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『消費増税はどうなる?景気回復しないのはアベノミクスのせい?』 ~厳しい時代に生きる私たちにできることとは?~

『消費増税はどうなる?景気回復しないのはアベノミクスのせい?』 ~厳しい時代に生きる私たちにできることとは?~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

今回は消費増税を巡る報道を見ての個人的な所感です。(過去にも何度も同じようなことを書いていますが)政府のできることなど限られているのです。

■どうなる?消費税10%

景気回復の足取りが重いようですね。

「既定路線」と思われていた2015年10月に予定されている「消費税10%への増税」もちょっとどうなるかわからなくなってきましたね。

 

「6.8%減」と発表されていた4~6月期の国内総生産(GDP)成長率が、「実は7.1%減でした」と下方修正されました。想定以上の落ち込みです。

「消費税を10%にするかどうか」の意思決定は、7~9月のGDPの回復状況や物価上昇率などを総合的に勘案して12月上旬に安倍総理が発表することになっています。

 

「2015年10月から消費税は10%にする」ということはすでに国会で決まっていることですが、ご存知の通り、「ただし、景気の順調な回復が確認されること」という条件が付いています。

景気があまり良くない時に消費税率を上げたら逆に税収が落ち込んでしまうからですね。

「景気は気から」と言われるように景気には心理的な要素が多くあります。国民の気持ちが沈んでしまい、みんなが買い控えを続けたら確かに景気はどん底になります。景気が悪くなって、消費が落ち込んで、経済が縮小したら、いくら税率を上げても税収は増えませんからね。だからあくまで「景気回復」を消費増税の前提にしているのです。

 

■視聴者を混乱させるテレビ番組

確かに今の経済状況をみると本格的な力強さはありませんので、このタイミングでは増税は厳しいかもしれません。今のままだともしかしたら安倍総理も「消費税は上げない」という判断をするかもしれませんね。

 

世の中もそういう論調が増えてきたように思います。

先週、ある報道番組を見ました。その番組は、いかに今の経済状況が厳しいかということをデータや街の声などで伝えながら、「そもそも消費増税はすべきでない」という論調で構成されていました。

 

その番組は、消費税だけではなく、そもそも今の政府や自民党が嫌いなんだろうな、と思うような報道が多いのですが、その時も消費税にからめてアベノミクスも批判していました。

話は消費税から多方面に展開しまして......だいたいこんな感じでした。

↓↓↓

 

  • 「消費は落ち込んだままで景気は回復していない、しかし円安などの影響もあってエネルギーコストや物流コストが上がり、生活必需品にいたるまで価格が上がっている。」

  • 「しかし、給料は思ったように上がっていない。家計は節約モード。お年寄りはなけなしの預金を取り崩して生活している。」

  • 「株価が上がっても、庶民の生活はよくならない。」

  • 「大企業は儲かっているかもしれないが、地方の中小企業は悲鳴を上げている。」

  • 「金融緩和をしても、設備投資は増えず、企業の内部留保だけが上がっている。」

  • 「アベノミクスは国民の豊かさを実現するためのものではないのか。株が上がったといって喜んでいる場合ではない。」

  • 「アベノミクス、もっと庶民の声をよく聞いて考え直してほしいですね」(...とMCが締める)

...という感じです。

 

これはいったい何を伝えたかったのでしょうか?

私はこれを見ながら、「ひとつひとつのことはわからないでもないけど・・・」と思いながらも、全体を通じては、なんと言うか「イヤ~な感じ」がいたしました。

 

確かに急激な物価上昇は生活設計を狂わせます。でもだからと言って、物価が持続的に下がり続けていたデフレ時代の方が良かったとは思えません。

年金収入しかないお年寄りが、収入以上の生活をしようと思ったら預金を取り崩すのは当たり前のことで、多かれ少なかれお年寄りはそうしています。そのことはアベノミクスとは何の関係もありません。

「政府は株価対策ばかりしている。」といいますが、では株価が8,000円の頃の方が良かったのでしょうか。

地方の商店街や中小企業が厳しい環境に置かれているのはその通りですが、それは恐らくもう十数年間ずっとそうで、きっとアベノミクスのせいでも消費税のせいでもありません。失礼ながら、そもそも時代のニーズに合っていない製品やサービスを提供しているとしたら、どんなに世間の景気が良くなろうがそのお店や会社の業績は上がりません。それは景気の問題ではなくビジネスモデルの問題です。

 

異なる事象のことを何もかもひとくくりにして、世の中の人の気持ちを沈ませた上に、すべてをひとつの要因(この番組の場合はアベノミクス)のせいにするのは視聴者を混乱させるだけだと思うのですが...。

 

■消費税を上げないことは良いことなのか?

確かに景気回復の足取りは重い。消費増税のタイミングを遅らせる必要があるかもしれません。

私もそうなっても仕方がないなと思っています。

 

でも、それって果たして良いことなのでしょうか。

消費増税を見送ったら日本は良くなるのでしょうか?

 

そもそもなぜ消費税を上げないといけないのか?

言うまでもなく、財政が厳しいからですね。

社会の高齢化にともなって社会保障費が毎年1兆円以上増大していくことが明らかになっていて、年金財政も厳しくなっています。税収は50兆円くらいしかないのに、歳出は90兆円以上。足りない部分は国民に借金をして国債を発行して賄っています。そうしているうちに国と地方を合わせた借金は1,000兆円を超え、GDPの2倍以上にまでなってしまいました。

 

借金など将来の子供たちの世代にツケを回すようなことを避け、今の世代のみんなで少しでも財政を立て直していくために消費増税をせざるを得なかったんですよね。

だから、もし今回は消費税を上げないとしても、いずれはどんな形になるにせよ税負担は重くならざるをえない。あわせて、社会保障費だって自己負担分を増やしたりしないといけないかもしれない。年金の支給額だって減るかもしれない。

それなのに、景気が良くなって税収が増えたわけでもなく、だからと言って消費税を上げることも出来ず、景気刺激のためにさらにまた政府のお金が使われようとしています。こうしている間に財政はますます悪化していくことになります。

これって喜ばしいことなのでしょうか?

 

■私たち日本人が稼げなくなっていることが問題

悪いのは消費増税でもアベノミクスでもありません。問題は私たち日本人が稼げなくなっていることです。

稼げなくなってきたからGDPは増えないし、税収も増えませんし、生活も良くならないのです。

生活を良くしたいと思ったら稼がないといけません。つまり「いかに付加価値を増やすか。いかに生産性を高めるか。」ということです。

 

しかし、世界的にゼロ成長が当たり前になり、「資本主義そのものが行き詰まっている」という資本主義終焉論すらある今、企業も個人も付加価値額はそう簡単には上がりません。

物価も上がりにくいし、金利もほぼゼロです。特に日本は人口減少が始まっていますから、消費も増えにくくなっていて、そもそも付加価値額を増やして給料を上げるのが難しい時代になっています。

 

そんな中、政府に何かを期待しても出来ることなど限られています。

民間が頑張るしかないのです。

では民間とは誰か?

私たち一人一人のことですね。

 

政府や政治家や会社や地域性や時代のせいにするのはラクなことです。

でもそれは思考停止と一緒です。

環境変化に対して、「では自分はどうすべきか、何が出来るか」を常に考えないといけませんね。私たちは環境の変化を予測し、受け入れ、自ら働きかけていくしかないのです。

自分ではまだ稼げない子供たちならともかく、大人なら何か出来ます。出来るだけ健康で過ごすこと。出来るだけ働いて、付加価値生産性を上げること。そして適度にお金を使って、税金も納めること。

 

消費税がどうなるかはわかりません。今の状況で消費税が10%になったら、確かに今の日本経済にとってはキツイかもしれません。

でも、どんな環境になったとしても、一人一人が心健やかに、自分に責任をもって出来ることをコツコツとやっていくことです。

世の中を良くするということはそういうことだと思います。

 

今回は以上です。

もっと日本がよくなりますように。

 

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