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視点が低い残念な人の事例 細かい戦術のみに終始する営業部長Mの場合 ~視点の研究6~
»2012年2月 9日
細島誠彦ブログ【参謀の戦略眼】
視点が低い残念な人の事例 細かい戦術のみに終始する営業部長Mの場合 ~視点の研究6~
株式会社TransamManagementSystem代表取締役。 中央大学法学部卒業後、ベンチャー企業その他企業の経営企画室長、管理本部長、CFO、取締役を歴任。経営戦略構築、マーケティング戦略構築、新規事業の立ち上げや財務戦略、M&Aなど、企業の参謀業務に従事。
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企画をたてるということにもルールがある。
それは経営同様に、
『戦略から戦術へ』
という順をふむ。
もちろん戦術が先に思いつく場合は、
それに到達するように戦略を構築するということでもよい。
しかし、企画書は原則としては戦略から戦術へと話が流れていく。
ある入札案件が舞い込んだ。
企画をたてたいので相談にのってほしいという依頼があったため、
その会社の営業部長Mとともに、企画部門の相談を聞いた。
詳細はここでは書けないのだが、
ある企業がある事業を行なってきたが、芳しくない。
よって、ゼロベースから組み立てたいので、企画を提出してほしいということだ。
そういう依頼であったため、私は、
・そもそも、その事業は何のためにやるものなのか?
・結果として、ユーザーの反応をどういうものにしたいのか?
・どういう効果をもたらしたいのか?
・どのぐらいの利益をだしたいのか?
などなどを確認した上で、
・コンセプト
・ビジョン
・ターゲット
・効果
といったものを、相談ベースなので、ラフで話をしていった。
その中、営業部長Mは、どういう対応をしていたか?Mは、
・こういうことをやればユーザーは楽しいんじゃない?
・こういうことをやればユーザーに受けるんじゃない?
という細かな戦術に終始した。
相談している方も、一応上司に対して、立てながらも迷惑そうであった。
戦術も大事ではあるが、戦略が明確になっていない中で、
戦術論の話をいくらしたところで、話の方向性はどんどん別の方向に逸れてしまう可能性が高い。
戦略が明確になった上で戦術を考えた方が、
時間的にも効率がいい。
戦略と戦術、大局と小局、全体と部分という別がすぐに頭に浮かぶようになることが、
こういった状態を避ける唯一の方法だ。
これはグループ会社であれば、本当によくあること、いや、確実にあることだが、
ある上場しているグループ企業体の本社の取締役会でのことである。
そのグループでは、子会社から何人かが本社の取締役も兼務していた。
組織上、兼務という役割分担はなるべく避けるべきなのだが、
そのグループ会社では、かなりの人数が兼務していた。
取締役会では、子会社それぞれの業績などを確認・議論するのだが、
議論する取締役のほとんどは、参加している他社のことはもちろん、
自社についても議論することとなる。
自分の会社が調子のいいときであればいいのであるが、
調子が悪いときには、当然、他社について議論することに遠慮がでる。
よって、会議は活性化しない。するはずもない。
本当は話さなければならないことも話さずに済ましてしまうことが多々生じるのだ。
ある子会社の取締役Iは、このグループ本社の取締役会に参加していた。
取締役Iの会社は、コンテンツ作成の会社で経済低調の折、
成績は全く芳しくなかった。
他の子会社についてアレコレ話すこともなく、
自らの会社についての説明の順番となった。
「売上は芳しくありませんが、本社へのアウトソーシング料金を抜けば黒字になんとかなります」
と話した。
グループ会社ではよくあることだが、
社長などの本社専属役員はもちろんだが、
経理や人事、経営企画部門などのスタッフ部門を本社におき、
プロフィット部門でないために、グループ会社から徴収するということをやっていた。
こういうグループ体の会社ではよくやる方法だ。
この言葉を聞いたグループ会社社長は激怒した。
「徴収しているアウトソーシング料金は、グループとしてのルールだ。
それを理由にして赤字の責任を回避しようとするというのは、おかしい。
であれば、グループに加入したときから言うべきだし、加入すべきではない。
例えば、グループから借入もしていて、それはどういう活動から生まれているかわかるのか?
経理や財務が資料を作って、銀行と話して、俺が保証人になって、借りた金だ。
そういった保証、活動も引っくるめてアウトソーシング料としてとっているわけで、
それがなければ、仕事に専念なんてできなくて、今頃は金策に駆け回ってるはずだろ」
とまくしたてた。
取締役Iは真っ青な顔になり、その後、一言も発することはなかった。
取締役Iはどう考えるべきだったのか?
・グループはどういう組織構造になっているのかを知る。
・アウトソーシング料金とは何を根拠に徴収されているのかを知る。
・自社の成績が芳しくないのは、どこに理由があるのかを考える。
・成績が芳しくない理由があれば、それにどう対応するのかを考える。
・対応の結果、どうなるのかを考える。
ということを考えた上で会議に出席すべきであった。
ちなみに取締役Iは、きたる役員改選のときに取締役から外されることとなった。。。