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研修営業 初めて物語7~『歴史に隠された成長のヒント』

研修営業 初めて物語7~『歴史に隠された成長のヒント』

原田 由美子

HRD(人材育成)サービスを提供するコンサルティング会社の代表です。

当ブログ「ひといくNow! -人材育成の今とこれから-」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/harada6stars/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


2009年の流行語となった『歴女』 。昨年のNHK大河ドラマ『天地人』に引き続き、今年も今をときめく俳優が多数出演した『龍馬伝』も高視聴率のうちに幕を閉じたばかり。『歴史』が気になる私たちですが、実は私たちの組織の歴史にこそ、組織や私たちの成長のヒントが隠されているのです。

 

今、話題となっているものは?

先日母が、「聖子ちゃんが宣伝しているあの化粧品、凄いらしいのよ。○○さんが使ってて、凄くイイっていうから、サンプル化粧品を取り寄せるハガキを出したの。早く届いてほしいのよ」と、興奮した調子で話していました。

私は"はは~んあれだな"とピンと来たので、「それって、富士フイルムさんの化粧品でしょ?」と聞くと、「えっ、あれって、富士フイルムさんなの?会社名まで気づかなかったけど。そうなの!?」

そうなんです。実は私も欲しかったんですその化粧品。研修でお世話になっている西村先生(芝浦工業大学大学院 客員教授で、元富士フイルムご出身)から、お話を伺っていたんです。

西村先生がある研修の打ち合わせの席で、富士フイルムの核となる技術について話された後、「化粧品もやりはじめましたが、基盤技術を応用して作った化粧品なので、浸透度が全く違うんですよ」とおっしゃっていました。それを伺って、"技術に自信のある企業が作った商品なら、絶対に良さそう"と感じ、ずっと気になっていたのです。

私も40代になり、肌の乾燥やキメが明らかに変わってきているのを感じています。そこに、従来の化粧品づくりの発想とは全く違った形で作られた"浸透度"を持つ化粧品があるとしたら、それは気にならないわけはありません。しかし・・・ちょっとお高めなんですよね。それで買わずにいたのです。

とはいえ、聖子ちゃんと、中島みゆきさんのCMを見るたびに、気になり、後ろ髪をひかれつつ・・・していたところに、母から話を聞いたのでした。しかし、フィルムの会社がなぜ化粧品に?

 

歴史に隠されたヒント

大正時代、セルロイドの次の用途として、写真と映画用フィルムに着目し、その国産化を目指すことが起点となった富士フイルム(事業スタート当時は、大日本セルロイド(株)。15年後の1934年に富士写真フイルム(株)として独立。)事業開始後、約20年を経た1936年頃まで安定した品質の商品が作れなかったということから、フィルムを作る技術の難しさがうかがえます。

同社の歴史の中で映画用のフィルム作りの詳細に触れている部分がないので、以下は私の仮説となりますが、大スクリーンで映像の美しさ(色合いも含め)が1つの商品に成りうる点、繰り返し上映される用途としての耐久性も必要である点から見ても、映画用のフィルム作りは一般用途に比べて高い技術レベルを求められたのではないかと推察します。

そのような背景から、創業後一貫してフィルムを中心とした研究と技術開発に取り組み、2010年現在、70年(事業開始からは90年)の歴史の中で生まれたのが、財産でもある"基盤技術"です。

同社には大きく分けて9つの基盤技術があります。(ご関心がある方は、同社のホームページを参考欄にご紹介しますので、そちらをご覧ください)

基盤技術とは、次のように定義されています。(富士フイルム ホームページから引用掲載)

基盤技術:共通性のあるいくつかのコア技術を内包し、波及性(応用分野の広さ)と事業展開への影響度(性能・生産性など)が大きい技術分野の総称

コア技術:商品差別化の源泉となり、将来にわたって競争優位を築くための核となる技術

 ちなみに、写真と化粧品を結ぶ技術は3つあるそうです。

1つ目は、「コラーゲン研究」。なんと写真フィルムの主原料は、コラーゲンだそうです。

2つ目は、「写真の色あせ防止技術」。写真が色あせてしまうのは、活性酸素による"酸化"現象。これもお肌と共通していますね。

3つ目は、「ナノテクノロジー」。写真フィルムは、さまざまな働きをもつ成分を、働きはそのままに超微粒子化し、とても薄いフィルムの中の階層へ安定して配置することだそうです。

 

歴史から読み取る3つのポイント

私は、企業へ研修を提案する際に、必ずその組織の沿革を見ることにしています。沿革からは主に、次の3つのことを読み取っています。

1つ目は、そもそも誰の、何の役に立とうとして創業したのか

2つ目は、その会社だけが持つオリジナルなモノやコト

3つ目は、経験(特に、困難な状況を乗り越えた時に、何に気付き、どのように考え、どう行動したか)

 

変化の時代を乗り越えるヒント

上記3つのことを読み取りから一体何が分かるのか?それは、その会社のその会社たる所以、その会社らしさです。言葉を変えれば、アイデンティティです。

・アイデンティティとは(大辞林より)

  自己が環境や時間の変化にかかわらず、連続する同一のものであること。主体性。自己同一性。

・identity(eプログレッシブ英和中辞典より)

   同一人[物]であること;身元,正体;個性,独自性,主体性,自己,自分らしさ

 

私は、組織も個人も"らしさ"を大事にすることが最も大事だと思っています。その"らしさ"は、その組織の起点となった想い、考え方や行動した結果の経験から形成されていきます。"らしさ"は、その組織や人の軌跡(歴史)に現れているのです。

その"らしさ"を見つけ、これからの時代にどう生かすかを考えれば、自ずと進むべき方向が見えてきます。

残念なことに、将来を不安視する組織や人の多くが、"これから何をすればよいか"にばかり気が向き、"自分達の良いところを見つけ、それをどう生かすか"という考え方やそれを棚下すための作業が疎かになっているようです。

そのような視点で、富士フイルムのホームページを見ると、自分達が取り組んできたことの良い点を客観的に把握し、それを次の時代に活かしていこうとする姿勢が伝わってきます。

その姿勢が、環境が変化し、今までと違った分野への進出でも、新しい顧客を惹きつける要素になっていくのです。

是非あなたも、会社の歴史を紐解き、良いところを1つでも多く見つけて下さい。

さて今回は、組織のバージョンをご紹介しましたが「歴史に隠された成長のヒント」を個人に適用する考え方を、次号のメールマガジンでご紹介します。ご関心がある方は、下記メールマガジンにご登録ください。無料でご利用いただけます。

http://www.six-stars.jp/mailmagazine.html 

 (参考情報)

 富士フイルムホームページ

 ・富士フイルムの技術力 http://www.fujifilm.co.jp/rd/technology/index.html

 ・フジフイルムだからできること(ビューティ&ヘルスケアShop)

  http://shop-healthcare.fujifilm.jp/reason/index.html?click=2&cid=click60