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「これから日本の家の省エネ化はどうなる?」 ~住宅業界と自動車業界、「潮流の転換点」はなんだったか?~

「これから日本の家の省エネ化はどうなる?」 ~住宅業界と自動車業界、「潮流の転換点」はなんだったか?~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

当ブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hyas/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。
毎日寒いですね。今日は住宅の省エネ化の動きについてです。

日本の住宅の「エコ化」は、これからますます進んでいくと思います。断熱性や気密性を高めて、少しのエネルギーで「夏涼しく、冬暖かい家」になっていきます。

国土交通省は「2020年に省エネ住宅を義務化する」ことを明らかにしています。2020年にはすべての新築住宅が、国が定める断熱性能などの省エネ基準を達成しなければなりません。中古住宅についても断熱リフォームを推進していく方針が決まっています。

日本の住宅(特に一戸建)は冬寒いんです。いずれ日本のすべての住宅がよくなるといいですね。


■クルマ業界のエコ化の転換点は何だったか?

住宅の「エコ化」はまだまだこれからですが、一足先に「エコ化」を完了させた自動車業界のこれまでの流れを見てみたいと思います。

今、自動車がまた消費増税前の駆け込みで売れています。ここ数年の間で日本のクルマはエコ化が急速に進み、昨年、2013年度の新車販売トップ10は、トップのアクア、2位のプリウス(どちらもトヨタ)をはじめとして、すべてハイブリッドカーやエコカーで占められました。

元々、クルマのエコ化は「排ガス規制」や「CO2削減」など環境問題に端を発しています。

それが一気に拍車がかかったのが2008年でした。

2008年にアメリカの金融緩和を背景にして投機マネーが市場を席巻し、原油価格も高騰しました。2008年夏には1バレル140ドルを超えました。連日、ガソリン代の値上がりがニュースになっていましたね。政権交代する前の民主党の議員達が「ガソリン、値上げハンターイ!」とかやっていました。

結局、バブルが崩壊するように原油の高騰は一気に収まりますが、私たちの心の中には「ガソリン代が値上がりすると家計が大変だ・・・」ということが刻まれました。クルマの省エネが「環境問題」から「家計問題」として実感された瞬間だったと思います。原油が簡単に値上がりする時代に「がんがんガソリンを食うようなクルマに乗っている場合じゃない」という意識になりました。

続く2009年にリーマンショックが起きて、景気はどん底になります。景気回復のため、政府はエコカーへの減税や補助金の名目で自動車産業を支えました。これで一気にエコカーへの買い替えが進みました。2009年の新車販売台数でついに「プリウス」が首位になります。(以降プリウスは2012年までずっと首位の座を守ります)

新車乗用車の平均燃費は2008年に16.8Km/l だったのが、2012年には21.6Km/l まで伸びました。政府目標は2015年に17.5 Km/l でしたから、それをはるかに超える水準で達成してしまいました。エコが「環境問題」から「家計問題」としてみんなの意識に刻み込まれた瞬間に自動車のエコ化が加速して、それから5年で業界のエコ化が完了したと言えます。


■住宅のエコ化も「家計問題」に

今、住宅に全く同じ流れが来ています。きっかけは原発問題に端を発した「電気代の値上がり」です。さらに昨年、円高から円安になったことで原油やLNGの輸送費や輸入決済額も上昇しました。電気代だけでなくこの冬は灯油代も値上がりしています。いつもよりちょっと寒いこの冬、電気代と灯油代の値上がりは家計を直撃しています。住宅の省エネ化も「環境問題」から「家計問題」になったのです。「これから光熱費がどうなるかわからない時代に電気代ががんがんかかるような家に住んでいる場合じゃない」という意識に皆がなり始めているんじゃないかと思います。

そんな時に、消費増税があり、住宅の新築、建替えが増えています。政府は「2020年省エネ住宅義務化」に向けて、住宅のエコ化に予算も付けて後押ししています。


■住宅エコ化の問題点

ただ問題はあります。それは、「まだまだエコ住宅は高い」ということです。住宅ローンの限度額などの予算との関係で、建物性能にそれほどお金がかけられないとなると、やむなく省エネ性能基準を満たさない家になってしまいます。「2020年には省エネ住宅義務化」ということは言い換えると、「2020年までは国が定める省エネ基準を満たしていない家でも建てることが出来る」ということです。

現実的に、多くの建売住宅やローコストや家などの比較的買いやすい住宅は十分なエコ対応が出来ていません。統計では、現在新築一戸建で省エネ基準を満たしている家は全体の4割弱程度です。ここが自動車業界と大きく違うところです。

クルマなら、コンパクトカーでも軽自動車でもすべて燃費は良い。クルマはすでに「低燃費であること」が常識になっています。住宅はまだ「省エネ(低光熱費)であること」は予算に余裕がある人のためのオプションのようになっています。住宅も2020年を待たずに本来「光熱費がかからない家が当たり前」になるべきです。

将来的に今の新築住宅が中古住宅になって流通する頃(2030年とかでしょうか)には、住宅の省エネ基準適合が義務化されています。その時に、省エネ基準を満たしていない住宅は「不適合住宅」として評価されるわけです。当然それなりの価格でしか売ることができないでしょう。

そんな、「資産価値がなくなることがわかっているような家をなぜ住宅会社は売るのか?」と聞ききますと、住宅会社の皆さんは「お客様が、『予算がないからそれでいい』と言うから。」と言います。

 本当にそうでしょうか?

私、住宅アドバイザーとしてお客様に住宅について説明していますが、2020年省エネ義務化のことや、断熱・気密性能と光熱費の関係などを説明すると、ほとんどの方が「少々価格が上がってもいいから省エネ住宅が欲しい」とおっしゃいます。お客様は、省エネ住宅のホントのところをわかっていないだけではないでしょうか。新築だからきっと暖かいだろうと思いこんでいるだけなんじゃないでしょうか。後になって、自分の建てた家が省エネ基準に適合していないと知ったらきっと怒ると思います。

「安い家」と言っても安いのは最初だけで、後から光熱費ががんがんかかる家だとしたら、本当は全然安くない家なのです。

 住宅会社は、まず省エネ住宅の低価格化に一層取り組んでいただきたいですし、少なくとも「省エネ基準」のことや「2020年省エネ義務化」のことなどの説明は打ち合わせの段階で絶対しておいていただきたいと思います。


■住宅の質の向上はあなた次第!

今のエコ住宅はちょっとのエネルギーで家じゅうが暖かくなります。光熱費はあまりかからない経済的な暮らしができます。暖かい家はヒートショックなどからも身を守ってくれる健康的な住宅でもあります。日本のすべての住宅がそうなるといいですね。そうならない理由が、「お客様がそれでいいと言っている」というのなら、エンドユーザーであるみなさんが求めていけばすぐ業界は変わるということです。

省エネ化・高性能化するための初期のコストアップは500万も600万もかかるわけではありません。高性能な断熱材とサッシに変えても1割くらいのアップだと思います(家の大きさやグレードにもよりますが)。省エネ化に伴う最初のコストアップが後々の毎月の家計にどれくらい影響するのかを試算すれば、そんなにたいしたことではないことがすぐわかると思います。

 2014年が「エコ住宅普及元年」になるといいですね。

 

今回は以上です。
もっと日本が良くなりますように。

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