誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。
微差で大差ー「部下との面談」
当ブログ「ひといくNow! -人材育成の今とこれから-」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/harada6stars/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
上司の役割は、部下に期待をかけ、本人の希望もふまえたうえで、必要な支援をすること。そのポイントが外れていれば、成果が上がらないどころか人間関係を損ないます。今日は私自身の大失敗経験からアプローチのヒントをご紹介します。
NさんとFさんのケース
私には、NさんとFさんという二人の部下がいました。たまたまですが、二人は同じ年齢(20代半ば)の中途採用社員でした。二人とも個人対象でしたが営業経験があることから採用にいたっていました。
採用した当時の会社は、立ち上げてまだ1年。会社の知名度も実績もほとんどありません。その中で新規の営業活動を、法人営業経験、人材育成に関しては素人の彼らが展開するのはハードルが高すぎます。そこで会社は、彼らが営業活動が進めやすいよう、人材育成のご担当であれば関心を持っていただけそうなセミナーを企画し、そのセミナーのご案内をきっかけとしながら仕事につなげてもらうことにしました。
彼らの努力の結果、セミナーには多くの方がご参加くださり、継続的に訪問させていただけるようになりました。
それから約2ヶ月後、NさんとFさんの仕事に違いが出始めます。
Nさんは、ちょっとしたお客様のご相談事から案件につながりそうなテーマを見つけ、成果が上がる気配がありました。一方Fさんは、訪問件数も多く、継続的に訪問するなどの活動量はあるものの、一向に成果が上がる気配がみられません。
成果が上がらないFさんとの面談
そこで私はFさんと面談することにしました。その面談は、次のように進めました。
導入:日頃の活動への感謝、ねぎらいの言葉、Fさんが頑張っていることを認める
本論:成果があがりにくい要因を一緒に検討したい、自分にできることがないかを聞きたい
まとめ:次の話し合いのタイミングの設定、今日の話し合いへのお礼、Fさんへの期待のメッセージ
話し合い後、モチベーションが下がり始めたFさん
その後、Fさんの成果がどうなったか。
Fさんはどんどんモチベーションが下がり、更に状況が悪化したのでした。というのも、まじめな性格で責任感も強いため、成果が上がらない事に対して焦りを感じてしまったようです。
研修などで教わる面談のテクニックを駆使し、完璧な話し合いだったはずなのに・・・一体何が悪いのか、私は本当に悩みました。また、指導する私のスキル不足のせいかもしれないと考え、Fさんをよく知る営業コンサルタントにも支援をもらい、面談などをしてもらいました。
しかし・・・さらにFさんのモチベーションは下がっていきます。もう、どこまで下がっていくんだろう・・・という感じです。
ロールプレイング
そこである時、提案を依頼された先があったので、その依頼先にFさんに行ってもらうことにしました。その際、企画を元に私がお客様役、Fさんに営業役になってもらいロールプレイングをしました。
ロールプレイングをして、初めて気づいたことがありました。それは、Fさんは資料を説明する際に、ずっと資料に目を落としたまま、相手の表情を確認することなく淡々と説明しているのです。
私は愕然としました。営業経験があったので説明するスキルはあると思っていたからです。しかしFさんは非常に誠実な人柄なので、説明を間違わないように丁寧にするために、資料ばかりを見ていたのです。また、資料ばかりを見てしまうのは、人材育成に関する知識や経験が少ないため、自信が持てないということでもありました。
そこで、Fさんに自信を持って説明してもらえるように、Fさんがわからないこと、自信が持てないことを言ってもらい、丁寧に説明し理解を補強するとともに、繰り返し何度も練習した上で訪問してもらいました。
その結果、Fさんは受注をいただけました。
相手を見ることの大事さ
この経験ののち、私は下図のような「意欲」と「能力」の違いに関するマトリクスを目にすることになります。 このマトリクスの言わんとしていることは、「意欲」と「能力」の違いに応じてアプローチの仕方を変えるというものです。
Nさんが成果が上がっていたのは、Nさんは営業の基本スキルがある程度身に付いていたからでした。マトリクスで言うと、モチベーションが高く、スキルがある部分に位置づけられます。
一方Fさんが成果が上がらなかったのは、モチベーションは高かったものの、スキルがなかったのです。
後日談ですが、Fさんは会社を辞めてしまいますが、再就職先では1つ1つ知識とスキルを身に付けるような教育が用意されている会社だったようで、優績者となっていました。
人柄がよく、一生懸命取り組もうとしていたFさん。間違った指導をすれば、能力が伸びないばかりか、その人の意欲をも失わせてしまう結果になることを身を持って実感した苦い経験です。