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『訪日外国人1,000万人突破! 外国人を受け入れるということを考える』~日本人はもっと外国人を受け入れることに慣れなければならない~

『訪日外国人1,000万人突破! 外国人を受け入れるということを考える』~日本人はもっと外国人を受け入れることに慣れなければならない~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

最近、街中に外国人の方が多くなりましたね。

外国人旅行者が増えているようですよ。

 

■訪日外国人初の1,000万人突破!

 

最近、新幹線も飛行機もホテルもよく混んでいますよね。

私はよく出張しますが、東京都内のホテルなどはここ最近明らかに予約しにくくなっていますし、宿泊価格も若干上がってきています。

これは景気が回復して人の移動が増えただけではなくて、外国人旅行者の方も増えているからだったんです。

 

<訪日外国人、初の1,000万人突破>

(2013年12月21日付 日本経済新聞)

日本を訪れた外国人客数が20日、初めて年間1,000万人の大台を突破した。訪日客の増加は宿泊や買い物などを通じて国内消費を活性化し、投資や雇用創出につながる。景気の押し上げ役として存在感を増している。

日本にやってくる外国人は2013年度に初めて1,000万人を突破しました。2012年度に比べて約20%の増加です。10年前くらいに「訪日外国人500万人」と言っていましたので約10年で約2倍になった計算ですね。

内訳は、韓国が24%でトップ。次いで台湾(22%)、中国(13%)、アメリカ(8%)と続きます。

 

2014年の4月には「旅行収支」(訪日外国人が日本で使う金額から、日本人が海外で支払う金額を差し引いた収支)が44年ぶりに黒字に転じました。これは44年前の大阪万博以来のことだそうです。

 

この勢いは2014年になっても止まらず、JTBは今年度の訪日外国人は前年比14%増の1,180万人になると予測しています。

 

■訪日外国人の増加は経済のけん引役

 

ホテルも新幹線もやはり過去最高に稼働しているようです。

都内ホテル稼働率、バブル期超えの84.8%(13年度) 訪日外国人が押し上げ

(2014年1月25日付 日本経済新聞)

 

新幹線客数、最高更新へ JR3社の今年度、観光・訪日客増える

(2014年6月11日付 日本経済新聞)

 

3年前、東日本大震災の後、日本中から外国人観光客が消えました。

震災のあった翌月の2011年4月、東京都内のホテル稼働率は過去最低の49.8%でした。訪日外国人は35万2,800人と前年同月比50%減にもなり、観光産業は大打撃を受けました。それが3年で過去最高になるほど多くの外国人の方に日本に来ていただけるようになりました。

要因としては、2012年暮れから急速に円安が進んだことや多くの格安航空会社(LCC)が日本への就航を拡大したこと、また中国や東南アジア諸国向けのビザの発給条件を緩和したことなどが功を奏したようです。昨年夏からビザが免除されたタイとマレーシアからは、13年度の旅行客がそれぞれ前年対比で74%増と36%増になりました。

円安という追い風環境の下、政府と民間のこれまでの努力が実を結んだ成果と言えます。

 

新聞によりますと、1,000万人の訪日外国人の日本への経済波及効果は、実質国内総生産(GDP)を4兆3千億円増やし、15万6,000人の雇用を増やすそうです。訪日客11人で日本人1人分の年間消費額(123万円)に相当するお金を使うという試算もあります。

観光産業は経済成長を引っ張る存在として重要な役割を担っているのですね。

 

政府はさらに、「東京オリンピックのある2020年までに年間訪日外国人の2,000万人の達成を目指す」としています。そのために、ビザ免除国をインドネシアやフィリピン、ベトナムなどのアジア諸国へも拡大していくことや、短期滞在期間を現在の90日から最長1年程度に延ばすことも検討しているようです。

 

■さて、移民はどう受け入れるか?

 

ちょっと話が横にそれますが、日本では「政策的に移民を受け入れるかどうか」ということがよく議論されます。背景にあるのは、人口減少と少子高齢化が同時に進む中での労働力の不足や経済活力の減退に対する危機感です。

 

移民政策を推奨している移民政策研究所の坂中英徳所長は「毎年20万人、50年間で1,000万人の移民を受け入れるべき」(2014年5月16日外国特派員協会での記者会見)という持論を唱えています。

 

坂中所長は移民を活用すべき分野として次の産業をあげています。

 

・介護・福祉の分野

・農業・林業・漁業などの第一次産業分野。

・建設の分野

・下請け中小製造業の分野

 

「これらの日本にとって重要な産業分野の働き手が減っている。だから移民政策で支えるしかない」と、坂中所長は訴えています。

 

この移民政策は政府でも検討されているのですが、日本国民の中には「治安が悪化する」とか「日本の伝統文化が崩壊する」といったような反論や心理的抵抗が大きいようです。

 

確かに移民政策を推進してきた西欧諸国では、このようないわゆる「3Kの労働力」を確保する目的で多くの低賃金労働者をこれまで移民させてきました。しかし、今や移民の失業や生活保護、年金や多くの移民の子供の養育・就学費用など社会福祉コストの増大が問題になっています。貧困層から抜け出せない移民が多く、治安の悪化や激しい暴動が多発していることなどから、これまでの移民政策の変更も検討されています。

 

私が坂中所長の主張に違和感を持つのは、介護も農業も建設も下請製造業も、どの分野もどうも日本の若者がやりたがらないようなちょっとキツイ仕事ばかりを外国の方にやってもらおうとしていることです。

仕事がないという若い方や健康な高齢者の方、子育てが終わった主婦のみなさんなど埋もれている労働力はまだまだ日本にもいらっしゃいます。

3K仕事を外国の方に押し付ける前に、まず国内の余剰労働力の活用をやりつくす方が先ではないか、日本にとって重要な産業分野ならば日本人がやるべきではないか、と思うのです。

 

■日本は外国人を受け入れることにもっと慣れなければならない

 

1,000万人を超えたといっても国際的にみれば、日本の外国人旅行者の数は世界で33位。首位のフランスはなんと8,000万人を超えています。(2014年度の観光白書より)

アジアではシンガポールや韓国、インドネシアよりも下です。

まだまだ日本は観光国としては未熟なのです。

 

「日本はほぼ同じ文化やお互いに近い価値観を持つ国民で形成されている」と考えている人が多い日本では、異なる文化や習慣を持つ外国人を受け入れる準備や覚悟がまだまだ足りていないように思います。

 

移民の話の前に、まずもっともっと多くの外国人の方に日本に観光や短期留学、短期就労で来てもらいましょう。そして、将来は日本に移住したいと思ってもらえるくらい日本を好きになってもらいましょう。

 

そういう外国人の方々を受け入れる努力を私たちはもっとしなければならないと思うのです。

よく言われますが、日本は外国人にとってまだまだ住みやすい街づくりが出来ていません。言葉の問題もあります。街の案内板などもまだまだ不親切です。観光客が増えたといっても多くは東京に集中しています。もっと日本の地方にも行ってもらわないといけません。

 

観光客と移民の話は違うものだとは思いますが、私たち日本人は外国人の方々が自然に街の中にいる風景にもっと慣れる必要があるのではないかな、と思った次第です。

 

今回は以上です。

もっと日本がよくなりますように。

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