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「シェールガス革命が日本にもやってくる?」~エネルギー政策で重要なこととは?~

「シェールガス革命が日本にもやってくる?」~エネルギー政策で重要なこととは?~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。


先週土曜の夕刊トップの記事です。
ついに「きたー!」って感じですね。



■米シェールガスの輸入解禁

<シェールガス、日本へ 米が天然ガス輸出解禁>
(平成25年5月18日付 日本経済新聞夕刊)
『米エネルギー省は17日、新型ガス「シェールガス」の増産で価格が下がっている天然ガスの対日輸出を解禁すると発表した。第1号として中部電力、大阪ガスと契約しているフリーポート社(テキサス州ヒューストン)が液化天然ガス(LNG)に加工して輸出する事業を認可した。日本は原子力発電所の長期停止で火力発電用の燃料費負担が重くなっている。米国産LNGを安定調達できれば、発電コストを削減できるほか、他のガス産出国との価格交渉力も高まりそうだ。』


日本政府と日本の大手商社、ガス会社や電力会社などがずっとアメリカと粘り強く交渉を続けてきていて、その動向が注目されていた米国からの天然ガス輸入がようやく解禁になりました。
2017年から向こう20年間にわたり、最大900万トンのLNGが輸出されるようです。他に申請している大手商社にも順次許可が下りると見込まれています。
将来的に日本のLNG輸入量の2割程度を米国産で確保する見通しだそうです。


アメリカはこれまで、自由貿易協定(FTA)を結んでいない国への天然ガス輸出は厳しく制限してきました。エネルギーはまず自国で確保し、輸出するとしてもFTA締結国を優先するとしてきたのです。
それが今回、非FTA締結国の日本への輸出を新たに解禁したことはある意味画期的なことであり、これからのエネルギーや安全保障をめぐる世界のパワーバランスが変わっていくかもしれません。


■シェールガス革命とは?

さて、ご存知の通り、今、北米では「シェールガス革命」と呼ばれるエネルギーをめぐる大きな変革が起きております。その主役であるシェールガスは、2000年に入ってから掘削技術の飛躍的進歩により、効率良く回収~生産ができるようになりました。
2005年頃から特に北米で産出量が急増し、価格も大幅に下落しました。シェールガスが資源として活用できようになったことで世界の天然ガス資源評価量は従来の6倍以上の埋蔵量になり、今の生産量であと400年以上は維持可能になったと言われています。

これで「石油はあと○年で枯渇する」といった化石燃料枯渇論、いわゆるオイルピークによる脅威論はどこかに吹き飛んでしまいましたね。
今やエネルギー政策はオバマ大統領の最重要政策であり、資源大国を目指してアメリカ経済はにわかに活性化しています。


■日本にとってのメリットは?

日本にとって、シェールガスをアメリカから輸入できるメリットは、「コストメリット」と「輸入先の多様化」があげられると思います。
まず、「コストメリット」です。

原発事故以降、日本の発電は火力に頼るようになっています。2012年度の発電に占める火力の割合は9割近くもあって、その半分はLNG火力発電が占めています。
そして、石油価格に準拠して決められている日本のLNGの輸入価格は世界的にみて「非常に割高」と言われています。お蔭で電力会社は軒並み赤字になってしまいました。

アメリカのガス価格はシェールガスの量産で下落しており、原油価格に連動して決まる日本のLNG輸入価格に比べ単純比較で4分の1から5分の1程度です。

日本への輸出価格は、そこから液化費用や輸送費用、為替の影響などを考えるとかなり上昇するとは思います。それでも、米国からの輸入が実現すれば日本のLNGの調達価格は、2020年時点で最大15%程度安くなるという試算もあります(日本政策投資銀行試算)。
エネルギーコストの低減は、日本経済にとって何よりの恩恵ですよね。


そしてもう一つは、「輸入先の多様化」です。
これも日本にとっては非常に大事なことです。
長きにわたって日本はエネルギー源の多くを石油に依存してきました。しかもほとんどが中東からの輸入です。今では発電で石油を使う割合は減り、天然ガスが増えました。天然ガスの輸入先については石油に比べてかなり分散化されているもののメインは中東諸国からです。

これはエネルギー確保の安定性からも好ましいものではありません。
昨年、イランが政治的緊張の中で「ホルムズ海峡を封鎖する!」と言い始めた時、すでにシェールガス革命で中東依存度が下がっていたアメリカと、石油やLNGタンカーの8割がホルムズ海峡を通って中東からやってきている日本とでは危機に対する温度差がまったく違っていましたよね。
米国からの輸入が本格化していけば日本のエネルギー確保の安定度が高まっていきます。

シェールガスの資源分布をみるとほぼ世界中に均等に分散されています。
将来的には、中東、アメリカだけでなく、豪州、カナダ、ロシアなどからの輸入も増えていくでしょう。
エネルギー輸入先が分散化されていることは、経済面においても安全保障上においてもリスクを避ける意味でとても重要なことですよね。


■エネルギー政策で重要なこととは?

今回の解禁にはアメリカ側の事情もあったようです。
日本は世界有数のエネルギー需要国です。アメリカがこれからエネルギー大国としてやっていこうというときに、この大きな市場を放っておくわけにはいかない。これ以上、日本への輸出解禁を先のばしにすれば、日本向けガスの輸出市場がロシアなど他国に奪われてしまう、という声がアメリカ議会でも強まったようですね。 

エネルギー政策上、また安全保障上重要なのは、「各エネルギー源のシェアが大きくなりすぎないこと」と、「各エネルギー源の調達方法が十分に多様化されていること」だと言われています。
原発だけ、とか中東からの石油だけ、とかではダメということですね。いろんなエネルギー源をいろんな国から調達するのが大事だということです。

米国産ガスの価格は本当に割安なのか、2017年までの間はどうするのか、など心配ごとは尽きないものの、今回のアリメカからの天然ガス輸入解禁は、エネルギー源の分散化と調達の多様化に向けた第一歩として素晴らしい朗報だと思います。
よくやった!日本。



今回は以上です。

日本がもっと良くなりますように。



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