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顧客は、共に生きる『仲間』を求めている。

顧客は、共に生きる『仲間』を求めている。

赤沼 悠介

外国人をマーケティングリサーチのモニターとして提供する事業を展開後、新たなステージに突入する。

当ブログ「海外リサーチから見えてくること -日本人と外国人-」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/global_reseach/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


昔、勤めていたマーケティング会社では、私の企画が通らなくていつも悔しい思いをしていたものです。そんなことが原因ではありませんが、自分自身の力というか能力が世の中でどこまで通用するのかという思いが強くなっていきました。それが起業する理由の一つになったことは間違いのないことでもありました。

そして今、起業して3年が経ち、一つ分かったことがあります。そのことを今日は書いてみたいと思います。

それは、企業のお客さんも一般消費者も実は抱えている問題の解決策『だけを求めているわけじゃない』ってことです。

企業のお客さん相手に商売をしていれば、最も重要なことはいかに有益なソリューションを提供出来るのかということです。一方、一般消費者を相手に商売をしていれば、便利で魅力的な商品やサービスを開発して、いかに消費者を満足させることが出来るかということです。でも、本当は企業のお客さんも一般消費者もそんなことだけを求めているのではないと思うのです。

企業のお客さんも一般消費者も、一緒になって寄り添ってくれて、共に問題解決や新しい提案や便利な商品サービスを考えてくれて、共に生きる仲間・共に成長する仲間・共に戦う仲間でいてくれることを求めているということです。

企業のお客さんは、単に問題が解決出来ればいいわけじゃなくて、消費者も、単に便利な商品サービスを享受出来ればいいわけじゃなくて、問題解決に取り組む仲間であったり、充実した人生のための仲間になってくれるかどうかが重要だということです。

どんなビジネスにおいても、企業や消費者との深い人間関係を構築出来る企業は、問題解決能力や商品サービスのレベルが高くなくても、お客さんに寄り添う本当の仲間だから、有益な情報が手に入るし、お客さんが本当に求めていることが手に取るように分かるから最も適切な提案が出来る。

でも、どんなに高い問題解決能力があっても、どんなに素晴らしく便利な商品サービスを提供出来たとしても、お客さんとの深い人間関係を構築出来ない企業は、お客さんを本当に満足させることは出来ない。一時的に満足させることが出来ても、常にお客さんの抱える問題は変化するから、その満足を継続させることは出来ない。

実は、企業も消費者も『共に生きていく仲間を求めていて』、解決策や素晴らしい商品サービスを求めているのではない。問題解決能力を磨くヒマがあったら、素晴らしい商品サービスを考えるヒマがあったら、お客さんの仲間になることを考えたほうがはるかに効率的で合理的だということです。

以前、勤めていたマーケティング会社の上司によくこんなことを言われました。

『お客さんは、優秀なマーケッターを求めているわけじゃない、優秀なマーケッターでありながら、自分たちの仲間になってくれる人間を求めているんだ。』

正直なところ、その当時は何も分かってはいませんでした。優秀なマーケターになれば、お客さんの信頼をつかめるしお金も入ってくると思っていました。論理的でかつクリエイティブなマーケティング企画を考えることが重要と考えていました。しかし、今では違います。企業のお客さんも消費者も、決して私の能力や商品サービスを求めているのではなくて、仲間になってくれるのかどうかを本当は求めているのだと思っています。

様々なサービスが生まれては消えていくこのビジネスの世界において、その人間関係の構築と維持がいかに難しいかは分かっていますし、自分自身それが出来るとは思ってはいません。しかし、何十年何百年とお客さんを満足させ、充実した人生を提供し続ける企業に憧れるのは私だけではないと思います。私はそんな企業にいたいと思いますし、少なくともそんな人間でありたいと思うようになりました。