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『千と千尋の神隠し』に学ぶ、価値観の違いと普遍性
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300億円以上の興行収入となった、2001年公開『千と千尋の神隠し』。八百万の神という最も日本的なテーマを取りあげた作品であったにも関わらず、第52ベルリン回 国際アニメ映画祭 金熊賞、アニー賞(国際アニメ映画協会主催)4部門、第75回アカデミー長編アニメ賞、2002年香港電影金像奨・最優秀アジア映画賞 他、海外でも高く評価されたこの作品。まずは、海外で公開された際のタイトルが、どのように扱われたのか確認してみましょう。
『千と千尋の神隠し』海外タイトル
- 『千與千尋』(中国語)直訳:「千と千尋」
- 『神隱少女』(台湾の繁体中国語)直訳:「神隠しにされた少女」
- 『Chihiros Reise ins Zauberland』(ドイツ語)直訳:「千尋の魔法の国の旅」
- 『Spirited Away』(英語)訳:spirit away = 「誘拐する、神隠しにする、忽然と連れ去る」
- 『El viaje de Chihiro』(スペイン語)直訳:「千尋の旅」
- 『Le Voyage de Chihiro』(フランス語)直訳:「千尋の旅」
- 『La città incantata』(イタリア語)直訳:「不思議の町」
(Wikipedia より引用)
この他韓国では、「神隠し」という言葉がないので、「千と千尋の行方不明」というタイトルになっていたそう。そう言われてみると、台湾以外の国では、「神隠し」という言葉が使われていません。後は、ニュアンスの近い、アメリカの"Spirited Away"。
他の国にない価値観を持ったこの作品が、なぜ、受けいれられたのでしょうか?ベルリン映画祭での受賞理由では次のようにコメントされています。「少女がたくましく成長する姿を豊かな想像力と高度な表現力で描いた」。また、複数のメディアでは、「八百万の神が登場し、文化や伝統の多様性を強調した点」や、「人間の普遍性がテーマになっていた点」を評価しているコメントも多かったそうです。
一方で、宮崎駿監督がこの映画を作るきっかけは、極めて個人的な理由からでした。
宮崎駿監督 インタビュー記事より抜粋(ファミ通.comエンターテインメント 2001年7月1日記事 ※千と千尋の公開前に発表)
きっかけ......うーん、特には考えてなかったんですが(笑)。ただ、友人の娘たちで、自分自身も親しくしている女の子がいるんだけど、その子たちに見せたい、その子たちのための作品を作りたいと思ったんですよ。そう考えたときはその子たちは10歳だったんだけど、いまでは中学生になっちゃった(笑)。それはともかく、よく考えてみたら10代前半くらいの女の子たちに向けた作品は作ったことがなかったんですね。少年向けの作品は『天空の城ラピュタ』とかがあるし、思春期向けの作品なら『耳をすませば』もある。小さな子向けだと『となりのトトロ』とか。けど少女たちのものって何かあったか、と考えたら、ないんだってことに気づいた。
(中略)
世の中はそろって「個性の時代だ。好きなことをやりなさい」なんて言ってるけど、そう簡単に好きなことなんか見つかるはずがない。その人に向いてるものなんて、それこそ何にも向いてないこともあるんだから。そういう一見個性尊重の欺瞞のなかに個性なんてあるわけないんですよ。どうも世の中が彼女たちに向けて要請しているものが、何かウソくさい。逆に彼女たちのために用意されているものも上っ面な作品ばかり。どうやったら彼女たちが「自分たちのための作品だ」と思ってくれるか思案して、『千と千尋~』を作ろうと思ったんです。
(引用了)
千と千尋の公開前の宮崎駿監督のインタビューでの、「一見個性尊重の欺瞞のなかに個性なんてあるわけないんですよ」ということが、この作品の根幹であるならば、海外の方も、無意識にそのようなメッセージを受け取っていたのかもしれません。
両親を助けるために、油屋の経営者湯婆婆に「働かせて下さい」と言って仕事をもらう千。千が教えてくれるものは、沢山あったんですね。
(参考情報)
SFMOVIE DataBank(邦画興行収入ランキング)
http://www.generalworks.com/databank/movie/rank04.html
ファミ通.comエンターテインメント 2001年7月1日記事
http://www.famitsu.com/entertainment/column/2001/07/20/sum_05b.html