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打ち合わせや会議で"意見が出にくい"状態を脱するヒント

打ち合わせや会議で"意見が出にくい"状態を脱するヒント

原田 由美子

HRD(人材育成)サービスを提供するコンサルティング会社の代表です。

当ブログ「ひといくNow! -人材育成の今とこれから-」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/harada6stars/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


打ち合わせや会議の場で、声の大きな人が全体のペースを作ってしまい、自分の意見が通らない経験をされたことはないでしょうか?そうすると、意見が通らないので徐々に気持ちも冷め、"まぁいいか"とやり過ごしてしまう。一方で、声の大きな人は、"皆のやる気が感じられない"と内心不満に思っている。メンバーとリーダーにギャップが生じている状態。今日は、そうした状態を改善したい人のために、バランスよく発言し、生産性の高い話し合いをするコツについてご紹介します。

議論が進むにつれ、結束力が強まるチームと、疲弊するチーム 

研修では、"グループ討議"を取り入れて運営することが多々あります。その場合、初めて会った人同士の中からリーダーを選出し、リーダー役を担ってもらいます。その際どんな人が選ばれるかを観察すると、比較的、声が大きく仕切りやタイプが選ばれることが多いようです。

先日担当した、ワークショップ型の研修(研修のほとんどをチームのワーク形式で運営していくスタイル)でのこと。その研修では、4~5人を1つのチームとし、4つのグループに分かれてもらいました。講師がリーダー役を決めるにあたって、"やりたい人!"と、聞いたところ、皆が下を向くことに。そこで講師は、「それでは、チームの中でこの人と思う人を各自、指で指してください。一番皆から指された人を、今回のリーダーとします」と伝えたところ、決まったのは、全チームともパワフルでエネルギッシュなタイプの人がリーダーとして選ばれました。

その後、選ばれた人を中心に話し合いが進められましたが、時間を経るごとに、徐々にチームの雰囲気に変化が表れました。その変化は、大きく分けて次の2つの傾向にわかれました。傾向1:メンバーがどんどん結束していくチーム、傾向2:リーダー以外のメンバーから疲弊感が漂うチーム。傾向1のチーム、傾向2のチーム、どうしてこのような差が生まれたのでしょうか?

チームをまとめた、新入社員A君の事例

上記でご紹介した研修とは全く別の研修でしたが、"傾向1"のチーム=時間を経るごとにメンバーがどんどん結束していくチームの見本を、新入社員研修に参加していたA君というリーダーが実践していたので、その事例を元にご紹介します。

その研修は3日間の研修でした。知識を学んだ後、グループ討議をし、成果物を作る演習を繰り返すプログラムで、通常の研修よりもグループ実習が多く内容でした。グループで進めていくことから、その3日間の研修の最初に、講師から「リーダーを決めて下さい」という指示が出ると、皆の指名でリーダーになったのは、A君でした。やや控えめで、大人しい印象です。私はそんな彼を見て、最初は"大丈夫かな?"と内心思っていました。

しかし、私の心配は杞憂でした。

チーム活動を見ていると、講師が与えた時間の中で、講師が期待する成果を次々と上げています。その結果、講師がグループ討議が長引くことを想定して取っていた予備時間が余ることになりました。そこで講師は、そのチームには予備で用意していた応用編のワークも取り組んでもらうことに。かなりワークが続いているので、疲れないか心配しましたが、それも心配なし。嬉々として取り組んでいます。

その結果、予定以上のワークを楽しんでこなし、高い成果を上げ、皆、満足な研修となりました。

A君は何をしていたのか?

後日、A君に、この前の研修でどんなことを心がけていたか聞いたところ、興味深い答えが返ってきました。

A君の答えは次のようなものでした。

「自分がリーダーに選ばれて、最初は務まるか、ドキドキしました。しかし、講師の先生が最初の講義で、"ビジネスでは時間が大切"と言っていたので、チーム内で"時間は守ろう!"を目標にしました。僕は、とにかくそれがしっかりできるように、時間を意識することにつとめ、それ以外のことは、メンバーに任せました。メンバーがいい意見を出し、時間内に出来るように一生懸命取り組んでくれたので、上手くいったんだと思います。僕は、リーダーの責任が果たせたので、ちょっと自信がつき、嬉しかったです。」

傾向1)、傾向2)で成果が違うのはなぜ? 

A君の話を元に、傾向1)と、傾向2)の違いを考えてみましょう。

私の観察を元にお伝えすると、傾向1)、傾向2)とともに、チーム目標を定めていたかどうかは、残念ながら分かりません。

しかし、傾向1)のチームでは、リーダーは全員の話をじっくり聞き、その上で意見をまとめ、発表していました。一方、傾向2)のチームでは、リーダーが率先して自分の意見を伝え、その話をベースにメンバーが自分の意見を付加していきます。

つまり、

  傾向1)のチーム:メンバーの意見を統合し、その上で、新しい意見をくみ上げて発表

  傾向2)のチーム:リーダーの意見を主体に、それに補足する形でメンバーの意見を取り入れていた

という違いが生まれていたのです。その結果、

  傾向1)のチーム:議論が進むうちに、メンバーが結束していく

  傾向2)のチーム:議論が進むうちに、メンバーが疲弊していく

というチームの状態の違いが生まれたのです。

この違いをふまえて、私の観察からA君の行動を補足すると、A君は、メンバーの意見が出にくくなると、何かアイデアがありそうな人にふったり、呼び水となるような自分の意見を伝えていました。そのちょっとした行動が、メンバーの意見を引き出すことに繋がっていたのです。

A君の取った行動をヒントにする

 1.チームの共通目標を決める

 2.リーダーは、共通目標の達成を常に意識する

   (自分の意見を通すことが目的だと思わない)

 3.メンバーがアイデアを出しやすい環境を作る

   (自分の意見は後回し、他者の意見を求める、アイデアマンにふる)

 4.メンバー全員が達成感を感じられるようにする

というのが、結束力が強くなるチーム運営(話し合い)のポイントです。A君は、教えられたわけではなく、無意識にやっていたようですが、上手くチームをまとめることができていました。

そんな彼に、"皆で協力していい仕事をしたい"という想いがあるのを感じました。

私は時折、自分の意見を通したい気持ちが湧きおこった時、A君のことを思い出し、気持ちをクールダウンさせ、他の人の意見を聞く時間を設けるようにしています。打ち合わせや会議の場で、"意見が出にくい"と感じた時は、是非、A君の行動をヒントにしてみてください。

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