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「今年も勝手に展望 2014年の日本経済の見通しは?」~今こそイノベーションを!~

「今年も勝手に展望 2014年の日本経済の見通しは?」~今こそイノベーションを!~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

当ブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hyas/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。




こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。
新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

さて、年頭にあたりまして、今年も「勝手に」この一年を展望してみたいと思います。

前回年末にも書きましたが、今年2014年は「景気が良くなった」と実感できる一年になるのではないかな、と思います。年頭から安倍首相も経済回復を意識して動いていますね。

 

<首相年頭会見「今春、賃金増を」>
(2014年1月7日付 日本経済新聞)

『安倍晋三首相は6日、三重県伊勢市内で開いた年頭記者会見で「この春こそ景気回復の実感を収入アップという形で国民に届けたい」と語り、企業収益の拡大を通じた賃金増に期待感を示した。そのうえで「消費の拡大を通じてさらなる景気回復につなげる」と訴え、24日召集予定の通常国会を「好循環実現国会」と位置付けた。』

首相の言う「好循環」とは、(1)「企業業績拡大」→(2)「投資の拡大」→(3)「賃金の増加」→(4)「消費の拡大」→また(1)へ・・・という循環です。
まず「企業業績」を回復させて、それを家計にまで波及させて、消費を増やしていこう、という狙いですね。


好循環は今どこまで見通せているか?

まず(1)「企業業績拡大」ですが、アベノミクスのお蔭もあってか2013年度に企業業績は回復しました。今年度決算では上場企業を中心に大幅な増収が見込まれています。

2014年も引き続き、円安傾向は変わらないと思われますので、輸出企業を中心に引き続き業績は安定的に推移すると思います。好業績の下、金融緩和政策が続くことから低金利も続くでしょうし、減税政策の後押しもありますから、製造業、非製造業問わず設備投資も増えそうです。

そうなると、次は(3)「賃金の増加」が実現するかどうかです。

まず、3月の春闘がどういうムードになるですが、これだけ業績が回復してインフレ傾向が鮮明になってきているのですから、大手製造業を中心に大企業はまず賃上げするでしょうね。

問題は中小企業です。大企業よりはタイミングは遅れるでしょう。4月からの消費増税を乗り越えて業績を確保することができるかどうかによるでしょうね。


春から夏にかけては消費増税と政策効果の綱引きに

政府は、2015年10月に消費税をもう一段階「8%→10%」へ増税をするかどうかを、「2014年度の7月~9月の経済状況を見て判断する」と言っています。

今年の4月に「5%→8%」に増税されると一旦消費は落ち込むと思いますが、それが7月以降にどれだけ回復しているかを次の10%への増税の見極め材料とする、としているわけです。

ただ、日本の財政を見通したときに「消費増税はしなければならない」というのが世の中のムードになりつつある中、政府としては、なんとしても景気回復スピードを落とすわけにいきません。
だから、意地でも2014年7月~9月のGDPは増やしたいと考えているはずです。
2014年度の歳出予算は過去最大の95兆8800億円という大盤振る舞いです。
もしかしたら、4月~6月にはもう一段の金融緩和があるかもしれません。
6月には「新成長戦略」もまた出される予定です。

これらの施策の後、夏頃のGDP速報値や株価などで経済が力強いものになっていれば、安倍首相の言う「好循環」の流れができるかもしれませんね。


企業主体の政策で賃上げが不可欠な理由

「企業主体で景気回復をリードし、好循環を生む」という方針は良いと思います。
国民資産統計では日本の世帯資産の7割以上は60歳以上の高齢者世帯が保有しています。
高齢者は資産があります。資産運用をしている方々は昨年の株価上昇で資産効果の恩恵も受けていることでしょう。

一方、20代~50代の現役世代は資産がありません。余裕はありませんが、住宅資金や教育資金などの消費意欲は旺盛です。この現役世代の世帯所得を上げることが消費の安定性につながります。給与所得者である現役世代の所得を上げるには企業業績が上がる必要があります。

だから企業主体で政策をスタートさせているのは良いと思います。中小企業まで含めて賃金が上がれば消費も落ちずに好循環の流れになるはずですね。


■変革の時代に何をするか?

円安と低金利は続き、大企業を中心に経営環境は視界良好です。インフレになっていけば自然と賃金も上がっていくでしょう。この好環境が政策的なものから自律循環的な力強さを伴うものになれるかどうかは、あとは個々の「戦略」次第だと思います。

基本的に私たちの日本は縮小マーケットです。みんなで下りのエスカレーターに乗っているようなものなので、「現状維持」という方針で新しいことを何もしないことは衰退を意味します。
企業にとっても個人にとっても「何もしないリスク」はどんどん高まっています。

では、何をするか?
どこで戦うか、何で戦うか、誰と戦うか。
新時代に対応した、新技術、商品、新サービス、新しい付加価値をどう生み出すか。
今まさに「イノベーション」が求められています。

「イノベーション」と言えばこの方、PFドラッカーのお言葉を引きたいと思います。ドラッカー先生はその著書の中でこう述べています。(「イノベーションと企業家精神」より)

 ◆『企業家はイノベーションを行う。イノベーションは企業家に特有の道具である。イノベーションは富を創造する能力を資源に与える。それどころか、イノベーションが資源を創造する。』

そして、まさしく今の日本が直面しているような人口構造の変化や価値観の多様化の時代こそイノベーションの機会があるとしています。
そして、変革へのチャレンジを「リスク」とみる人たちに警鐘を鳴らしています。

 ◆『イノベーションにはリスクが伴う。しかしスーパーへパンを買いに行くことにも何がしかのリスクはある。あらゆる活動にはリスクは伴う。しかし、昨日を守ること、すなわちイノベーションを行わないことのほうが明日をつくることよりも大きなリスクを伴う。』

 ◆『企業家はリスクを冒す。だが経済活動に携わる者は誰でもリスクを冒す。なぜならば、経済活動の本質は現在の資源を将来の期待のために使うこと、すなわち不確実性とリスクにあるからである。企業家精神の原理とは、変化を当然のこと、健全なこととすることである。』


■イノベーションにチャレンジし続けることこそが仕事

最近の学生の皆さんは安定志向が強く、公務員や大企業を志望する人が増えているようです。ただこの変化の時代に安定などありません。これは大企業でも中小企業でも同じです。大企業でも老舗の中小企業でも公務員でも、必死で走って、新しいことに取り組み続けて、やっと現状が維持できるかどうかという時代です。

今こそイノベーションですね。

最後にそのために必要なことをドラッカー先生の言葉から。

 ◆『そのためには意識的な努力が必要である。学ぶことが必要である。起業家的な企業は企業家精神の発揮を自らの責務とする。それを鍛える。そのために働く。それを実践する。』

 イノベーションを意識して、よく学び、よく働きましょう。そうなれば今年もその先も日本の将来は間違いなく明るいものになりますね。

 

今回は以上です。
もっと日本が良くなりますように。

 

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