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「即戦力」と言われた40代は育っているのか?

「即戦力」と言われた40代は育っているのか?

原田 由美子

HRD(人材育成)サービスを提供するコンサルティング会社の代表です。

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「即戦力」人材育成の現場で当たり前のように使われている言葉ですが、私がこの言葉を複数の人から聞くようになったのは、97年頃だったと記憶しています。その当時のことで、今でも鮮明に覚えていることがあります。それは、ある金融機関のご担当者様(50代の方)と、若手育成(当時の20代、今の30代後半~40代)について色々と話をさせていただい時の事。ご担当者様がおっしゃった一言でした。

「人を、促成栽培するような"即戦力"という考え方は、どこかおかしい気がする。どこかで破たんするのではないか」

あれから10年以上が経ちました。その頃の20代は、今、30代半ば~40代に。果たして育っているのでしょうか?

 

40代になって

何をもって「育った」とするかにもよりますが、研修でお会いする40代、自分や身の回りをの40代を含めて見る限り、「成長中」のようです。私が考える「育ったかどうか」の定義は、「任された事業を発展させているか」、「利益が出せているか(余裕がある状態を生み出せているか?、生み出す過程にあるか)」です。(注:事業を発展させる過程で、影響する人たちに対する道徳観があることはもちろんです)

厳しいようですが、経験や実績があるにも関わらず、"リストラ予備軍"、"再就職先がない"40代が増加している、或いは、若い世代を雇用する余力がないということは、「(事業を発展させる人材が)育っていなかった」と言えます。

一方で、40代を弁護するわけではありませんが、40代前後の世代は、20代~30代で、大きく価値観が変わった時代に生きてきました。

  就職前後⇒バブル期

  20代⇒バブル崩壊~ITバブル

  30代⇒ITバブル~いざなみ景気~リーマンショック

その頃、そこはかとなく漂っていた時代の空気は、"一足飛びに成功する"という考え方でした。その成功のイメージは、地道に事業を継続し発展させる、といった現実的なことではなく、個人の夢や希望をかなえるような成功を意味していたように思います。当時の書籍をを思い出すと、イメージを掴んでいただけるかもしれません。今の40代が20代頃(1995年)からの、ベストセラーのトップ3の書籍タイトルをご紹介します。

 

【ビジネス書 ベストセラー(ト―ハン調べ)】※2005年は掲載なし。1位~3位 タイトルのみ掲載にてご容赦ください。

 1995年 1位:堀田力の「おごるな上司!」 2位:「大変」な時代 3位:人間を幸福にしない日本というシステム

 1996年 1位:パソコン「超」仕事法 2位:ビル・ゲイツ 未来を語る 3位:超右脳革命

 1997年 1位:7つの習慣 2位:「次」はこうなる 3位:「考える力」をつける本(1・2)

 1998年 1位:あなたのお客さんになりたい! 2位:宣戦布告「NO」と言える日本経済 3位:あるべき明日

 1999年 1位:痛快!経済学 2位:サラリーマン・サバイバル 3位:キャッシュフロー経営入門

 2000年 1位:経済のニュースが面白いほどよくわかる本 日本経済編 2位:経済ってそういうことだったのか会議 3位:上司が「鬼」とならねば部下は動かず

 2001年 1位:金持ち父さん 貧乏父さん 2位:仕事ができる人 できない人 3位:なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣

 2002年 1位:図解〔儲け〕のカラクリ 2位:ザ・ゴール(1・2) 3位:論理力を鍛えるトレーニングブック

 2003年 1位:図解 成功ノート 2位:年収300万円時代を生き抜く経済学 3位:経済のニュースがよくわかる本 日本経済編

 2004年 1位:内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 2位:株の自動売買でラクラク儲ける方法 3位:会社にお金が残らない本当の理由

 2006年 1位:鏡の法則 人生のどんな問題も解決する魔法のルール 2位:なぜ、社長のベンツは4ドアなのか? 3位:千円札は拾うな

 2007年 1位:「1日30分」を続けなさい!人生勝利の勉強法55 2位:鏡の法則 人生のどんな問題も解決する魔法のルール 3位:できる人の勉強法

 2008年 1位:脳を活かす勉強法 奇跡の「強化学習」 2位:情報は1冊のノートにまとめなさい 100円でつくる万能「情報整理ノート」 3位:脳を活かす仕事術「わかる」を「できる」に変える

 2009年 1位:脳にいいことだけをやりなさい!頭のいい人は「脳の使い方」がうまい! 2位:誰とでも15分以上会話がとぎれない!話し方66のルール 3位:本当に頭がよくなる1分間勉強法 

 

無意識に受けていたメッセージに気付く 

書籍のタイトルでお気づきいただけると思いますが、2001年ごろから急激に、「長期的視野」→「すぐにできること」、「組織で取り組むこと」→「個人で取り組むこと」の傾向が強いタイトルばかりがランクインしています。

どうやら私たちは、「事業を発展させる」という役割を担わなければならない世代のはずなのに、無意識のうちに、「自分の成長」に尽力していたようです。(とほほ)。もちろん、心理学でいうところの、「過去と他人は変えられない」ということから、自分を変え成長させることで、組織(あるいは環境)を良くしていくという考えもあるので、それは重要です。

しかし、何となく、物足りなさを感じるのは私だけでしょうか?(ご意見などは、是非コメント欄へ)「破たんするのではないか?」といった人材育成ご担当者様の予言が、ある意味現実のものとなっているように思うのです。

まずは、この現実を受けとめ、明日以降、これからの人材育成について考えていきたいと思います。 

(参考情報)

日本著書販促センター 出版業界の豆知識 ベストセラー ビジネス書

http://www.1book.co.jp/cat_85.html