誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。
少子高齢化の悲観論と楽観論
色々やってる社長のブログ
少子高齢化の悲観論と楽観論
大阪・東京を中心に、これまで様々な業態の事業を展開中。それらの体験・実践をもとに、IT関係・外食産業・商業施設・M&A投資などのコンサルタントとしても活動。特技は、不動産投資。趣味は、ゴルフに音楽。最近は和服にも凝っている。
当ブログ「色々やってる社長のブログ」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/hiramoto/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
日本社会における少子高齢化が叫ばれて久しい。多くのメディアが報じるのは、少子高齢化により、経済を含め日本は衰退するような悲観的イメージが強いように思われる。果たして本当にそうなのか、悲観論、楽観論を併記して日本の未来を展望したい。
□日本の人口は本当に減少するのか?
さて、話の前提として、日本の人口がどのように減少してゆくかのデータを見てゆこう。次のデータは、総務省統計局が出しているデータである。
このデータは、総務省統計局が出しているデータをそのまま記載したものだが、このデータにはトリックが含まれているので注意が必要である。左のデータはだいたい毎年ごとである23年間のデータの羅列だが、右の予想に至っては、平成27年から平成117年までのなんと90年間に及ぶデータが並べられている。
パッと見れば、日本の人口はものすごい勢いで減るように見えるが、平成117年の90年先のことなど誰にも判るはずがない。明らかに日本の人口は減少するということをアピールしたい意図がヒシヒシと感じられる。
2014年の今から考えて、90年前なら1924年(大正13年)だ。大正13年の人々が、日本の敗戦とその後の高度成長を見通してバブル経済をイメージし、IT産業の起こりを予知出来ないのと同じである。これが出来れば優れた予言者である(笑)。
このデータにおいて、参考にすべきは30年~40年先までが限界だろう。となると、参考にすべきは、次の通りとなる。
つまり、日本の人口は20年後には、1.1億人レベルまで減少し、30年後には1億人レベルにまで減少し、さらに40年後には9千万人レベルにまで減少すると考えていいだろう。
□悲観論の趣旨
さて、まずは、多くのメディアが取り上げる悲観論の趣旨を挙げてゆこう。
・人口の減少はGDPの減少に直結する。
・人口の減少はデフレを起こさせる。
・人口の減少は、国の財政収支を悪化させる。
・人口の減少は日本の競争力の低下をもたらす。
・人口の減少=少子高齢化社会は、若者の社会保険負担を増大させる。
そして、その対策として、
・社会保障費としての税金アップ(消費税アップ)
・年金支給額の縮小
・女性の社会進出の促進(労働人口の増加促進)
・移民(外国人労働者)の受け入れ
ざっと挙げるとこのようになる。
□楽観論の趣旨
これに対して、日本の人口減少に対する楽観論がある。楽観論については、あまりメディアで取り上げられることが少ないので、多めに行を割きたい。
楽観論の趣旨は、次の通りである。
・人口減少と経済成長は直接関係がない。
・人口減少しても経済成長している国は少なからずある。
・人口減少しても、経済成長は可能である。
・人口減少とデフレも関係がない。
・経済成長を止めるような増税には反対である。
これらの理由の根幹は、ざっくり言えば<GDP=国民の総収入>であり、人口が減少して労働人口も減少すれば、需給のバランスにより一人あたりの賃金が上がるという考え方である。つまり、一人あたりのGDP(=収入)が増加すれば、経済規模は維持できるし、日本の技術力やサービスでもって新しい市場を作れば経済成長は可能だということになる。
たとえば、30年後に人口が20%減少するなら、賃金が20%上昇すればいいということだ。それに伴って、一人あたりの支出も増えることになるから、物価が一定だとすれば、人口減少すれば人々は今より高級な食事が食べられ、家賃の高い家(値段の高い家)に住み、贅沢な旅行が出来ることになる。そうなれば各家庭にも余裕が生まれるから、自ずと出生率は回復するとみている。
したがって、楽観論の考え方では、安い労働力を導入する移民(外国人労働者)の受け入れは反対である。これを行えば、相対的に賃金の上昇が見込めなくなってしまうからである。
また、楽観論では、現在、賃金を低く抑えられている契約社員、アルバイトを正社員に登用することにより、国民の総収入(=GDP)が増えるのであるから、それだけで経済成長が可能と説くことが多い。
そして、最後に付け加えておくと、楽観論では日本における高度経済成長を引き合いに出すことが多い。あの時代、日本は平均して年率10%程度の経済成長を続けたが、人口はそれほど増えたわけではなく増えたのは賃金であり、それが経済成長の原動力となったと主張する。
□悲観論か? 楽観論か?
さて、このように日本の人口減少については悲観論だけでなく、楽観論もあることを知っておく必要があるだろう。どちらが正しいのではなく、おそらく両方の事態を想定しておかなければならないのかもしれない。少なくとも、少子高齢化は即時、日本の沈没を意味していない可能性があることだけは認識しておくことが大事である。
ちょうど今の日本では、両方の対策が同時に行われているように思われる。賃金アップにつながる非正規雇用者の正規雇用への登用も進んでいるし、特殊な技能を持った外国人労働者の受け入れ枠を拡大しようとしている。
また、消費税はアップしたが、大企業に対しては、労働者の賃金をアップするように圧力を掛けている。
どっちつかずともいえるが、当面は両にらみの政策しか方法はないのかもしれない。
□どちらにのしろこのままでは駄目!
たとえばこの問題に関して楽観論を取るにせよ、このまま何もしないで良いというわけではない。以下の図のように、出生率の低下は目を覆うばかりである。平成25年度で1.43人。たしかにこのままでは、この列島に日本人がいなくなってしまう。なんとしてでも、子供を産んで育てやすい環境整備が早急に必要であることはいうまでもない。
(内閣府HP 厚生労働省「人口動態統計」より)