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良書がなぜ役立たないか?

良書がなぜ役立たないか?

原田 由美子

HRD(人材育成)サービスを提供するコンサルティング会社の代表です。

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『7つの習慣』を初めて手に取ってからどのくらい経ったことでしょう。既に書籍は小麦色とまではいかないものの、風格のある色合いになっています。

手にとって読んだきっかけは、人材育成業界では大変有名な『7つの習慣』。"読んでおかないと話についていけない"といった程度の動機でした。そのため、今あらためて読み直してみると、示唆に富んだ内容ばかりで得るものが多いと感じていますが、当時の私にはほとんど印象に残らず、役立たない書籍でした。

 

唯一印象に残ったこと

その中で唯一印象に残っていたのは、第一部 パラダイムと原則、人生の扉を開く「7つの習慣」の、『ガチョウと黄金の卵』の教訓です。

教訓の出典は、イソップ寓話の次のお話です。

『ガチョウと黄金の卵』

 ある貧しい農夫が、飼っていたガチョウの巣の中にキラキラと輝く黄金の卵を発見した。最初は誰かのいたずらだろうと思って捨てようとしたが、考え直し、念のために市場まで持って行くことにした。すると、卵はなんと純金だった。農夫はこの幸運が信じられなかった。翌日も、同じことが起きた。来る日も来る日も、農夫は目を覚ますや否や、ガチョウの巣に走って行き、新しい黄金の卵を発見した。やがて、農夫は大金持ちになった。ところが、富が増すにつれ欲が出て、せっかちになっていった。一日一個しか生まれない黄金の卵が待ち切れず、ついにガチョウを殺し、腹の中の卵を全部一気に手に入れようと決めた。そして、いざガチョウの腹を開けてみると中は空っぽだった。

 黄金の卵はもちろんなく、そのうえ黄金の卵を手に入れる手段さえも、農夫は失くしてしまったのだ。黄金の卵を生み出してくれるガチョウを殺してしまったのだ。

著者解説

 つまり、ガチョウを疎かにし、黄金の卵ばかりを追い求める生活様式を取り入れれば、やがては黄金の卵を生み出してくれる資源を失くしてしまうことになる。逆に、ガチョウの世話ばかりして黄金の卵のことを考えなければ、自分自身もガチョウを食べさせる資力を失ってしまうだろう。

(引用了)

なぜ印象に残ったか?

 この部分を読んだ頃、私は、ストックオプションを取り入れる人事制度の方向性や、人材育成における「即戦力」という考え方に疑問を持っていました。そして、この解説を読んで、「黄金の卵」=成果、「ガチョウ」=社員、「農夫」=経営者・制度という図式を思い浮かべ、ぞっとしたのです。そのため、とても印象に残っていたのです。

 

良書がなぜ役立たないか?

 研修を受けても「職場で生かされない」という声をお聞きすることがあります。提供する私たちも、職場で生かしていただけるように、最大限の力を注ぎますが、「役に立ったかどうかわからない」という声に直面すると、とても残念な気持ちです。

 役立たない理由を考え思い至るのは、『7つの習慣』を私が10年以上前に手に取った時と、今回との違いです。その違いを下記にご紹介します。

 (10年前:読むきっかけと、印象に残ったこと)

 ・読むきっかけ="話題についていきたかったから"(研修で言えば、たまたま機会があったから)

 ・印象に残ったこと=自分が問題意識を持っているところと重なる部分のみ

 (現在:読むきっかけと、10年前との違い)

 ・以前読んだ時に、印象に残る箇所があった(再読してもいいと思えた)

 ・自分ごととして捉えるに至る経験があった

 ・その経験の中で、自分にとっての課題が明確になった

 ・その課題を解決したいと、常日頃から取り組んでいる

 ・ヒントになりそうな書籍を読み、実践し、効果の有無を検証している

 という考えや、行動がベースにあって、あらためて書籍を読んでみた時に、"役立つ"と感じられたのです。

 つまり、何かを得るためには、経験、課題、解決したいという意欲、行動が不可欠なのです。

 

活きる「読書」とは?

 研修を提供するタイミングというのは、経験を積む前に、その仕事や役割の全体像を捉えてもらうために実施することがほとんとです。研修効果を最大化するために、フォローアップ研修を実施することもありますが、それを含めて経験が浅いうちです。

 しかし、研修で提供するフレームワークや、講師の経験談などが本当の意味で活きてくるのはその少し後。何かに取り組んで壁にぶつかるタイミングです。そのタイミングに実施すると、その人の中でパラダイムシフトが起こり、研修そのものが役立つことにつながります。

 ということが分かっていても、実際にそのタイミングを捉えることは非常に難しく、また、その時直面している課題が参加者全員が同じであることはありえないので、組織全体で効果を実感できる研修と言うのは、難しいと感じています。(目指してはいますが)

 しかし読書であれば、自分でタイミングを図ることも、教えてもらう人(著者)を選ぶことも可能です。そこが読書の素晴らしい点でしょう。

 せっかくなので、読書を活かすタイミングを、研修を元に考えてみたいと思います。そのタイミングとは、同じ書籍を「物事に取り組む前」と、「課題を感じた時」に読むことではないでしょうか?"読むタイミングで気がつくことが違った"という経験を持つ方は多いので、意識的にタイミングを図ることで役立ち度がアップする効果、あるような気がしませんか?

 それにしても『7つの習慣』、するめのような味わいです。歯ごたえありますよ~。 

 Biz.ID:「7つの習慣」セルフ・スタディブック

http://bizmakoto.jp/bizid/rensai_selfstudybook.html