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お題:「震災から1年」(前編)~リーダーは「想像力」と「創造力」で道を開こう~
ひといくNow! -人材育成の今とこれから-
お題:「震災から1年」(前編)~リーダーは「想像力」と「創造力」で道を開こう~
HRD(人材育成)サービスを提供するコンサルティング会社の代表です。
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先日ある生産財商社の社長とお話をしていたときのこと。「私は自分で言うのもなんだけど、営業力があるから震災以降も業績に影響はなかった。しかし、全体の市場シェアが落ち込む中で、うちがシェアを増やしているということは、他の会社が何かしら影響を受けているということになる。それを考えると、(自分は何をやっているんだろう)と思うことがある。自分は社員や家族の生活を守らなければならないのでやむをえないと思っても、他の会社にも同じように守るべき社員や家族がいるわけで...」というお話をされていました。
このように感じている経営者、或いは現場で働くリーダー、社員は多いのではないでしょうか?社会全体で起きている問題を、自分が取り組む仕事に照らすことで見えてくる矛盾。それでも自分は成果を上げなければならないので仕事に取り組む。しかし時折、後ろめたい気持ちが沸き起こってくる。
今回は、このような気持ちになっている人に向け、2回に分けて書きたいと思います。
バランスを崩す地球?
東日本大震災(2011年3月11日)以降、2011年末までに日本で発生した有感地震(震度1以上)の回数は9723回。前年の7.4倍というから驚きです。震度5以上の地震は、68回。有感地震が多い地域は、東北や北関東が中心ですが、私の仕事の活動範囲である、東京や横浜もよく「ゆらっ」としています。
東日本大震災前に、体感レベルでの異変を感じていた人も多いようですが、私も今思えば、いくつか「変だな~」と感じることがありました。例えば、自宅のサッシの開閉が重く感じるようになった。お風呂の電球が何度直しても点いたり、消えたりする。静電気がやたらとたまりやすく、あっちでもこっちでもバチッ、バチッとくる。PC画面がフラッシュする。震災の1週前の土曜日、自宅近くのラドン温泉に行ったら温泉がやたらと熱くて入れず、みんな「今日は熱くて入れないね」と話していた。など。
このような話は、その時は「気のせい」ですが、今は上記のような現象がないので「やっぱり・・・」と思うわけです。
そして今に至るわけですが、テレビ、スポーツ新聞、週刊誌などが取り上げるような、巨大地震が来るのかこないのか、その予知をすることは私にはできません。
しかし昨年以降、やはり体感的には違和感を感じることが多くなりました。それは「地震」ということだけではなく、地球全体のバランスが崩れている感覚です。
そこで、1999年~2011年までの大きな自然災害を調べてみました。
1999年~2011年の自然災害とは
最初に、日本で起きた地震のデータを見たところ、1999年以降増加傾向だったので、1999年以降の世界で起きた被害の大きな自然災害を調べることにしました。すると、被害の大きな災害は「地震」と「津波」ですが、それ以外にも次のようなものがありました。「火山噴火」、「集中豪雨(洪水や鉄砲水)」、「ハリケーン、サイクロン(台風)」、「トルネード(竜巻)」、「猛暑」、「干ばつ」、「山火事」、「寒波」、「豪雪」、「地すべり」。
特に、日本では多くないため気づきにくいのですが、「干ばつ」の被害は甚大です。中でも世界に穀物を供給するオーストラリアの干ばつは長期化しています。また、中国、ヨーロッパ、ロシア、アメリカの一部地域でも深刻な干ばつが発生しています。
また、自然災害とは違いますが、東日本大震災を経験したことで、私たちの生活が電力への依存が大きいことを誰しも実感していると思います。その電力が供給されない「停電」も世界各国では多発しています。ハリケーンや送電線の切断など明確な理由があるものと、「送電システムのダウン」のような、原因が曖昧なものがあります。
上記以外では、ここ2年ほどの日本では大災害には至らずとも、梅雨の長期化、夏の猛暑、落雷・突風の増加、冬の豪雪など、私たちの生活の中でもバランスが崩れていることを実感しやすくなっているのではないでしょうか。
なお、ご参考まで1999年~2011年の大きな自然災害(地震、津波、ハリケーン、洪水など)を年表にまとめました。自然災害年表.pdf
自然災害を乗り越える知恵
地震に限らず自然災害が増えている中で目を向けたいのは、「自然災害が増えて困っている地域が多い(また、ますます増加傾向にある)」ということです。自然災害年表を作る過程で情報収集中に気づいたことですが、日本は、大型の地震が発生すると、支援部隊 の派遣はもちろんですが、調査団体が現地の被災規模、被災内容、地震のメカニズムの調査をし、建築物への影響などを分析し報告しています。
そうした地道な現地調査結果は、日本の耐震技術に生かされているようです。そのため、日本は他国よりもマグニチュードが大きく、頻度も多い割には、建物への被害が小規模で済んでいるように見受けられます。
また被害が起きても、道路、電力、ガス、水道、通信といったインフラの復旧が早いように思います。更に言えば、ビジネスのサプライチェーンの復旧も早いのではないでしょうか?
このように、日本は起きた自然災害に遭遇するたびに、それを乗り越えるための知恵を生み出しているように思います。
リーダーに必要な「想像力」
さて、次にどのような自然災害が起こるか、私たちにはわかりません。1つだけ言えることは、グローバル化が進めば進むほど、日本以外の国での災害も身近になるということです。
ということは、その地域で起きそうな問題にできるだけ前もって対応することができれば、関わる組織、地域や国の人にとっても、自分の身の周りの人にとっても、備えになると言うことです。
日々の業務、与えられた目標に追われてしまっているとそのような視点は忘れがちですが、日々仕事をしながらも、問題が起きた時のことをイメージし情報収集したり備えておけば、とっさの時に判断や行動ができます。
「経験談」を役立てる
例えば、私は2004年10月23日の新潟県中越地震の時にちょうど新潟にいました。地震が起きた時刻はタクシーでの移動中で、全く地震に気づきませんでした。駅に着いて新幹線の切符を買いに行くと、全ての券売機が停止。理由がわからず駅員さんに聞くと、「地震が起きたので、運転見合わせ」と言います。
事情が掴めず、何となく時間がかかりそうに感じたので、講師と人事のご担当者様と3人で近くの飲食店に入ることに。入ってすぐに、携帯から会社に電話したものの携帯が不通。メールもエラー。それから何度も電話しているうちに、やっと通じた電話で、「大変なことになっているよ!」とのこと。その時にようやく「帰れない」ということがわかり、そこから慌ててホテルを探しに。
運良く、駅のすぐそばのホテルで3室確保できたのでひとまず安心。そこからは、講師とご担当者様と、「どうやって帰ることができるか」様々な方法を検討しました。その時に役立ったのが「電車の時刻表」。電車の路線図で土地勘を掴みました。
地震当日は駅員さんも混乱状態。復旧の目途が立つ様子は全くありませんでした。そして翌朝。講師からの朝6:00の連絡で目が覚めます。その連絡では、講師が駅まで行って駅員さんに確認したところ「朝7:00過ぎに、米沢方面への電車が動くらしいので、その電車で米沢まで行き、そこから新幹線に乗り換えれば、東京まで帰ることができる」ということ。また、その電車の後はいつ動くかわからないとのこと。
そこで大慌てで支度し、ホテルを出ることに。また、ホテルのチェックアウト時に、「身軽になった方が良いかも」と思ったので、不要な荷物は宅急便で送ることに。何日かかっても、混み合う電車に長時間乗らなければならないことを考えると、少しでも荷物は少ない方が良いと考えたからでした。
この経験から私は、次の3つのことを常に意識するようになりました。
①被災すると、情報が入らない、何が起こっているのかわからない(電話やメールがつながれば、テレビなどで情報を得られる人に情報をもらう方が早い)
②その場に最も近いところで身の安全を確保出来る場所を頭に入れておく(この時の経験ではホテル)
③地図の確保(交通経路を頭の中に入れておく)
このような経験をして以降、出張に行くときは「身の安全の確保場所」、「代替交通経路」を頭にいれるようにしています。
また、誰かが被災した時にどのように考え行動し、どのような課題があるのかを情報収集しておくことは有効だと考えるようになりました。そこで時折、ブログなどからも情報を得るようにしています。
今回は被災に関することを取り上げましたが、困った時にどのように対応したか、その情報を得ておくことはとても有効だと思います。
上記のようなことに取り組むことで、業績をあげながら、同時に、関わる組織、地域、国の有事に備える役割も担う。そこまで視点を拡げて考えてみると、ただ仕事をもらう以上の「価値」を提供できるのではないでしょうか?
想像力を働かせ、いただく以上の「価値」を提供する。有事に限らず、そんなスタンスで仕事をしていきたいですよね。
次回は、「創造力」について書きます。
(参考情報)
・気象庁 日本付近で発生した主な被害地震
http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/higai/higai1996-new.html#higai2006
・気象庁 地震と火山
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/2-1.html
・停電の一覧
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%81%9C%E9%9B%BB%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7
※自然災害年表の作成にあたっては、Wikipedia他 参照しました