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今年の1文字は「徳」・・・一生もの?か
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この寄稿でちょうど100本目。そこで、今年気づき今後も取り組んでいきたいことを、お題にからめてご紹介します。
誰もが「聞いて」ほしがっている?
今年も数十社の企業の新入社員~リーダー(30代~40代)が対象の研修に携わってきました。そこで、特に顕著に感じたことがありました。それは、どの階層の研修でも「もっとグループ内で話す時間がほしかった」という意見が出てくること。或いは、グループ討議時間を多めに取り入れると、「普段話すことができないテーマで討議でき有意義だった」です。
もちろんずっと以前からグループ討議は取り入れています。しかし今年は、講師が講義内容をぎりぎりまで削り、従来より2割ほど討議時間を増やしても、まだ話し足りない様子がうかがえました。ある研修では、話し足りないからか、研修後に参加者同士が連れ立って飲みに行く様子も見られるように。(昨年までは、仕事に戻る、久しぶりに家に早く帰る、たまたま一緒の仲の良い参加者と2~3人で飲みに行く、でした)
そのような傾向があることから、私が担当する日刊工業新聞社のビジネスリーダーズアカデミー(平日19:00~21:00の夜間講座)、リーダー育成講座と部下・後輩指導力向上の講座では、ワークやケーススタディでグループ討議時間を多く取り入れています。すると、初めて顔を合わせる人同士でも、盛り上がる、盛り上がる。
盛り上がっている参加者に、「普段会社でこんな感じで話し合う機会ってあります?」と問いかけると、ほとんどの場合、うつむく、苦笑いをする、首を横に振る・・・という反応が返ってきます。
その様子から感じることは、「組織の中で自分の意見を言う機会がないのかも・・・」ということです。
成果を上げている組織の、リーダーの行動とは?
今年は、震災、円高、欧州・米国の金融問題、水害、外交問題など、1年のうちに多くの問題に直面しました。また、この問題は、今後も引き続き取り組んでいかなければならない問題です。
そうした混沌とする中でも、着実に成果を上げている組織があります。そのような組織に、共通点はあるのでしょうか?
実は、あるんですね。業種、業態、立場、役割、まったく違うリーダーたちとご一緒させていただきましたが、1つだけ特に力を入れている共通点があったんです。
それは、成果を上げているリーダーは、日頃は、取り組むべき目標、目指す成果などを明確に「伝える」ことにエネルギーを注いでいますが、それとは別に、一人ひとりの話を「聞く」時間を意識的につくっているということです。
聞く内容は
・(組織目標に対して)どんな風に取り組みたいか、或いは、取り組んでいくのか
・(そのために)今、どんなことに力を入れているのか
・(そのために、会社、リーダー、チームに)サポートしてほしいことはないか
・(リーダーとしては「こうしたいと思っているが」)実現するために、いいアイデアはないか?
・仕事だけでなく、困っていることや、悩んでいることはないか
などです。
時間としては、30分~1時間。この話し合い後は、お互いに取り組むべきことが決まるので、その進捗を共有をするための機会を週に1度、月に一度など。全体の会議とは別に、個別に話を「聞く」機会を設けています。
その際に、自分の意思が明確でないメンバーには、テーマを与えたり、期待を伝えたりするなど、臨機応変に対応。また進捗確認の場では、出来ていること、出来ていないこと、期待に応えてもらえていること、もらえていないことをざっくばらんに伝え、その上で相手の状況を「聞く」ようにしています。
「聞く」機会があることの副次的効果
また、「聞く」ことには副次的効果もあります。それは、部下・後輩側から「リーダーにモノを言いやすい」という関係ができあがることです。
一般的に、若手側の研修を担当すると圧倒的に多く聞かれるのは、
「上司や先輩(リーダー)と話しにくい」
ということです。
報・連・相をしなければならないことは分かっていても、社外・社内との会議、打ち合わせでいつも忙しそう。PCに向かっている時は集中している様子。意を決して話しかければ、「結論は?」と言われる。
「伝えたくても、伝えづらくて・・・」
というのが、彼らの本音です。
そうなると、ちょっとしたことを聞いたり、伝えたい時も、「まぁ、いいか」、「自分で何とかしよう」と考えるようになります。その結果、本当に伝えなければならない時というのは、「成果が出た時」または「トラブルが今にも起きそうな時(起きた時)」という極端な状況に。そして、自ずと上司や先輩(リーダー)との心理的距離は遠くなり、更に、聞きたいときに聞くことができない関係に。コミュニケーションのデフレ?スパイラルが生じています。
一方で、「聞く」機会が定期的にあると、その時までに聞きたいことをまとめておけるので、仕事を進めやすい様子。
リーダー側も、そのタイミングまでは自分の仕事に集中できるので、お互い効率が良いようです。
「聞く」と「聴く」
研修では、よく「聞く」、「聴く」、「訊く」の違い・・・といった話をします。
・「聞く」=hear 音を耳に受ける
・「聴く」=listen 耳を傾けて聞く
・「訊く」=ask たずねる
ここまでは、多くの方がご存知かもしれません。
今年このようなことをお伝えしながら、私が気がついたのは、「聴」は「徳」に似ている!?ということでした。
「徳」とは?
ちょっと唐突かもしれませんね。実は、「聴」のつくりと「徳」のつくりが同じだな~と思ったのです。そこで、「徳」の文字を調べてみたところ、「徳」の文字は「彳」、「直」、「心」で成り立っていることがわかりました。さらに少し詳しく調べると、次のような成り立ちがあることがわかりました。
・「彳」=少しずつ歩くの意(「行」で、「道」や「進んで止まる」の意)
・「直」=「十」「目」「一」で、まっすぐ見るの意
つくりをまとめると、
・「直」と「心」=まっすぐな心
「徳」=「彳」と「直」と「心」=まっすぐな心で行う、良心的な行い
このことから、「徳」は、「目指す理念に向かって、良心的に少しずつ歩く」ということを表すのではないか、そして、「徳」を実現していくためには、「聴」(まっすぐな心で聞く)が必要なのではないか・・・と考えたわけです。
(※「聴」、「徳」の成り立ちは、複数の説がありますが、私は今回ご紹介した内容だと解釈しました)
2012年に向けて
私が考える「徳」と「聴」について、示唆を与えてくれる一文をご紹介します。
稲盛和夫著 "生き方"191P~日本よ、"「富国有徳」を国是とせよ"より引用
物事というのは、善意で考えるのと、悪意で考えるのとでは、おのずからたどり着くところが違ってくるものです。
たとえば人と議論をするにしても、何とかやり込めてやろう、悪いのは相手のほうだから、その非を認めさせてやろうと思ってやるのと、相手も困っているだろうから、いい解決策をいっしょに考えようと思ってやるのとでは、同じ問題を扱っても結論は全く異なってきます。相手に対する「思いやり」のあるなしがその差を生むのです。
この一文にある、「思いやり」の心。それが、「聴」と「徳」のつくりの「直」と「心」に共通していると思います。
そして、「思いやり」を持つことが、一緒に仕事に携わるメンバーの話を「聴」きたくなり、「聴く」ことで、今までわからなかった相手の事や気持ちがわかり、何をすればよいかが見えてくる。
成果を上げているリーダーというのは、こういうことを知識として知っているというよりも、相手の気持を思いやるうちに、自然とそのような考え方や行動ができている。そのような人のようです。
「思いやり」を持つと、「聴」きたくなり、それが、「徳」につながる。
このようなことに気が付いた1年でした。
今日からは、1日1つでも、「徳」につながる行いをしっかり積み重ね、来年の今頃にどのような積み重ねができたか、振り返れる1年にしたいと思います。
それでは今年も、ブログを読んでいただき、ありがとうございました!来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
よい新年をお迎えください。
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