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『今の円安の問題の本質はなにか?』 ~円安とインフレ率の関係とは?~

『今の円安の問題の本質はなにか?』 ~円安とインフレ率の関係とは?~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

今回は「円安」についてです。

円高も困りましたが、円安も困りますね。

 

円安が進んでいます。

今1ドル=107円後半くらいで推移しています。円安になりますと輸入価格が上がることになります。海外製品やエネルギーコストが上昇しますので私たちの生活にも影響がありますね。

 

<忍び寄る円安倒産の足音>

(平成26年10月12日付 日本経済新聞)

『突然の円安再燃に政府が動揺している。輸入品の値上がりに加え、中小企業の経営悪化を懸念する声が強まっているためだ。(中略)「円安が続くと、来年の経営は深刻な状態に陥る」。中国工場で生産した製品をドル建てで輸入する愛知県のある衣料品メーカーの社長は頭を抱える。前回の長期予約の為替水準で輸入できるのは10月まで。それ以降は輸入コストが一気に跳ね上がるという。』

 

円安は輸入物価を押し上げます。海外製品を仕入れている企業は大変でしょうね。

「この急激な円安も政府の政策のせいだ」という声もあります。

さて、この円安局面、これからどうなるんでしょうか?

 

■円安になることはわかっていた?

ただ、「急減な円安」といわれますが、「1ドル=110円くらいまで円安が進むんじゃないか?」ということは結構前から誰もが予測していたことだったと思います。

長く続いていた1ドル=80円くらいの円高局面が、円安に転じたのは安倍政権が誕生するちょっと前ですから、今から2年以上前です。

振り返りますと、私はその頃このように書いています。

↓↓↓

『今回の円安は、私は基本的には米国景気の回復による「ドル高」の要素の方が大きいと思っています。そしてこの先ですが、傾向として今の「円安・ドル高」はしばらく続くのだろうなと思います。』

(ハッピーリッチ・アカデミー161号 『円安・ドル高は続くのか?』 ~ドルを取り巻く環境の変化とは?~)(2013年2月19日配信)

 

その根拠のひとつとして、日米の経常収支が今後「アメリカ:黒字、日本:赤字」になるだろうから、ということをあげました。アメリカは「シェールガス革命」でエネルギーの内製化が進む一方で、日本は原発問題でエネルギーの輸入依存度が高まります。エネルギー要因だけをみてもドル高円安へ進むことは想像できました。

 

また、その10カ月後の2013年の年末には...

↓↓↓

『米国の景気回復は順調で金融緩和縮小への市場の理解は進んでいます。一方、日本は金融緩和方針の修正どころか、むしろさらなる金融緩和に突き進むと市場は見ています。この方針の下ではっきり言えるのは「日米金利差はますます広がる」ということ。ドル高円安基調はここからさらに加速するでしょう。(中略)少なくとも、消費税反動減の状況がはっきりする上半期(2014年9月末)までは、今の円安ドル高と株高、そして低金利は続くでしょうね。』

(ハッピーリッチ・アカデミー182号 『2014年の経済はどうなるか?』~2013年の振り返りとちょっと早い2014年の展望~)(2013年12月24日配信) 

 

この時が、1ドル=約104円。今、1ドル=約107円です。

別に、私だけがこのように思っていたのではありません。

新聞にも書いてありましたし、経済に関わっている人ならほとんどの人がそう予想していたはずです。

それなのに、予想通りに円安になったらまた大騒ぎするというのは何なのでしょう?

 

「輸入企業が悲鳴を上げている」と言いますが、厳しいようですが輸入企業にとって為替の変動は経営上に当然にあるリスクなのですから、為替変動に耐えられるような経営体質づくりはしておくべきです。それ以前は長きにわたって円高の恩恵を受けていたのでしょうからね。

 

■円安とインフレ率の関係を見ておこう

少しだけ為替レートについてのおさらいです。

為替レートというのは異なる通貨で取引されているモノの値段を調整するための目安です。

コンマ何円レベルでトレーディングをしているようなプロの方とは話の次元が違いますが、ドルと円がどっちに振れるか、といった程度の大きな流れはなんとなくわかるものです。

「購買力平価」の理屈でいえば、同じものがアメリカと日本で違う価格で売られていたらその価格は為替レートで調整されます。その調整される方向性は、「インフレ率の低い通貨」は「インフレ率の高い通貨」に対して上昇傾向になります。

 

例えば、日本で、10,000円で売っている「モノ」があるとします。

1ドル=100円の時、その「モノ」はアメリカでは100ドルですね。

さて、アメリカが20%インフレになったとします。100ドルだった「モノ」の価格は120ドルになります。

その時に日本も20%のインフレになって、10,000円の「モノ」が12,000円になっていたなら為替レートは1ドル=100円で変わりませんね。

でも、もし日本ではインフレにならずに、10,000円の「モノ」が10,000円のまま売られているとすると、同じ「モノ」なのに日本では10,000円、アメリカだと12,000円ということになります。日本で仕入れてアメリカで売るだけで儲かりますね。

ですからそのままであることはなく、その内に為替レートで調整されていきます。

100ドル=10,000円だったものが、120ドル=10,000円になったのだから、

為替レートは、1ドル=100円から、1ドル=83.333...円になります。

つまり、「円高ドル安」になるわけですね。

 

これが2年前までの円高局面で起きていた話です。

日本はずっとアメリカに比べてインフレ率が低かった(というよりデフレだった)のだから円高ドル安になって当たり前だったわけです。

そこにアベノミクスでデフレ脱却をうたい、政権交代が起きて、日銀は「2%のインフレになるまで金融緩和をする」としたことで日本のインフレ期待が一気に高まりました。

だから、2年前から円安傾向に転じたわけです。

 

■本当の問題はなにか?

為替は、市場参加者の「思惑」が加わるので必ずしもセオリー通りになるわけではありません。でも、政府の金融政策の違い、経常収支、金利差、物価上昇率などなど、基本的なこと(ファンダメンタルズ)を見ておけば大きな流れはわかります。

それでいうと、今の円安はもう調整局面に入るのではないかと思います。

 

なぜなら、日本の期待インフレ率が下がってきているからです。

前段でみたように、これまでは日本の期待インフレ率が高かったので円安に振れてきました。

今後ですが、日本はちょっと息切れ気味でそれほどでもなさそうですが、アメリカは好景気になっていますのでインフレになっていきそうです。←この傾向がはっきりしていくと円安一辺倒にはならなくなるはずです。

 

「インフレ期待が少ししぼんでいる」、これは円安の調整にはいいかもしれませんが、景気回復的には必ずしも良いことではありませんね。

インフレ期待、すなわち、持続的に物価が上昇していくためには消費が拡大していることが不可欠だし、そのためには賃金が上昇している必要があります。

結局、今の日本経済はまだそこまでいっていないということだと思います。これは決して良いことではなく、残念なことですよね。

 

見るべきところは円安ではありません。それは現象の結果に過ぎません。

円安だけが問題なのではなく、賃金が想定以上に増えず、消費が落ち込んでいることが根本的には問題だと思います。

これは政府の金融政策の話ではなく、民間経済の問題です。

民間経済、すなわち個々の企業、そしてそこで働く私たち個々人が業績を上げて賃金をいっぱいもらえるように頑張らないといけないわけです。

 

円安だの円高だのと嘆いている場合ではないですね。頑張りましょう。

 

今回は以上です。

もっと日本がよくなりますように。

 

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