそれに従う人間です。とすれば、「雇用を守る」ことを最優先とするのであれば、経営者としては従業員を守るための利益獲得が最優先になる。


その何が悪いのか?と言われそうだけど経営者は従業員の雇用を守る為、利益を出すために長時間労働になる傾向が強くなるという事です。仕事はお金を稼ぐためのものであると考えるのであれば、経営者は従業員について多くを考える必要がない。経営者が考えることは多くの利益を得ることが出来るのかどうかであり、従業員にとって幸せかどうかなんて関係がない。だから、従業員に対する長時間労働など忠誠心がひたすら求められる。雇用を守る傾向が強い会社はそういう事になりかねない。雇用を守ることが最優先の会社は経営者に多くの権力が集中した、従業員にとっては非常に苦しいだけの職場になりかねない。雇用を守るための利益とはそういうことになりかねないと思うのです。

しかし、これはもちろん極端な話です。従業員のことを何にも考えていない経営者なんていないはずで、従業員の事ばかり気にしている経営者もいない。程度の問題です。ここで言いたいのは、どちらかに偏るのは良くないのでは?という事です。

ともあれ、超理想的なことを言えば、経営者が求め考えるのは『雇用を守るための利益』ではなく、『従業員を輝かせるための利益』であって欲しいということです。会社経営において利益は絶対です。しかし、その利益を雇用を守るために得る利益として考えるのではなく、その利益を従業員がより働きがいのある職場にするための再投資として使うような「意識」をもって欲しいという事です。何度も言いますが、雇用を守ることしか考えていない経営者はいないし、従業員の働きがいだけを考える経営者もいない。どちらかではなく、どちらもである。でも、どちらかと言えば、働きがいを大切に「しようとする努力」が必要だという事です。

これは私の実体験から来るものです。前職の上司は雇用を守るという言葉を何度も使っていました。その言葉に私はいつも違和感を感じていました。雇用を守ることがそんなに素晴らしい事なのか?雇用を守って何を得ることが出来るのか?かろうじて得ることが出来るとすれば転職活動するための猶予期間を得る事くらいなのではないだろうか?雇用を守ったところで、雇用されている人がどんどん不幸せになっても雇用があることの方が本当に素晴らしい事なのだろうか?私はそうは思わなかった。


お金は大切です。絶対に大切です。仕事とは、絶対にしたくないことも含まれます。ストレスも絶対にたまるものです。それはどんなに経営者が努力したとしても、完璧な企業がないようにストレスはどこかで感じ続けるものです。だから、そのストレスは多少なりとも従業員は受け止めなければならないでしょう。従業員で解消してもらわなければならないでしょう。しかし、経営者も出来る限りの努力、つまり従業員が活きる環境を創る努力をし続ける必要があるのだと思います。そのお互いの努力が生み出すバランスが大切なのだと思います。そのお互いの努力が出来ている会社にいる人は周りから見ればストレスだらけで何のメリットもないように見えても、本人は充実感にあふれているということもあるのだと思います。

また、従業員と経営者が共に同じ目標をもって充実感にあふれて仕事をしている会社の商品・サービスとどちらもストレスにまみれた会社の商品・サービスどちらを購入したいかと言われれば、答えは決まっているように感じます。今後、さらに差別化が難しくなって来る時代において必要になってくるのはこういう会社なのではないかとも思うのです。